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★阿修羅♪
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２００３年３月２０日，アメリカ大統領Ｊ・Ｗ・ブッシュは国際世論の轟々たる非難の中，イラクの首都バグダッドへの空爆を開始した．８年間におよぶイラン・イラク戦争とそれに引き続く湾岸戦争によってすでに限界にまで消耗していたイラク軍は，その後の１２年間におよぶ過酷な経済制裁下，国連の名のもとで実施された大量破壊兵器の厳格な査察と廃棄プロセスによって事実上丸裸にされていた．猛り立つ黒馬にまたがったカウボーイは女が許しを請いながら自分の手で最後の一枚を脱ぎ捨てるのを見届けた後，無慈悲にも身を守るもの一つも持たない無抵抗の女に獣のように襲い掛かった．舌なめずりし，「もう待ちきれない」とうめきながら．「あと１ヶ月の猶予期間を」というシラクのささやかな懇請は血走った目の端にも入らず無視された．アメリカのでたらめな強弁と口から出まかせの言い逃れは余りにも度を過ぎていたので，もはや誰も対抗することができなかった．知的立国を国是とし，民主主義の旗手を任ずるアメリカが完全に論理破綻者に変じていることは今や誰の目にも明らかになった．アメリカが自己自身の精神的な破滅を危うくも免れているのは，唯一彼の依拠する「アメリカはやると言ったことは必ずやる」という不敵・不遜な宣明の実証的な効力のみに拠っている．
しかし，アメリカの思い通りにならなかったことがただ一つありそれはおそらく結果的に，この１０年あるいはそれ以上の緻密な計画と周到な準備の上で実行された完璧な作戦の致命的な欠陥として露呈することになるだろう．それはこの計画が完璧なものであったがゆえに，それだけにのっぴきならない重大性を帯びたものとならざるを得ない．アメリカは安保理非常任理事国の票を買収しようとしたが失敗した．しかし，これはまだ致命的なものではない．辛うじてアメリカは最終的には４０数カ国・政府の支持を取り付けたと（残念ながらその大半は匿名であったが）言い逃れることができた．「支持を表明する」のを待ちきれなかった我が日本政府の場合にはおそらく工作すら必要でなかった．（真に悲しむべきは国際政治の場における「外交」の役割が見失われ，「工作」がそれに取って代わったということである．これほど政治が不道徳になった時期がかつて歴史上にあったろうか？）イラクに北側で隣接するトルコには湾岸戦争以来アメリカ軍の空軍基地が複数存在する．トルコ議会つまりトルコ国民はアメリカが提示した莫大な賠償金を蹴って，トルコの米軍基地からアメリカ軍がイラクに出撃することを遂に認めなかった．アメリカがこのたった一度限りの作戦でトルコ領内を通過する手数料として提示した金額は戦後アフガニスタンの復興資金５年分にも匹敵するほどに巨額なものであったにも関わらずである．
ブッシュ・フセイン合作説の致命的な弱点は，フセイン政権が崩壊し占領統治機構の設立が目前というこの時期に至ってなお，大量破壊兵器の存在を示す証拠が発見されていないという点にある．ここまで来ると，「合作説」によってこの状況を合理的に説明することはもはや不可能である．最近になってブッシュは，大量破壊兵器が見つからない場合も有り得ることをほのめかす発言をしているが，当初からその程度の当て推量で戦争を始めたと考えるのはいくらなんでも無理がある．そこまで国際世論をなめきるというのは不遜と言っても限界を超えている．従って，アメリカは開戦当初において必ず大量破壊兵器を発見できるという確信を持っていたと考えるしかない．米国諜報部がイラク国内に必ず隠匿されているというガセネタをつかみ，それを信じていたという可能性を排除することはできないが，常識的に考えれば，アメリカは必要なタイミングで「イラクに化学兵器を持ち込むこと」ができると考えていたと見るのが妥当である．
なぜ，化学兵器か？細菌兵器の持込はより容易ではあるが，実証性と説得性に欠ける．つまり，炭疽菌の瓶詰めをポケットから出して見せても，誰も信用しないのは分りきっている．同様に禁じられたミサイルの持込も物理的に難しい．すでに暴露された核兵器疑惑のでっち上げをいまさら蒸し返すこともできない．アメリカ軍は生化学兵器検証のための特設機関を開戦直前に泥縄で編成しイラクに送り込んだが，それは数百名の本物の専門家からなる国連の査察団に比較するとお粗末とも言えないほどの貧弱な陣容であった．後にアメリカは体勢を強化するために，国連査察団のエキスパートを金に飽かして大掛かりに買収することを試みている．アメリカは国連査察団が既に戦闘の停止したイラクに戻って査察活動を再開することを拒絶しているばかりでなく，発見されたとされる物質をアメリカ国内に持ち帰って検証するなどという虫のよい主張をはばかりもなく言ってのけていることからも，彼らが陥っている窮地の深刻さをうかがうことができる．
