【ワシントン布施広】
ブッシュ米大統領とシャロン・イスラエル首相の会談は、米国の対パレスチナ、対イラン関係の行方を左右する重要な会談になりそうだ。イランの関与が指摘される武器密輸事件で、シャロン首相は米側にパレスチナとの関係凍結とイランへの懲罰措置を求めるものとみられる。米政府が「悪の枢軸」の一角と見なすイランに、どんな対応を打ち出すかが会談の隠れた焦点になっている。
6日の米上院公聴会で証言した国防情報局(DIA)のウィルソン長官は、イランでは革命以来の保守派が国防や外交政策を牛耳り、ハタミ大統領の改革は停滞していると指摘。大量破壊兵器の開発などを通じて影響力拡大を図るイランは、米国の力を限定させようとしていると警告した。
米国とイランとの関係は明らかに冷え込んでいる。ブッシュ大統領は同時多発テロ事件後、英国を介してイランとの関係改善を模索した。しかし先月29日の一般教書演説では北朝鮮、イラクと並べて「悪の枢軸」と指弾した。この「政策転換」については、ラムズフェルド国防長官の影響力を指摘する向きが多い。
長官はクリントン政権時、米議会委嘱の委員会の座長として、イランや北朝鮮などのミサイル開発の脅威を指摘し、ミサイル防衛の開発推進を求める報告書をまとめた。ブッシュ政権はイランの石油資源への思惑もあって関係改善に前向きだったが、アフガニスタン攻撃の中で発言力を増したラムズフェルド長官が、国務省主導のイランとの対話路線を押し切ったとの見方が強い。
長官への追い風となったのが約50トンの武器を積んだ密輸船事件だった。米政府の調べでは、親イラン武装組織のヒズボラが関与したのは確実。巨額の密輸だけに、イラン政府や売却先とされるパレスチナ自治政府が関与した可能性も濃厚だ。
米国のユダヤ・ロビーは米・イランの接近を警戒、ブッシュ政権も11月の中間選挙を控えて、ユダヤ票を失う政策は取れない。ブッシュ大統領はシャロン首相と密輸船事件の情報を交換し、近く予定されるチェイニー副大統領の中東歴訪を通じてイランやイラクへの対応を模索することになりそうだ。