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成熟債権国家」への日本の挑戦
―19世紀の英国の国際分散投資戦略に学ぶ―
金融市場展望と投資戦略
2003年7月号
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要約
「成熟債権国家」への日本の挑戦
―19世紀の英国の国際分散投資戦略に学ぶ―
1, イラク戦争が終結し新型肺炎SARSの終息が見えてきた中、6月25日の米国の政策金利引下げをきっかけに「過度なグローバル・デフレ懸念」が薄れました。このため巨額の投機資金が債券から株式に移り、先進国の株高と低下し過ぎた長期金利の上昇が加速しています。欧米の長期金利(10年国債)は、3月のイラク戦争勃発前の相場水準(米国3.97%、ドイツ4.19%、日本0.74%)を目指して上昇し、世界規模で株高が進んでいます。わが国は、銀行への公的資金注入で当面の信用不安が払拭されたことが加わり、金利の上昇が続いています。ただ、イラク戦争以前に比べて世界経済に新たな成長を加速する要因が加わったわけではなく、中長期的なグローバル・デフレ要因及びこれを映した先進国の長期にわたる金利低下トレンド自体は変化しないと考えられます。企業の設備投資意欲が戻らず、個人消費のみに牽引された米国の景気回復速度は、緩やかなままで今年後半も終始するとみられ、グローバル・デフレ・リスクとの共存が続くでしょう。
2, 2007年以降から始まるわが国の人口減少社会がもたらす諸問題が、ここにきて少子高齢化社会の不活性化危機、年金危機、財政赤字危機などとして、注目され始めています。人口減少は、わが国経済の成長段階が、明治以来の成長期を終えて「潜在成長力が大きく低下する成熟期」に移行することを意味します。1400兆円というわが国の巨額の個人金融資産は、国内経済の成熟化によって投資機会が減少し、長期視点で海外投資に分散させる必要が生じます。ただ、わが国の人口減少の速度と高齢化の速度が、他の先進国や過去の英国の例に比較して異常に速いこと、及び、足元の経済構造転換に失敗すれば、海外投資が十分に進む前に、通貨価値の急落、悪性インフレ、高齢者層の貯蓄の取り崩しなどによって家計の貯蓄率自体が低下し、海外投資能力自体を失うリスクがあります。わが国が、戦後の成長期に蓄積してきた巨額の個人金融資産を軸に、「成熟債権国」への脱皮を賭けて、国際分散投資戦略が正念場に差し掛かっているといえます。
3, 自国経済が成熟化する過程で、国際分散投資戦略を成功させて、世界経済の活性化と巨額の投資収益の自国への還流に成功した英国の例を紹介します。英国は、1860年以降国際分散投資を本格化させ、さらにそれによる投資収益を再投資したことで海外純資産は加速度的に拡大し、1913年には名目GNPの1.5倍にも達しました。英国の経常収支黒字は、第一次、二次大戦時を除いて1800年代から1972年まで超長期にわたって続きました。この国内の巨額の貯蓄超過(=経常収支の黒字)が国際金融市場に還流し、世界経済を活性化させました。産業革命によって「世界の工場」として成長した英国が、その後の海外投資の成功で「世界の銀行」として君臨した点に学ぶ時期がきました。