投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 12 月 04 日 11:46:07:
【カイロ3日=村上大介】
イスラエルが三日、イスラム原理主義組織ハマスによる連続爆弾テロへの報復として自治区ガザのアラファト議長府攻撃などに踏み切ったことは、全面的な停戦受け入れとテロの完全抑止をアラファト議長に迫る「最後通告」だといえる。しかし、パレスチナ自治区への局地的な攻撃は、必ずしも効果がないことは昨年秋以来のイスラエルとパレスチナの戦闘の中で明らかになっており、イスラエルのシャロン政権が「アラファト議長追放」を含めた強硬策を選択肢として検討していることは確実だ。
自治政府は二日夜からハマス活動家らの大量逮捕に踏み切ったが、イスラエル政府は「全く不十分であり、信用できない」(政府高官)と相手にしていない。テロに対する自治区への報復軍事行動というパターンは昨年来続けられてきたが、何ら局面を打開することはなく、シャロン首相の選択肢は、「アラファト議長をもはや和平のパートナーとみなさない」と宣言し、議長追放も含めた強硬措置に進むことしか残されていないといっていいだろう。
シャロン政権内では、すでに「アラファト追放」の意見が半数を占め、イスラエル軍上層部も「追放」に傾いている。パレスチナ自治を通じ最終的に占領地ヨルダン川西岸、ガザ地区の相当部分を返還する「オスロ合意」(一九九三年)を「イスラエルにとって歴史的誤り」とみるイスラエル右派はシャロン首相も含め、同合意の破棄の機会をうかがってきたとも指摘されている。
イスラエル消息筋によると、連続テロ直後の二日に開かれた緊急閣議では、西岸の軍司令官が公然と議長追放を唱え、自治政府の崩壊後にパレスチナ社会の主導権を握るイスラム原理主義組織ハマスをたたいた方が国際社会の支持を得られやすい、との見方を示したという。
米欧外交筋に近い別のイスラエル消息筋によると、ブッシュ米大統領は、イスラエル国内で「アラファト追放」の声が強まっていることを踏まえ、二日のシャロン首相との会談で、アラファト議長に過激派テロ抑止の「最後のチャンス」を与えるよう提案したという。
国内でアラファト追放論が高まり、連続爆弾テロが国際社会の同情を集めているといっても、直ちに自治政府破壊に踏み切れば国際社会の非難を浴びかねないことも事実であり、同消息筋は「シャロン首相はブッシュ大統領の提案を逆手にとり、戦闘の全面停止やパレスチナ過激派組織の壊滅、武器押収などのほか、アラファト議長に『受け入れ不可能な要求』を突きつけ、『合法的』に議長追放を可能とする環境づくりに利用する可能性がある」と指摘する。
一方、自治政府はイスラム過激派大量逮捕などを通じて、シャロン政権に“口実”を与えないよう警戒しているが、アラファト議長自身は沈黙を守ったままだ。議長が、長期化したイスラエルとの戦闘の中で「抵抗運動」と「テロ」の一線を引くことを怠ってきたことのツケが回ってきたことも間違いない。シャロン首相が描いてきた「自治政府排除」という長期シナリオは最終段階に近づきつつあるようにもみえる。
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≪イスラエルとパレスチナをめぐる最近の動き≫
5月末 イスラエルのハデラなどで連続爆弾テロ
6・1 テルアビブのナイトクラブで自爆テロ
13 米国の仲介で「停戦」発効
7・31 イスラエル軍、ハマス幹部らを暗殺
8・9 エルサレムのレストランで自爆テロ。イスラエル軍が自治区に侵攻
25 パレスチナがイスラエル軍施設を攻撃。イスラエルはF15戦闘機で報復
27 イスラエル軍がパレスチナ解放人民戦線(PFLP)議長を暗殺
10・17 イスラエル観光相暗殺。PFLPが犯行声明
20 イスラエル軍が5自治区に戦車で侵攻
11・26 米国務省・ジンニ特別顧問が仲介。イスラエル軍が自治区から完全撤退
29 イスラエルのハデラで自爆テロ
12・1 イスラエル軍、自治区に再び侵攻。深夜、エルサレムの繁華街で連続爆弾テロ
2 イスラエル北部のハイファで自爆テロ
3 イスラエル軍が自治区ガザ市に報復攻撃