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(回答先: グノーシス主義をさらに理解してゆく書籍を紹介して頂けませんか 投稿者 マルハナバチ 日時 2003 年 10 月 23 日 19:14:39)
マルハナバチさん、こんばんわ。
9・11までの私も、宗教に関心はありつつも深く考えることはありませんでした。
他の諸々のこともそうですが、あの9・11が私の世界を変えました。
(そう遠くないうちに産業資本制を推進力とする「近代」は終焉を迎えるとは思っていましたが、“彼ら”のほうからそれに自覚的に取り組み、「近代」の新しい構造を造り出す動きを見せたことに衝撃を受けました)
9・11以降の思考の軌跡はそのままこの阿修羅に反映されていますので、お付き合いいただいた方には、私が何を考えているか見え見えになっているはずです。
(最近はちと忙しくて、思考の軌跡を書き込みというかたちでは現せなくなっていますが...)
グノーシスに関する書籍としてご紹介できるのは、『グノーシスの宗教』(ハンス・ヨナス著・秋山さと子/入江良平訳・人文書院・4800円)です。
450ページほどの大書ですがグノーシスを知るにはかっこうだと思います。
古典ギリシアの世界観との比較もあり、オリエント(中東)古代精神の独自性が見えてきます。
あまり突き詰めたわけではありませんが、グノーシスは、世界(宇宙)やその起源に対する観念体系が都市文明的統治構造と結びつくなかで生成発展した観念体系(宗教)ではないかと考えています。(支配−被支配の関係構造が論理体系で正当化されたこと)
セム系諸都市(諸部族)で生まれた祭政一致の支配構造を正当化するために持ち込まれた啓示宗教(ユダヤ教など)が支配階級のものとすれば、その支配構造で被支配の立場に置かれたものたちが紡ぎ出したものがグノーシスだったのではないかという推測です。
そう考えると、上位の創造主が支配する上層世界と下位の造物主が創造した下層世界があり、人間は上層世界の要素(光)を内に持ちながら、下層世界に落ちたために肉体という牢獄のなかにそれを押し込められているという世界観が腑に落ちます。
その一方で、そのような世界観が、支配階級の打ち出した宗教(世界観)に依りながら生成されたことも確かです。
なお、中世ヨーロッパのグノーシス的キリスト教(カタリ派やボゴミール派)については、以前ビルダーバーグさんが紹介されていた『ヨーロッパ異端の源流』(ユーリー・ストヤノフ著・三浦清美訳・平凡社・4200円)が参考になります。
初期キリスト教については、文庫クセジュ368の『原始キリスト教』(マルセル・シモン著・久米博訳)が手軽ながら面白いと思います。
※ 昼休みボードの書き込みを楽しく読ませていただきました。
一人でも足が伸ばせない小さな風呂桶のなかで手桶を頭にかぶってアップアップしているのが私です。