【カイロ小倉孝保】
米国がイラン批判姿勢を強めていることで、イランでは改革派と保守派の対立が目立ってきた。軍を中心にした保守派は、対米強硬姿勢と国民への締め付けを強める構え。一方、改革派は保守派の勢力拡大をけん制し、米国に柔軟なメッセージを送り始めている。
保守派の牙城といわれるイラン革命防衛隊は6日、国営テレビで「米国がイランの内政に干渉するなら、我々にも用意がある。イランは米国にとって第2のベトナムになる」と警告。また保守派・護憲評議会のジャンナッティ書記は2日、「ブッシュ米大統領は気が狂っている。自国の利益すら理解できていない」と厳しく批判した。
一方、ラムズフェルド米国防長官がイランはアフガニスタンにいたアルカイダやタリバン戦闘員を逃亡させたと批判したことについて、改革派のハラジ外相は5日「米国は持っている情報をイランに提供すべきだ。イランは国内からそうした戦闘員を追い出すだろう」と語った。
外務省などイラン改革派は、軍や治安機関を中心とする保守派がタリバン兵などの一部をイラン国内に逃亡させたのではないかとみている。ハラジ発言は米国に柔軟なメッセージを送るとともに国内保守派をけん制する狙いがある。
一方、改革派の最大政党「イスラム参加戦線」はブッシュ大統領の「悪の枢軸」発言について、「外国の脅威と国内の権力マフィア(保守派)とはイランの改革運動を破壊しようと互いに補完している。イラン国民は外敵にすきを与えることなしに改革を進めよう」と呼びかけた。これも、保守派が米国の態度を国民の締め付けに利用し、改革にブレーキをかけるのを警戒したものだ。