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(回答先: ▼提言論文/デフレ的安定からの脱却を [Yen Dokki!!] 投稿者 あっしら 日時 2003 年 5 月 23 日 15:54:22)
UBSウォーバーグ証券会社・経済調査部チーフエコノミストの白川浩道さん(Hiromichi Shirakawa/ Chief Economist, UBS Warburg (Japan) Ltd.)は、金融・経済再生に関する考え方を整理し、次のような提言論文(ほぼ原文通り)としてまとめたーー。
【不良債権の徹底的なオフバランス化を】 このように考えると、金融再生の原点は、可能な限り早期に銀行のバランスシートから不良債権(利益を生まない不稼動資産)の完全な切り離しを行うこと、であると言える。しかも、それは、100兆円に及ぶ問題債権全体を対象とするような、徹底したものでなくてはならない。金融恐慌の発生を未然に防ぐためには、預金者の絶対的な信頼を得る必要があるからである。不良債権のオフバラ化を一気に進めなくてはならない背景としてもう1つ指摘しておかなければならないことは、「産業構造転換には銀行のバランスシート健全化が不可欠である」ということである。日本経済にはダイナミズムが欠けているというエコノミストもいるが、それは誤りである。日本経済では着実に構造転換のエネルギーが蓄積されている。雇用統計や事業所統計をみれば一目瞭然であるように、今、日本経済では、製造業からサービス業への転換が急激に進展している。経済学者シュンペーターが指摘したように、経済発展には生産手段ストックの転用が必要であるが、そのためには、それを賄う資金が必要である。特に、産業経済の体質が変化を遂げる過程(現在の日本経済に当てはめれば、経済のサービス化が大きく進展する過程)では、十分な貯蓄や資本蓄積を行っていない、いわば、新たな企業家、ベンチャー企業が登場してくる可能性がある。こうした新興の企業家に資本を提供するのが銀行である。新興企業が銀行からの資金提供を 受けることによってはじめて経済発展が可能となる。シュンペーターは、「銀行は、イノベーションを遂行しようとする企業家と、労働者、地主の間に立って、イノベーションを可能にする存在」であると位置付けた。産業構造転換による経済発展を成し遂げるためには、不良債権の処理負担から解放され、健全なバランスシートを有した銀行がどうしても必要である。日本経済で新たな産業が起ころうとする「芽」を、銀行のバランスシート制約のために摘んでしまわないことが極めて重要である。
【巨大なバッド・バンクの創設を】 不良債権の徹底したオフバラ化を短期間のうちに実現するための視点として、最も重要なことは、不良債権のオフバラ化と借り手企業の整理・淘汰、再生の問題を切り離してしまうこと、である。借り手企業を整理するのか、あるいは再生させるのか、といった議論に目を奪われ過ぎると、政治的な問題も絡んで、話が前に進まなくなる。不良債権オフバラ化の最大の目的は、金融危機の回避と、銀行のバランスシート制約の解除であって、借り手企業の整理・淘汰ではない。その意味で、政府は、産業再生機構に代わる、バッド・バンクを創設するべきである 。再生可能案件を選別的に購入する産業再生機構では手に余るからである。また、当然のことであるが、借り手の流動化にのみ業務の焦点を当てた整理回収銀行でもだめである。再生可能性の判断を抜きに、大量の不良債権の移管を受ける、 巨大なバッド・バンクが必要である。
<資本は日銀、運転資金は市場から調達すべき> バッド・バンクの資本は、日銀借入れで賄うことが望ましい。その際、日銀は、ゼロ金利ではなく、高めの金利、たとえば2%程度の金利でバッド・バンクに融資すべきである。バッド・バンクが安易な不良企業ファイナンスを継続させないためである。また、バッド・バンクの運転資金ファイナンスは、完全に市場調達とすべきであろう。市場は、バッド・バンクが抱える不良企業の再生可能性や収益状況等に応じて、その調達コストを決していくであろう。そして、バッド・バンクは、借り手企業の整理や再生に応じて入ってくるキャッシュ・フローを原資に、日銀からの借入れを返済していけば良い。返済期限は10年程度を目処にすることが望ましい(日銀のバッド・バンクへの貸出は政府保証付きで期間10年とすれば良い)。借り手企業の整理や再生は、景気・雇用情勢や新興企業の経営状態に与える影響等を見極めつつ、現実的なペースで行われる必要がある。 (つづく)