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輸出非課税(免税)と「輸出戻し税」を含む現行の消費税制度を“手取りの公平さ”から正当だと主張されている方がいる。
しかし、利益課税ではなく付加価値税である消費税は、普遍的な“手取りの公平さ”をめざしたものではなく、輸出非課税(免税)と「輸出戻し税」によって“手取りの公平さ”が実現されるわけでもない。
輸出非課税(免税)と「輸出戻し税」は、輸出という取引の局面に限って、“手取りの公平さ”が実現されるかのように錯覚させるものである。
タイトルにした「デューティ・フリー(免税)でもプロフィット・フリー(差益なし)ではない」は次のようなことを意味する。
空港などの免税店を思い浮かべて欲しい。
タバコや酒そして香水が主要販売品であるが、アクセサリーや衣料品も販売しているし、週刊誌を中心に書籍も免税で売っている。
週刊誌は、250円のものが239円で買える。
タバコは、タバコ税が付加されているので、1カートン2,700円のものが2,000円ほどで買える。(スリランカの空港ではマルボロが800円ほどで買える)
しかし、アクセサリーや衣料品は、免税店で買うより、都内のディスカウントショップで買うほうが“消費税込み”でも安い。(同じ物があればデパートよりは安い)
消費者のグロス価格は、販売店が提示する「仕入れ値+利益」を1.05倍(消費税額込み)したものになる。
同じ商品の免税店とディスカウントショップの仕入れ値が同じだとしても、粗利益率の考え方が違えば消費者が支払うべき金額は変わる。
デパートで10,000円(10,500円)で売っているアクセサリーがあるとする。
免税店は、消費税を負担しないので済むので、「仕入れ値6000円+利益4000円」の10000円で販売する。(「輸出戻し税」があるので、仕入れにかかる消費税は戻ってくる)
ディスカウントショップは、「仕入れ値6000円+利益2500円」×1.05の8,925円(消費税込み)で販売する。
タバコについても、消費者価格が高いからと言って街中のタバコ屋のほうが粗利益が大きいというわけではなく、免税店のほうが粗利益が大きいのである。
2700円のものを2000円で売っても大きな粗利益が得られるのは、タバコが“税金の塊”だからである。
5%の消費税だけでは、粗利益率の考えで価格競争力で優位に立てるとは限らないが、国内販売では50%を超える税金が含まれているタバコであれば優位に立てる。
タバコにかかる諸税が仮に定価の50%だとすると、2700円のタバコの税金は1350円である。
街中のタバコ屋は、2700円の8掛けの2100円で仕入れるようだから、1カートン当たりの粗利益率は20%で粗利益は600円である。(消費税は込みで処理)
免税店は、タバコ諸税からフリーなので、タバコメーカーないしその現地法人から1350円で仕入れるとしたら、2100円で販売しても、750円(粗利益率35.7%)の利益が得られる。(仕入れ値の1350円は仮の数値)
これは、免税店だけが高い利益を得られるわけではなく、タバコメーカーも免税店に卸すことで高い利益を得られる。
街中のタバコ屋に卸すことで得られる手取りは2100円−1,350円(タバコ関連諸税)=750円だが、免税店であれば、1,350円だからである。
だからこそ、免税店では、安くタバコが買えるにもかかわらず、時計やバッグがおまけについたりするのである。
このような前置きの話をしたのは、昨日の書き込みで少し触れた以外、国内価格と輸出価格は同じだという前提で議論が進んでおり、“手取りの公平さ”もその枠内で正当性が主張されているように思えるからである。
端的には、同じ商品を国内よりも輸出のほうが高く売れるということを考慮しないまま、“手取りの公平さ”が云々されている。
国内よりも輸出のほうが高く売れることはないということはないし、消費税制度にはそのような規制もないのである。
(消費税は、見かけと違って、販売価格にかかるのではなく付加価値にかかるものだから、そのような規制を要請しない。販売価格が高ければ自動的に消費税額が高くなるから、ネットの販売価格を高くしづらいという論理的規制が働くだけである)
再び、パン屋の二人に登場願おう。
輸出・国内とも1個200円で100個販売したときの二人の“手取り”は、ともに11,000円である。
