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中学1年の男子生徒(12)による長崎市の4歳男児誘拐殺人事件からひと月が過ぎた。少年鑑別所に収容された少年は、面会した付添人の弁護士に12歳とは思えない落ち着いた受け答えをするものの、核心には口を閉ざしているという。事件はなぜ起きたのか、殺意はあったのか。精神鑑定が始まる中、学校・地域は衝撃を引きずりながら手探りで対応を進めている。
■少年は
長崎市郊外にある長崎少年鑑別所。少年はここで精神科医の精神鑑定を受けている。家裁による調査以外の時間は、鑑別所の指導もあって生い立ちや家族について日記をつけたり、体操や読書をする規則正しい生活を送っているという。
付添人の弁護士との面談は週2〜3回。初めは生活の変化に戸惑い、「眠れない」と訴えていたが、今は「特に変わったことはなく普通。当初より若干落ち着いた感じ」(戸田久嗣弁護士)。同級生らが指摘した情緒の不安定さは見せず、淡々と受け答えをしている。両親や祖父母に会いたがるものの「事件があるから会えない」と気遣ったり、何かを欲しがるそぶりもない。年不相応な分別すら見せることがあるという。
ただ、肝心の事件の話になると、概略は語り始めているが、動機や殺意、計画性の有無という核心部分を含め、触れたがらないことも多いという。戸田弁護士は「反省の意思は十分あるが、形に出ているかと言われれば、そうは言えない。分からない部分は多い。少年と向き合い、心を開かせたい」と語る。
一方、長崎家裁の第1回審判(7月23日)に姿を見せなかった少年の両親は、7月末までの時点で被害者への謝罪はしていないという。
■学校は
少年が在籍する中学校が事件直後、全生徒に実施した「心の健康調査」では、72%が「事件が頭から離れない」と答えた。特に同じ1年生では男子の77%、女子は96%に上り、ショックの大きさが確認された。
長崎県教委は県内の公立小中学校すべてに夏休みの個人面談を要請した。長崎市教委も各学校長に通知を出し、各校は児童・生徒との2者面談や保護者を含めた3者面談、家庭訪問を始めている。
ある市内の中学校では7月中に、全生徒との面談を済ませた。質問は「事件をどう思うか」「事件後、自分自身変わったことがあるか」。だが、記者が取材した数校の生徒は「面談でどう答えたかも忘れた」などと話し、人ごとの様子だった。
少年の中学以外では、深刻に受け止めているのはむしろ保護者のようだ。長崎市の「こどもと親の心のケア相談」に寄せられた事件関連の相談は100件を超え、7割余りを母親が占める。少年が下校後、ゲーム店などに一人でいたことが多かったため、わが子の「一人遊び」への不安を訴えているという。
市こども課は「少年が普通の子だったと言われているため、『自分の子供は大丈夫か』と心配している母親も多い。少年の養育歴などできる限り情報を公開してほしいという声も少なくない」と言う。【横田信行】
◆精神鑑定の効果を疑問視する声も
本来、刑事責任能力の有無を判断するための精神鑑定が今回、刑事責任を問われない12歳の少年に行われている。専門家の間でも「動機や背景を解明するために鑑定に頼りすぎてはいけない」と効果を疑問視する意見と「重大事件の場合は必要」とする見方に分かれているのが実情だ。
鑑定を長崎家裁に申請した付添人の弁護士は「原因究明のため」と説明する。過去の少年事件では精神障害の有無のほか、成育歴や性格、処遇について裁判官が鑑定人に参考意見を求めたことがある。
97年、14歳の少年による神戸市の小学生連続殺傷事件で、家裁は処遇などを判断する際、精神鑑定書のかなりの部分を引用した。17歳が起こした00年の西鉄高速バス乗っ取り事件では、家裁調査官や鑑別所が示した処遇についての意見と、鑑定人の意見が食い違ったが、裁判官は鑑定に沿って医療少年院送致を決めた。
こうした現状に、複数の精神科医は「精神障害の有無だけを判断するのがわれわれの役目。精神科医は万能ではなく、司法の役割である処遇の決定に過大に影響を与えてはならない」と指摘する。バス乗っ取り事件の鑑定人本人も「自分の意見が通る可能性の方が低いと思っていた」と打ち明ける。
一方、11歳の少女を鑑定した経験がある精神医は「今回は事案が重大であり、発達障害があるかどうかを含めて鑑定する必要もあるのではないか」と話す。
最高裁は、13歳以下の精神鑑定を昨年1例把握しているというが、実施例は少ないとみられる。【青島顕】
[毎日新聞8月4日] ( 2003-08-04-00:34 )
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/shakai/20030804k0000m040095000c.html