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日独経済の共通点とデフレ対策 丸紅経済研究所2002/10/23
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投稿者 小耳 日時 2003 年 5 月 11 日 11:15:42:

(回答先: 独生保業界を株安が直撃、全体の含み損 2兆円にも 読売NET 投稿者 小耳 日時 2003 年 5 月 11 日 11:14:13)

日独経済の共通点とデフレ対策

 2002年10月23日  丸紅経済研究所 杉浦 勉

 最近、ドイツ経済が日本経済と同じようなデフレ状況に陥るのではないかと危惧されている。日独両国とも今年度の実質経済成長率見通しはゼロに近い。日本の株価はピーク比78%下落したのに対し、ドイツの主要企業株のDax指数は年初から48%下落した。8月の日本の失業者数は361万人、失業率5.4%に対し、ドイツの失業者数は400万人超、失業率は9.9%に達している。

 欧州中央銀行(ECB)はEUの政策金利を過去1年間3.25%に据え置いている。インフレ・ターゲットを0〜2%に設定しているEU圏全体からすれば、その金利水準は妥当のようにみえる。EUの平均インフレ率がターゲットの上限をまだ上回っているからだ。しかし、ドイツにとっては現在の金利水準は高すぎると判断される。ドイツのインフレ率が他のEU諸国と比べて相対的に低いからである。

 ドイツのインフレ率が低い理由は、ドイツの生産労働者の賃金がフランスより44%、イタリアより66%高く、ましてやアイルランド、ギリシャ、スペインなどの賃金に比べるとはるかに高い状況にあることにある。相対的に生産性の低いドイツの周辺諸国は、単一通貨ユーロを採用することによって生産性が上昇し、貿易財部門を中心とした労働賃金が、ドイツのように生産性の高い国のレベルへ収斂していく現象が起こっている。その結果、周辺諸国の物価上昇率が高くなっている。他方、ドイツが競争力を取り戻すには賃金の相対的下落が必要であり、ドイツの労働賃金にはデフレ圧力がかかることになる1。周辺国との賃金格差という点において、日本はアジア諸国との関係で同様の立場に置かれている。

 ドイツのデフレ圧力は来年予想されるポーランドやチェコ、ハンガリーなど10カ国のEU加盟によってさらに強まるかもしれない。

 実際、ドイツのコア・インフレ率(食料とエネルギーを除くインフレ率)は、過去3年間ユーロ圏の平均を0.6%ポイント下回っていたが、今年8月には1%ポイントも下回った2。金利水準はEU域内で同一であるから、ドイツの実質金利は高くなり、同国の経済回復の足枷になっている可能性がある。EUの加盟条件上、単年度財政赤字幅もGDPの3%未満という枠が課されており、財政面からの景気浮揚策にも限度がある。

 日本は、インフレ率や財政赤字幅についてEU諸国のように枠は課されていない。しかし、過去、金融政策も財政政策も既に相当程度出し尽したため、自由度がほとんどないという点ではドイツと類似している。自由度が残っていた90年代は中央銀行と政府の政策の歯車が噛み合わず、時に大胆な措置を講じたにもかかわらず実効は上がらなかった。

 為替政策についても、EUのようないわば固定相場圏に入っていない分、日本には自由度があるように見える。しかし、事はそう簡単ではない。欧米経済が堅調であった90年代後半には、円安策が許容されたかもしれないが、今年に入り、両地域がデフレないし低インフレの兆候を示し始めているので、一方的な円安策は困難になっている。アジア周辺国との関係では、円安政策は近隣窮乏策として非難され、やはり自由にはできない。

 円安を誘導することが政治的に難しいとすれば、まだ数年間は円高傾向が続くことになる。一般に、通貨高のもとでは、資産価格上昇を伴わない限り、経済成長は難しいと考えられる。通貨が高くなると輸入物価の下落を通じて一般物価が下がり、資金余剰が生じるとともに金利が低下する。そうした環境の下で、80年代後半の日本や90年代後半の米国のように、資金が株や不動産などに向かえば、資産価格が上昇し、信用創造が増して需要が拡大し、成長が促される。しかし、資金が金融機関や箪笥に滞留した場合には、信用創造が収縮し、国内需要が低迷する。一方で、通貨高のため輸出は減り、製造業の海外移転が進み、やがて国民の所得も減って、購買力が低下していく。その過程で、内外物価が収斂するため、通貨高が是正されていき、物価が上昇に転じる。

 これが何も対策を講じなかった場合のデフレ解消プロセスと思われる。そのプロセスが完了するのは、輸出拠点である中国等の物価が日本にキャッチアップするまでの長期に及ぶかもしれない。デフレがあと5年も続けば、高齢化や人口の減少と相俟って確実に日本の経済力は萎縮してしまうから、そうなる前に、資産を中心とした日本のデフレ問題を解決しなければならない。そのためには、次のような政策が有効と思われる。

1.「異時点間代替効果」を狙った消費税の大胆な引下げによる需要喚起
2.土地の需給調整を促す諸施策(公共用地売却抑制、環境改善・住宅の質向上を促進する一部建設規制強化、不動産取得税軽減、住宅投資によるキャピタルロス減税の拡充、固定資産税の引下げ等)
3.有限会社と株式会社の最低資本金大幅引下げによる創業支援と法人減税。
4.中小企業支援と高齢者雇用の促進の観点から、60歳以上の高齢者を雇用する場合の企業・個人双方の年金負担免除。


本稿で意見に相当する部分は筆者の個人的見解を述べたもので、筆者の所属する組織の統一的見解ではありません。
本稿に従って決断した行為に起因する利害得失はその行為者自身に帰するものとします。(筆者は丸紅経済研究所長)
以 上

(C)Marubeni Research Institute
http://www.marubeni.co.jp/research/3_pl_ec_world/021023sugiura/hombun.html

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