例1:輸出価格と国内価格に差
【パン屋のボク】
ブッシュくん(90個)には210円で販売し、ジュンちゃん(10個)には190円(消費税込み380円)で販売することにした。
※ ブッシュくん(90個)は、210円で輸入したパンをニューヨークで州&市税9%を上乗せして、1ドル90セント(227円)で販売した。
輸出販売に対する消費税額:0円:(18.900円×0%)
国内課税売上高に対する消費税領:1,900円(1,900円×100%)
仕入税額控除額: 9,000円
納付消費税額: ▲7,100円
ボクの利益:売上20,800円+消費税預かり1,900円−仕入9000円−負担消費税9000円+還付消費税7,100円=11,800円
【パン屋の美代ちゃん】
美代ちゃんのパンは消費税込みで400円で販売:
※ 美代ちゃんがパンを1個210円にすれば、消費者税込価格はブッシュくんの買値の倍である420円になる。
国内課税売上高に対する消費税領:20,000円(20,000円×100%)
仕入税額控除額:9,000円(9,000円×100%)
納付消費税額:12,000円
美代ちゃんの利益:売上20,000円+消費税預かり20,000円−仕入9,000円−負担消費税9,000円−納付消費税12,000円=11,000円
これに法人税を加味すると、ボクは、美代ちゃんよりも480円(800円×60%)手取りが多くなる。
現行の消費税制度では、輸出価格を高くしても消費税には影響せず、利益に課税される法人税額が増加するだけである。
ボクのパンは消費税込みで380円なのに、美代ちゃんのパンは消費税込みで400円なので(価格差20円)、美代ちゃんのところのお客さんが買いに来るようになり“商売繁盛”です。
現行の消費税制度であれば、国際市場で競争力を維持している企業は、それを利用して国内での価格競争力を高めることもできる。
輸出の価格を上げても元々非課税の消費税額はオンされないが、国内で価格を上げると消費税額もオンされ、値上げ以上の負担を消費者に強いることになる。
消費税率の段階的アップがスケジュール化されようとしているが、輸出企業が国内販売も行なっているなかで現状の消費税制度が続けば、消費税の転嫁が常に付きまとう国内向け専業企業と売上のある部分は消費税のことを考慮しなくて済む輸出兼業企業の競争条件をますます歪めることになる。
例2:消費税が120%になったとき
【パン屋のボク】
ブッシュくん(90個)には210円で販売し、ジュンちゃん(10個)には190円(消費税込み418円)で販売:
輸出販売に対する消費税額:0円:(18.900円×0%)
国内課税売上高に対する消費税領:2,280円(1,900円×120%)
仕入税額控除額: 10,800円
納付消費税額: ▲8,520円
ボクの利益:売上20,800円+消費税預かり2,280円−仕入9000円−負担消費税10,800円+還付消費税8,520円=11,800円
【パン屋の美代ちゃん】
美代ちゃんのパンは消費税込みで440円で販売:
国内課税売上高に対する消費税領:24,000円(20,000円×120%)
仕入税額控除額:10,800円
納付消費税額: 13,200円
美代ちゃんの利益:売上20,000円+消費税預かり24,000円−仕入9,000円−負担消費税10,000円−納付消費税13,200円=11,000円
ボクのパンは消費税込みで418円なのに美代ちゃんのパンは消費税込みで440円と、消費税が100%のときより税込み価格差が2円増えたので、美代ちゃんのところのお客さんがさらに買いに来るようになり、ますます“商売繁盛”です。
美代ちゃんは、販売不振を解消するために、やむなく、パンの価格を190円に改定した。
【パン屋の美代ちゃん】
美代ちゃんのパンは消費税込みで418円で販売:
国内課税売上高に対する消費税領:22,800円(19,000円×120%)
仕入税額控除額:10,800円
納付消費税額: 12,000円
美代ちゃんの利益:売上19,000円+消費税預かり22,800円−仕入9,000円−負担消費税10,800円−納付消費税12,000円=10,000円
97年に消費税が2%アップされたが、それを契機にデフレ・スパイラルに陥り、ほぼ輸出優良企業のみが高収益を上げるようになったわけを考える参考にしてもらえれば幸いである。