【ロンドン8日=野口裕之】
米中枢同時テロ以降、関係修復が進んでいた英国・イラン関係が急速に冷却化している。直接原因はレダウェイ次期駐イラン英国大使着任をイランが拒否したことだが、背景には英米がイランに対し、テロ組織アルカーイダとの連携が確実視されるイスラム原理主義組織ヒズボラ支援への批判を強めているためだ。
大使着任問題の当事者レダウェイ氏は、英外交関係者の間で「英情報機関MI5関係者」との観測がささやかれていた。事実関係は不明のまま、イランが新大使着任に反発したことから、両国の折衝がこれまで続いていた。だが、英外務省は八日「現時点で新大使任命の計画はない」と姿勢硬化に転じた。
昨年九月の米中枢同時テロ後、英国とイランの関係はストロー外相がイラン革命後、英外相として初めて同国を訪問し、難民支援資金を提供するなど関係が緊密化しており、大使問題も妥協が期待されていた。
この突然の英政府の方針転換について、英米情報筋は「英米はイラン・ヒズボラ関係が続いていたとの情報で一致。英国がイランに警告を発した結果」と述べる。
ブレア英首相はブッシュ米大統領と六日、アフガニスタンでの作戦終了後の「第二段階や大量破壊兵器」などについて電話協議した際、ブッシュ大統領の「悪の枢軸」発言への支持を表明。ストロー外相も同日、「構想で大量破壊兵器拡散を行ってきた者が、それをためらうようになれば望ましい」と明言しているが、こうした英米の協調もイランに対する「ヒズボラと接触への警告」(同筋)とされる。
ヒズボラの拠点、レバノンでは一月、ヒズボラ幹部とビンラーディン氏側近が、活動拠点をアフガンからレバノンにも分散することを協議したとされており、「英米がこの情報を確認した」(同)とみられている。