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(回答先: Re: 徒然なるままに、そして、のっぴきならずに 投稿者 まぁ、どんな 日時 2003 年 6 月 15 日 01:16:43)
『まぁ、どんな』様、
あなた様は実際に発掘をなさっている男性でいらっしゃるのでしょうか?
(もちろん女性の考古学者もいらっしゃるでしょうが、
女性が連日炎天下でツルハシを振るうというのはなかなかハードそうなイメージがあって。)
遺跡を予見して発掘なさっている、というのが比喩的表現でなく現実のお仕事なのでしたら、
あなた様はあたくしの出会った最初の考古学者でいらっしゃいます。
そうだとしたら、あなた様ももちろんシュリーマンの伝記はご愛読なさっていたことでしょう。
あたくしがかの書を愛するのは、あれほど艱難に満ちた波乱万丈の人生なのに
チャプリンの喜劇のようにペーソスと明るさと希望があるからなんですのね。
ああいった頑固なオッチョコチョイが身近にいると、
実際にはかなり迷惑かも知れないとは思うけれど。
それで、あたくしの授かった胎教の話ですが:
実はあたくしの父親というのが、若かった頃は、
世間によくいるタイプの非常に単細胞な男性でございましたの。
いますでしょ、あの、ブスにはこの上なく横柄なくせに、
美人には足蹴にされてもデレデレしてるようなのが・・・。
それで、若かった頃は非常に美しかった、戦後没落したものの
一応旧家の末娘であるあたくしの母を嫁にしたのですが、
この母というのが、我が儘一杯に育てられた、まるで
スカーレット・オハラのように癇の強い女性でして、
父はおそらく浮気をして憂さを晴らしていたのでしょう、
それまでに兄が一人生まれておりましたが、
母があたくしを妊娠していた頃には夫婦仲はすっかり冷えきっていたようです。
あたくしが七歳の頃、この両親の夫婦喧嘩を観戦していたところ、
旗色の悪くなった父が、あたくしを味方につけようという魂胆で、こう申しました。
『お前の母さんは、お前がお腹の中にいた時に、ピアノの上へ登って飛び降りたんだからな。』
つまり、これがあたくしが受けた胎教だったわけでございますね。よく死ななかったなあ・・・。
それであたくしがどう思ったかと申しますと、
まず自分を生んだ張本人である両親の手で、あたくしは自分の出生を穢され、
大変な迷惑を被った、と思ったんですの。
そして、そういったことを暴露して、子供を夫婦喧嘩の味方につけられると思っているような
我が父のことを大変愚かな男だとしみじみ思い、心底軽蔑したんですの。
妻の恥は自分の恥でもあることを、どうしてわからないんでしょう。
あまりに呆れて物も言えなかったので、そのまま反応も示さず両親の喧嘩を放置し、
ああ、迂闊に結婚すると大変なことになるぞ、そう思ったのをはっきり憶えております。
小さいお子達をお持ちのお父様お母様は、呉々も子供を簡単に騙せるとはお思いになりませんように。
だいたい四、五歳になっていれば、両親のどちらの言うことがおかしいかぐらいは
ちゃんと分かる子供も少なくないものです。
それからの家庭は、物質的に不自由したとは言えませんが、
少なくともあたくしが母の背を追い越すまでは生き地獄でございました。
愛されない女というものがどんなに夜叉のように恐ろしく醜くなるものか
身を以て知ったわけでございますね。
その後の父は、やはり慰謝料の額を考えて離婚を思い留まり続け、
七十の歳を過ぎでまた二人きりに戻った今、
何十年という結婚生活のうちに貯めてきたヘソクリを使っての女友達との外遊に余念がなく、
父が小遣いを減らした当てつけに、父に自分の食事を
自炊させるようにさえなった母を、諦観を以て耐え続けているとのこと。
そんな父が過日ポロッと申しましたわよ。
『若い頃、オレにホントに惚れてくれてる娘がいたんだけど、
お前の母さんの方が美人で家柄も良かったし、
その娘が斜視なのが気にいらなくて、うっちゃってたんだ。
あのバチが当たったんだなあとつくづく思うよ・・・』、と。
七十になってからでも、分かっただけ良かったかな、と
少し救われた気持ちになりました。
そういった家庭から発して、どう生きようと思ったかと申しますと、
やはり、まず何としてでもあの穢れを一生かかっても自分の手で祓いたかったですねえ。
例えばあたくしの兄は、あたくしとは違って一見ドライにすら見えるリアリストで、
また夫婦仲が冷えきってから生まれたあたくしほどには害を被らなかったはずでもあるのですが、
四十過ぎた今も、あの当時を悪夢として憶えているようです。
結婚して二児があり、残業がどんなに厳しくても、そのボロボロの身体で
工夫を凝らした家庭サービスを心がける様子は健気でございます。
あたくしの方はと申しますと、
この世界のどこで、どんなにビンボーな男に惚れてもやっていけるよう
専門技能を自分に鍛え上げられる最上のレベルまで上げて、そののちは
自分と同様にお目出度い男、あたくしの『生きたトロイア』の現れるのを、
ただ釣り糸を垂れて待つだけでございました。
この男のお目出度さには、中央線板送りになりかねませんから(笑)
言及しないでおきますわね。
あの七歳の頃の覚醒から三十年近くはかかりましたが、
それでも、自分がシュリーマンほどの苦労をしたとは思えません。
今では、そんなにしてでも探したい、というものがかつてあり、
現在、その価値を完全に認識した上でそのものと共に在る、ということが
稀な僥倖なのだと思っております。
『まぁ、どんな』様のトロイアは一体どこにあるのでしょうか。
もちろん早く出てくるに越したことはないんだけれど、
それがいつの日であれ、出てきたあかつきはもちろん、
その日を待つ現在もあなた様が幸せな方でいらっしゃることは、
あたくしには簡単に信じることができますわ。
ご健康にだけはお気をつけて邁進なさいますよう応援させて下さいませね。
(ちなみに、常連のみなさまは夙にご存知ですが、
あたくしは非無神論者という条件つきの無宗で、
何もかもを簡単に信じる女性、というわけではございません。)
ではまた、ごきげんよう。