現在地 HOME > 掲示板 > 日本の事件6 > 493.html ★阿修羅♪ |
|
揺れる姿 面白さ・幼さ・賢さ・怖さ
「このクラスでおもしろい人」。この春、少年が卒業した長崎市の小学校の卒業文集に、こんな項目の学級アンケートの結果が載っている。少年は1位に選ばれていた。周囲の子どもたちはなぜ、こう感じたのか。
小学校のパソコンクラブで部長だった。キーボードの扱いがうまかった。卒業文集に書いた将来の夢は「プログラマー」。趣味・特技は「ゲーム」。自分の似顔絵欄には、「ドラえもん」とともに人気ゲームソフトに登場する犬のキャラクターを描いている。
ゲームにくわしい少年の周りには休み時間、人の輪ができた。
その意味では人気者だった。しかし、アンケート結果には別の意味も込められていた。当時の同級生の一人が話す。
5年生のとき、先生にしかられ、怖がり、パニックのようになっている姿が周りにこっけいに映った。隣のクラスにも、その様子が知れわたり、「みんな、それを面白がった」。
「少年がみんなを笑わせるより、みんなが少年を笑っていた。ちょっとした有名人だった」
突然、パニックに陥る少年。その印象は学校関係者も抱いていた。
幼稚園時代、困ったことや、うまくできないことがあると、泣いたり、奇声を発したりした。女児の髪の毛をはさみで切ろうと追いかけ回し、先生の洋服も切ろうとしたこともあったという。
「ほかの園児に比べて、かんしゃくを起こしやすい。先生の間でも『気をつけなければならない』と話題になっていた」。そのころを知る人は振り返った。
少年は、長崎市の自宅近くの幼稚園から私立の幼稚園に転園した。私立小学校に入学するが、1年生で公立小学校に転校、さらに2年生で別の小学校に移り、そこで卒業を迎えた。
5年生までの複数の先生たちに、ほとんど共通している評価が「情緒不安定」だった。低学年のころ、廊下を走っているのを先生が注意すると、「注意されたあー」と叫んで回っていたという。
ある学校関係者は言う。「幼稚というか、赤ちゃんのようだった」
6年生になった少年を、学校関係者の一人が「落ち着いてきた」と感じたことがある。少年は鉄棒をつかめず、跳び箱はいつもひっかかるほどで運動は極端に苦手だったが、体育の時間に持久走に挑戦するようになったからだ。
ただ、中学校での様子は、また変化する。
1学期の期末テストでは5教科500点満点で465点。成績は学年でトップクラスだったが、指導の最中に突然、逃げ出し、しばらくして気持ちを落ち着かせてから話すことがあった。
「授業中など注意散漫。人の顔色をうかがいながらの様子も感じられる」。学校関係者にはそう映った。こっけいで「おもしろい人」は「切れたら怖い」人に変わった。
小学校の同級生の一人は言った。「何があったかは分からないけど、中学に入ると、おとなしくなって、影が薄くなった感じ。学校の外に出ると、さらに静かになったようだった」
◇
長崎市の12歳の少年の「心」を探る作業が始まる。関係者の話から浮かぶ少年の姿を改めて見つめておきたい。
(朝日新聞2003年7月24日朝刊紙面)
http://www.asahi.com/special/nagasaki/030724.html