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おそらく神像です。閻魔か?
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投稿者 いつきイ 日時 2003 年 10 月 15 日 18:42:38:YjWiDM0zB.25o

(回答先: ほんとに“神像”なのかな... 投稿者 あっしら 日時 2003 年 10 月 14 日 21:20:17)


> 「見つかった像は、冠をかぶり、笏(しゃく)を持っていることから、
> 何かの神を表したのではないかとみられている」と説明しているが、
> 神(神体)をサポートする役割を擬した像というのなら納得できても、
> 信仰対象そのものの神像という見方には同意しがたい。
>
> 僧や役人の姿を模した神を祭るという信仰はあったのだろうか?
> (僧はあるかもしれないが...)

あっしらさん、初めまして。疑問はもっともですが・・・

おそらく神像です。それも閻魔像ではないかと思われます。

記事によれば、

「仏像が仏教礼拝の対象として釈迦(しゃか)などを模してつくられ
たのに対し、初期の神像は僧や役人の姿を模したとされ、見つかった
像は役人を模したとみられる。本来は社殿などの建物内に置かれ、信
仰の対象になっていたと考えられる」

と、仏教とは異なる、神道の神像であると決めつけている印象があり
ますが、「冠と笏」を身に帯びているからといって、これを神道系の
神像であると断定することはできません。

仏教系の神も、東アジアでは、「冠と笏」を身に帯びた姿形で表現さ
れることがあるからです。その代表が閻魔です。

この“神像”は「奈良時代末から平安時代前半(8世紀後半から10
世紀)の地層」から出土したとのことですので、時代的には当然、仏
教や道教の影響が浸透した後の時代ですね。日本にはすでに釈迦如来
像をはじめ各種の菩薩像、梵天・帝釈天・四天王・仁王・十二神将像
などが存在していました。

梵天以下の神々は、もともとバラモン教・ヒンドゥー教の神々ですが、
インドの大乗仏教はこれらを仏教の守護神として取り込みました。仏
教用語にいう「天」とは「神」の謂です。

以上のほかに、古代インドのヴェーダ(バラモン教の聖典)以来の有
名な神として「ヤマ」神があります。シナ仏教では、これを「閻魔」
(えんま)と音写しました。死者を裁く神です。(正確にいうとヤマは、
ヴェーダでは初めてあの世へ行った「最初の死者」なのですが、イン
ドの大乗仏教では六道輪廻の教義にからめて、これを「死者の王」と
して取り込み、シナ仏教ではこれが「死者を裁く神」と畏れられるに
至りました。さらに道教もまた仏教の影響を受けて、閻魔を、死者を
裁く有力神として受容しました。)

そして、シナ仏教や道教の閻魔は必ず、法官すなわち裁判官の法服姿
で表現されました。したがって、閻魔は「冠をかぶり笏を持つ」法官
姿の神像として描かれます。

もちろんこれは、死後審判の神に、峻厳な法官のイメージをダブらせ
たシナ仏教特有の表現であって、インドのヤマ像とはまったく異なり
ますが、日本人はシナ仏教の図像表現をそのまま受け入れたのです。

そんなわけで、出土した像はおそらく神像であり、しかも閻魔像であ
る可能性が高いと、私は推定します。冠の正面に「王」の字が刻まれ
ていれば、間違いなく閻魔王です。

ついでに、閻魔以外の神という可能性を考えてみますと、例えば御霊
信仰にもとづいて人々から「怨霊」として畏れられた菅原道真(天神)
の像という可能性も、ないではありません。神格化された菅原道真な
ら、「冠をかぶり笏を持つ」姿も不思議ではないでしょう。

しかし、信仰対象の像として考えると、閻魔のほうが可能性が大きい
ように思われます。

なぜなら、怨霊の場合、人々はその祟りを畏れて、敬して遠ざけたい、
できれば封印したい、と考えるのに対して、死後審判の神なら、毎日
でも拝んで、死後の寛大な審判を願う、という心理が働くであろうと
思われるからです。

なお、「ヤマ王」はサンスクリット語で「ヤマ・ラージャ」といい、
漢字では「閻魔羅闍」(えんまらじゃ)と写します。その他、閻魔には、
閻羅、焔摩、夜摩天など十指に余る宛字・異字がありますので、それ
らの文字のいずれかが、出土した像に1字だけでも刻まれていれば、
その神像を閻魔であると断定する根拠になるでしょう。文字が書かれ
ていれば(X線などで発見されれば)の話ですが・・・

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