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７月４日（ブルームバーグ）：過去３カ月で日経平均株価が２割以上上げたことは、たった１人の人物で説明がつくかもしれない。その人物とは、アラン・グリーンスパン米連邦準備制度理事会（ＦＲＢ）議長だ。
日本の株高を支えるためのファンダメンタルズ（経済の基礎的諸条件）は何も変わっていない。変わったことといえば、米景気に対する見方が楽観的になったことだ。米国の利下げが、ダウ工業株30種平均やナスダック（店頭市場）総合指数ばかりでなく、日経平均までも押し上げたのだ。だが米国の回復が日本の株価を押し上げることは可能か。答えは「ノー」だ。理由は２つある。日本の景気は依然芳しくないことと、米市場への期待がより高いことで日本の金融資産から資金の引き揚げが予想されることだ。
確かに明るい兆しもある。失業率は５月5.4％と上昇に歯止めが掛かり、同月の鉱工業生産指数は前月比2.5％上昇となった。市場は企業業績の改善をはやし立てている。６月の日銀短観も改善した。しかし、大所高所からの視点を失ってはならない。日本の金融システムは今なお厳しい状況で、デフレ傾向は改善ではなく悪化の方向にある。
重大さ認めず
日本のいわゆる回復は中身のない形で起きている。回復とはいえ、失業率は上昇し、企業の倒産が増え、賃金は下落するだろう。日本政府が新たな経済政策の道筋を検討しない限り立ち行かない。日本経済が置かれた厳しい状況を考えると、投資家がいとも簡単に株購入に走り出しているのには驚く。政府当局者についても同様で、最悪期は過ぎたとか、長いトンネルの向こうに明かりが見えていると語る向きが増えていることには驚きを禁じ得ない。
こうした動きは日本政府が問題の重大性を認めていないことを示すもので、日本株の上昇には全く強気にはなれない。日本政府は円安と米景気回復によって、長期的な経済的繁栄のために必要な厳しい政策に着手せずに済むと、いまだに期待しているのだ。
日経平均は今「大幅下落後の一時的な回復」を享受しているにすぎず、こうした相場では新たに株を購入するよりも塩漬け株を売却するほうが賢明だ。ただ、一部にはリストラを断行している企業もあり、ハイテク株の上昇は本物である可能性もある。ソフトバンクがあおぞら銀行の49％株式を米投資ファンドのサーベラスに売却を決めたことも市場にはプラスだ。当局がこれを承認すれば、日本が良い方向に変わりつつある兆しと受け止められよう。ただ日経平均を押し上げている力とは、大方の人が考える以上に危ういものだ。先週発表された短観の改善が地合いの好転につながっているが、企業幹部の景況感改善はまさにその株価上昇が背景といった具合なのだ。
いまだ覚めず
グリーンスパン議長の金融政策のさじ加減が世界中の株価を押し上げてはいるが、45年ぶりの低金利が米経済を回復させるかは定かでない。期待通りに米国景気が回復し、同国の株価が上昇すれば、日本の投資家は、巨額の不良債権を邦銀のように放置したりしない米銀に乗り換えることも考えられる。また、日本以外のアジア諸国の株式相場も上昇が見込まれる。アジア株は４−６月期に３年半ぶりの大幅上昇を演じた。米経済が回復すれば、投資資金は円資産を離れ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、韓国、タイに向かうだけかもしれない。
アジア諸国は1990年代後半のアジア危機を受けて、なすべきことは山積している。だが、日本のような金融システムの問題を抱えている国はほとんどなく、日本の国債市場のようにいつはじけてもおかしくない巨大な資産バブルも抱えていない。実際、最近の株高が国債需要をしぼませると、債券投資家は脅えている。日本の国債相場が下落すれば利益が目減りするとの懸念で、銀行株が反落する場面もあった。
日本経済は数カ月前に比べて好転しているように見えるかもしれないが、株式相場に強気になる理由は全くない。夢がしぼむ日は必ず来る。今はまだその時が来ていないだけだ。（ウィリアム・ペセック・ジュニア）
（ペセック氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。同氏の見解は彼自身のものです）
東京 William Pesek Jr. 東京 小針 章子 Akiko Kobari
Last Updated: July 10, 2003 02:51 EDT
http://quote.bloomberg.com/apps/news?pid=80000003&sid=aUyc8IR8KhP4&refer=top_kaigai
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。