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(回答先: Re: 共同的資本主義論についての諸問題 投稿者 すみちゃん 日時 2003 年 8 月 09 日 12:13:15)
すみちゃんさん:
レスありがとうございます.
> 私はちょっと先走りすぎていますね。 まずかったかもしれません。
> こういう「実際的」問題に入る前に、基本部分について英文を作製し、外国人に公開する方を優先して下さい。
> 「実際的」問題はその後で良いです。 だからレスもしなくて良いですよ。
> 従って、この手の話はお休みします。
とおっしゃって頂きましたが,レスを読ませて頂いてようやくどの辺りを攻めようとされているのか
が少し見えてきたような気がします.これはことによると私がこれまで述べてきたことを全部撤回
しなくてはならないほどの致命的な問題に拡大する可能性がありますので,続けさせて頂きます.
共同的資本主義の基底3要素のうち,自由貨幣(政府貨幣)に関しては,@国債を発行しないノ
ーマルな財政で,A歳入と歳出がバランスしている,という前提に立てば,自由貨幣による政府
支出は通常の予算の執行と少なくとも外見上は一致することになるので,とりあえず問題はあり
ません.(行動主義の立場からすれば外見が一致すれば内実も同一であるとみなされる.)税
制に関しては,これまでに挙がった徴税3方式(取引税,外形課税,劣化する貨幣)でほぼカバ
ーできるという感触がありますので,これも問題ないと思います.やはり,問題は無利子金融の
部分です.これと自由主義経済を如何に両立させるか?というのが我々の課題です.
住宅取得問題はこれを検証する格好の例題だと思います.ここにはバブル(インフレーション)
の問題と生活の質に関わる問題があります.生活の質に関わる部分に関しては,当事者に委ね
るということで捨象して差し支えないと思いますので,バブルの問題にしぼって考えます.バブル
が発生するためには過剰流動性が存在する必要があると考えられるので,原理的に共同的シ
ステムでは発生しないと言えると思いますが,本当にそれが言えるのかは検証が必要です.
かなりテクニカルな話になってしまいますが,無利子金融のスキームに関する記述では,債務
不履行が発生したとき,中央銀行は単にその物件を引き取るだけとしてきました.場合によって
はいくらかの還付が戻る可能性があることも示唆しています.支払い済の部分について部分所
有権が発生するという考え方です.中央銀行がこの物件を売却しないのは,キャッシュを取得
する必要がないことと,売り出しを実行して差損を確定することを避けるためです.しかし,いか
に物価の安定が予定された社会とは言え,これではあまりにルーズに過ぎるように思われます.
ローンを組む時点で担保価値が厳格に査定されていることを前提とすれば,担保物権を手放す
ことで債務を終了できるとするのは容認できると思います.(このような残債を残さない清算方式
の正式名称がありましたが忘れました.)特に貸主が中央銀行に限られていますから,トラブル
はほとんど起こらないと思います.返済がかなり進んでいるときには,借り手の損失も大きくな
りますから,これはペナルティとして十分な効果を持つと言えますが,まだ不十分かもしれませ
ん.以前の記述では自己破産はこの社会では存在しないとしましたが,それに近いことは必要
であるように思います.少なくとも債務不履行者には今後の融資に厳重な制限が課される,な
どとすべきでしょう.むしろ自己破産という制度があるとした方が分りやすいかもしれません.
これは一旦ローンを組んで購入した物件を(中央銀行に)返すことはできない,つまり,一旦取
得した住宅を手放すためには自己責任で買い手を見つけなくてはならないことを意味します.
(この社会では時間とともに共有が進むというイメージはやや修正されることになります.)これ
で安易に買い替えを行なうという風潮はある程度抑制できるかもしれません.中古市場が充実
して新築が抑制されるという方が望ましいと思われるのですが,そのような方向に向かうでしょう
か?値上がり益を期待できない(つまり,恒常的なインフレーションを期待できない)とすれば,
個人所得の限界から住宅価格はいずれ落ち着くべきレンジに落ちることになると思います.
債務者が死亡したときには,残債は遺産として相続されることになります.相続放棄というのは
現行法制にも含まれています.相続人がいない場合はどうでしょうか?100年ローンというのは
悪いアイディアではないと思いますが,もう少し時間をかけて検討する必要があるかもしれませ
ん.死期の迫った人が大きな家を取得して後に空き家を残すというのも問題があります.そも
そもローンの期間を耐用年数一杯まで取るというところに無理があります.住宅はすでに老朽
化していますから,ローンを払い続ける意欲も減退してしまいます.精々耐用年数の半分とい
うのが許容限界ではないでしょうか?(金利を除けばほぼ既存の住宅融資に戻りました...)
ところで,株式は資産と言えるでしょうか?もし,株式が資産であるとすれば,個人ローンを組
んで株式を取得するということが可能になります.設立間もない会社の株はリスクが高過ぎて
融資の対象とならないでしょうが,設立後10年経過している会社がその後10年間存続するこ
とを見込めるなら,5年ローンを組める可能性があります.ローン期間中は転売はできないと考
えられるので,これは安定株主を増やす方向に作用します.しかし,発行済株式数は有限です
から,これが株式の高騰を招く引き金となる可能性はあります.→市場に出回っている株式の
総数が減少する→株価が上がる→今のうちに買っておこうとローンを組む→.これから見ると
やはり株式を担保とする(株式を購入するための)ローンは認められないような気がします.
私は実のところを言ってイスラム銀行の実態について十分な知識を持っていないのですが,
少なくとも我々の金融スキームはイスラム銀行のそれよりかなり「堅い」と言えるのではない
かと思います.つまり,イスラム銀行ではむしろ積極的に「投資」を行なっている,つまり一種
のベンチャーキャピタルとしての役割も担っていると見てよいのではないかと思います.我々
のシステムでは成熟した証券市場の存在が仮定されていますが,イスラム諸国では多分未
だ未発達であるといってよいと思います.共同的システムでは財布に余裕のある個人が増え
ることが予想されるので,創業時に出資するエンジェルの増加も期待できると思います.
私は個人的には株式は額面で売買されるのがもっとも健全であると考えていますが,それ
を強制することはできません.それにしても,あまり値幅が広がらないことを期待しています.
そのようなことがここまでのスキームで実現されるでしょうか?証券市場には特別の仕掛け
を施していないので,余剰資金があればそれが市場に流入することを防ぐことはできません.
株式の売買は結局においてゼロサムゲームですから,単調に増加したとしてもどこかで必
ず反転します.場合によってはそれが恐慌の引き金となる可能性すらあります.均衡点を
探すのなら,リーズナブルな配当益を得られるレンジと思うのですが...
取りあえずこれは当事者に任せるとして,上述した株式購入のためのローンを組めないと
いう規則を一般化して,「株券を担保とする融資は不可」というところまで拡張しましょう.こ
れはある意味で,証券市場をマネタリシステムから切り離すという方策です.この規則はマ
ネタリシステムの安定化にはかなり有効に作用すると思います.と言うか,共同的資本主
義のマネタリシステムでは「何かを担保にしてお金を借りる」というスキームはもともと無か
ったような気もするのですが...これまで提示してきた融資形態はすべて「何かを購入す
るためにその物件を担保にお金を借りる」というものでした.つまり借入の使途が厳密に確
定した言わば商品クレジット(実質的にはリース)です.
英治