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ドイツの生命保険会社の経営環境が厳しさを増している。株価下落によって保有株式の含み損が大幅に拡大したためで、一部の生保では破たん危機も表面化した。ドイツ政府は評価損計上の先送りを容認するなど、株安が企業業績に与える影響を最小限にとどめようとしているが、株価がさらに下落すれば、中堅・中小生保の淘汰(とうた)につながる可能性も指摘されている。(ロンドン 黒井 崇雄)
「政府がマンハイマー生命の救済策を検討」――。ドイツ各紙は最近、独中部のマンハイムに本社を置く中堅生保の苦境を一斉に報じた。
同社は、2002年末時点の有価証券含み損が全運用資産の6%に相当する2億1600万ユーロ(約280億円)に達したと発表した。昨年に2度の増資を実施していたが、巨額の含み損の存在が明らかになり、経営危機が再燃した。
持ち株会社マンハイマーグループのシュライバー社長は「増資、身売り、合併を含むすべての選択肢を検討しており、数週間以内に結論を出す」と、破たん回避に向けてなりふり構わぬ姿勢を見せる。
含み損の拡大は大手生保の業績も直撃している。
欧州最大手のアリアンツ生命(本社・ミュンヘン)を傘下に持つアリアンツ・グループは2002年決算で12億ユーロ(約1600億円)の最終損失を計上し、戦後初の赤字に転落した。
独連邦金融監督局は3月、国内の全生保を対象に、2002年12月末時点に比べて株価が35%、債券価格が10%下落した場合の保険金支払い能力を調査した。結果は公表されていないが、「合格したのは全体の3分の1程度に過ぎない」(欧州系格付け会社のフィッチ)との観測もある。
背景には、ドイツでは日本と同様に、金融機関同士の株式持ち合いが多く、生保各社が大幅下落した金融株を多く保有していた事情がある。
ドイツ保険業総連合の推計によると、2002年末の生保業界全体の含み損は150億―200億ユーロ(約1兆9500億―2兆6000億円)となり、2001年末の25億ユーロから大幅に増加した。450億―500億ユーロに達しているとの見方も出ている。
こうした厳しい経営状況を受け、破たん生保の契約を引き継ぐ受け皿機構の「プロテクター」が昨年11月、主要生保10社の共同出資で発足し、契約者保護の制度が整った。
金融監督局が生保の破たんを認定した場合、総連合加盟の全生保(約120社)が市場シェアに応じて資金を拠出し、契約者への保険金支払いなどを保証する仕組みだ。
一方、政府は生保各社に対し、保有する株式の価格下落が「一時的」と見なされる場合に評価損計上の先送りを容認し、株価下落が直ちに業績悪化につながることがないように配慮している。株価の本格回復が見えない中で、この優遇措置の適用基準をさらに緩和することも検討している。
政府が定める新規契約の予定利率の上限も、現行の年3・25%が2・75%に引き下げられる方向だ。
◆低迷続く独経済◆
ドイツ経済は、内需の2本柱である設備投資と個人消費の低迷が続いている。欧州連合(EU)が4月に発表した春季経済予測によると、ドイツの2003年の実質経済成長率見通しは0・4%と、昨年秋時点の1・4%から下方修正された。特に雇用環境の悪化は深刻で、3月の失業者数は約460万人と5年ぶりの高水準に達した。
主要株式指標のドイツ株価指数(DAX)は、イラク開戦直前の3月半ばに、2000年3月のピーク時の約4分の1にまで下落。その後やや回復したものの、現在は昨年末の水準を維持するのがやっとの状況だ。
(2003/5/10/22:52 読売新聞 )
http://www.yomiuri.co.jp/business/news/20030510ib22.htm