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(回答先: 【■萬晩報】アメリカのネクスト・ターゲット 投稿者 愚民党 日時 2003 年 5 月 03 日 00:33:28)
イデオロギーの戦争
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ずっと戦争に反対だったフィナンシャル・タイムズ紙のコラムニスト、フィリップ・スティーブンスが次のように書いた(3月21日付け)。「トニー・ブレアは私を説得したが、私はジョージ・W・ブッシュを怖れる」。
ブレア氏はこの数ヵ月、国民を説得することに全力を傾けてきた。そして、2月6日にはBBCで、3月10日にはITVで一時間にわたる敵対的な視聴者との討論番組に臨んだ。前者では「ミスター副大統領」、「米国の外務大臣」と揶揄され、後者では9・11で子供を失った母親に涙ながらに「やめてくれ」と訴えられても、怒らずに、誠実に、一つ一つの質問、コメントに丁寧に答えていた。
一部の強硬戦争反対派を除いて、多くの人がこの誠実な態度を評価している。少々、揺れはあったが、基本的にはブレア氏の論理は一貫している。3月18日の戦争賛成決議採決前の演説を基に、同氏の議論を整理しよう。
(1)フセイン体制は湾岸戦争以来、「1441」を含め、17の国連決議に違反してきた。ここで行動を起こさなければ、イラク以外の「ながず者国家」に対する威嚇が効力を失う。
(2)フセインのような不安定な体制に大量破壊兵器の所有を許していたら、いつかこれがアルカイダなどのテロリストの手に渡る。そうなったら、英国自体が生物化学兵器の標的になる。
(3)フセイン体制は世界で唯一自国民に生物化学兵器を使用した。さらに、虐殺、拷問などで国民が抑圧されている。われわれは彼らを解放し、自由を与えなければならない。
私はブレア氏が本心から以上の議論を信じていると見る。この見方が正しいなら、多くの人が同氏の誠実さに感銘を受けるだろう。しかし一方で、この「ボーイスカウト」的実直さが、ブッシュ政権のイデオロギーと合うかどうかが問題になる。
上で紹介したスティーブンスは次のように続ける。「戦争では動機が重要だ。動機が、戦略家が『デー・アフター』[戦後処理のこと]と呼ぶものにおいて何が起るかを定義する。動機が瓦礫から出現してくる建物を形づくる」。
つまり、もともとの動機が戦後のあり方を決めるということだが、ブレア・イデオロギーに則るならば、戦後に達成すべき課題は、できるかぎり速やかに戦後イラクを国連管轄下に置き、かつ、4月2日のクエスチョン・タイムで述べたように、イラク国民自身による政権を創ることと、パレスチナ国家樹立に至る中東和平の「ロード・マップ」を作成することとなる。
しかし、ブッシュ政権の「動機」を見ると、これが不可能なことがわかる。まず、ブレア・イデオロギーが左派的な「人道主義」にもとづく一方、ブッシュ政権のそれは背筋が寒くなるほど右翼的だ。
チェイニー副大統領が恐ろしいほどの頑固な保守であることは有名だが、その妻も恐れを知らぬ右翼だ。チェイニー夫人は高名な教育学者だが、現在、全米の大学からリベラル学者を排除する運動を指揮している。
また、「ネオコン(新保守派)」も、ブレア氏とはまったく反対の方向を向いている。フィナンシャル・タイムズ紙3月6日付けの秀逸な解説記事は、ブッシュ政権内のイデオロギーを次のように整理する。チェイニー氏、ラムズフェルド国防長官は、世間で言われるようなネオコンではなく、「旧保守派」で「ナショナリスト」。彼らの最優先課題は米国の国境線内の安全を確保すること。
一方、国防省のポール・ウォルフォウィッツ、ダグラス・フェイスなどのネオコンは、「米国のイメージどおりに世界を変えるという革命的な目的」を持っている。彼らの課題は「米国の安全保障、卓越性」だけでなく、「その卓越性を政治プログラムを推進するために使う」こと。
ネオコンは、旧保守派の悲観的な「バランス・オブ・パワー」観とも、一方で、左翼的な自己卑下とも、一線を画す。米国が卓越しているため、その理念を海外に輸出でき、その理念通りに世界秩序を書き換えることができると信じる点で、とても楽観的。
ネオコンの第一世代は1950、60年代に左翼で、そこから転向してきた人々。また、その多くがユダヤ人。
この見方が正しいなら、仮にイラク問題に関してだけはブレア氏とブッシュ政権の考えが一致しても、その「動機」が異なる以上、「その後」のあり方が変わってくる。
まず、4月2日の議会で述べたように、ブレア氏はイラン、シリアを攻撃するつもりはない。というよりは、反対に、ブレア政権はイラン、シリアと堅実な外交関係を築いている。一方、ブッシュ政権は「米国の思いどおりに世界秩序を書き換えたい」以上、イラン、シリアも標的に入ってくる。
また、ブレア氏はパレスチナ問題を解決することでイラク攻撃を正当化したいが、ネオコンがブッシュ政権内で力を持っている限り、ユダヤ人が嫌う「パレスチナ国家樹立」は難しいだろう。
さらに、米国のイメージ通りにイラクを変えたい以上、イラクを簡単に手放すはずがない。
われわれはイラク戦争がブッシュ政権の「イデオロギー」の戦争であることを理解すべきだ。戦争反対派は「石油陰謀説」という無茶苦茶な議論で自分たちの信頼性を台無しにしたことを理解すべきだ。これが「イデオロギーの戦争」であると認識しない限り、次の戦争を止めることはできない。
http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/