イラク国内には開戦前から特殊部隊が潜入していたことが知られている．開戦後は数千人オーダーの特殊部隊が送り込まれむしろ戦争の主力部隊となって活発に活動している．従って，化学兵器持込工作が成功していないとすれば，人員ではなく，現物の持ち込みに失敗したと考えるしかない．化学兵器は瓶詰め１個というわけにはゆかないので，少なくとも輸送にはトラックないし輸送機が必要である．ロシアの防諜能力の高さは今回の戦争で如実に立証されているので，うかつな行動は取れない．私は，戦争開始前に報道されたトルコ領内のある港湾からアメリカ軍の基地に向かおうとして，トルコ官憲の検問によって阻止された３台のトラックに積まれていた化学物質とされるものがそれであったのではないかと推定している．（この報道のソースを見失ってしまったが，あっしらさんに追認して頂いているので，私の妄想でないことは確実である．あっしらさん，ありがとうございます！）つまり，アメリカがこの戦争でただ一つ思いどおりにならなかったこと，すなわちトルコの拒絶による外交折衝の挫折の直接的な結果として，大量破壊兵器を見つけることができないという現在の危機的な局面を招来することになったのではないか．
フランスはすでに戦争のおこぼれをもらおうなどのさもしい姿勢を見せて，大量破壊兵器発見の責任追及に熱意を感じない面もあるが，だからと言ってブッシュの戦争責任が免責されるものではない．すでにベルギーでは，４人の医師団が米英中央軍総司令官フランクスを戦争犯罪人として告発する準備が進んでいる．ところで，トルコとの重要かつ困難な交渉を担当したのは国務長官のパウエルであった（トルコとの交渉は戦争突入後も継続して行われたが，一旦否決された同一案件を複数回審議にかけるという異例の事態にも関わらず，トルコ議会は承認を求める決議案をきっぱりと斥けた）．もし，私の推理が当たっていてトルコとの交渉の失敗が化学兵器持込作戦の失敗に直結しているとすれば，パウエルの失敗は結果的に米国に重大なリスクをもたらすものとなったことになり，早晩パウエルの責任を問う声が政府部内から出てくることは避けられない．ただし，これはイスラエル・パレスチナ問題解決のためのロード・マップと呼ばれる現在進行形のプロセスとも密接に関連するので，ストレートな反応にはならないかもしれないが（ロード・マップの起草には仏・露も関わっているし，パウエルのポジションは代替が利かないかもしれない）．
私は種々の事由からフセインは４月１〜２日に死亡していると推定している．現時点で私の推測するもっとも有力な死因は自殺である．フセインが４月１日に自爆ベルトを取り寄せて使い方を尋ねたという話も流れている．フセイン政権中枢部に内通者がいたことはほとんど疑う余地はない．アメリカは工作資金として相当な現ナマを用意していたはずであり，フセインの宮殿から米軍兵士によって（不用意に？）発見された数億ドルと言われるドル紙幣がそれであった可能性もある（この金は出処が明らかになるまでは手を触れないとしているが）．米国はイラク軍の将軍たちがクーデターを起こすことを期待していたようだが，不発に終わった．しかし，フセインが側近のうちの誰か，ないしその手引きによって上記の日付で暗殺された可能性は以前として高い．フセインの生死が不明であることが統治機構設立の阻害要因になりつつある現状から鑑みて（フセインの恐怖が残っている限り，本当の戦後は始まらない．また，フセインに忠誠を誓う生き残りにも引導を渡す必要がある），ブッシュがフセインの生死についての情報を近い将来に公開し，戦争終結を宣言する可能性は高まっているように思われる．
あっしらさん：すみません，レスが遅れてしまいました．書きかけてはいるので，そのうち．．．（私は，アジス副首相の拘束は合作説否定の根拠としてはまだ十分ではないと思っています．同様に，フセインは生存しているというアジスの証言も信用できません．）
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。