投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 20 日 11:43:48:
米国内で、アフガニスタンの軍事作戦後の攻撃対象として、イラクの名が浮上している。イラク攻撃論は米中枢同時テロ発生直後からくすぶっていたが、アフガンでの戦いの「出口」が見え始めたのを受けて、にわかに現実味が出てきた格好。米国は十年来の旧敵・フセイン大統領と雌雄を決する決意なのだろうか。イラク攻撃論の背景と米国の思惑を追った。
(ワシントン、金井辰樹)
「米軍が近くクウェートに二千人の米兵を増派する方針を決めた」−と十八日のロイター通信が報じた。目的は「イラクに対する抑止」で、既に駐留している五千人の米兵とともに、大規模な軍事演習を行うという。作戦名は「砂漠の春」。十年前の湾岸戦争の際の多国籍軍による「砂漠の嵐(あらし)」をほうふつとさせるネーミングだ。
同じ十八日、ライス大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が米NBCテレビに出演した。ライス補佐官はアフガン後の軍事展開に話題が及ぶと、たまっていたものを吐き出すようにフセイン大統領の批判を始めた。
「彼は非常に危険な男で、二度にわたり核兵器の配備を狙った」
「彼が脅威であることは、周辺諸国も分かっている。九月十一日(米中枢同時テロ)に関与したかどうかにかかわらずだ」
これまでもチェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官らが、イラクを攻撃対象とする構えをちらつかせてはいた。だが、中枢テロと関係なくても攻撃対象となり得るとの考えを示したこの日の発言は、米政府高官の発言としては際立っている。クウェートへの米軍増派報道とライス補佐官の発言は、米国がイラク攻撃を念頭に置いていることを強く印象づけた。
■政権内ではまだ異論も
米国は、本当にイラク攻撃を決断しつつあるのだろうか。
ウルフォウィッツ国防副長官を中心とする国防総省タカ派勢力は、中枢テロ発生後、一貫して「テロに対する国際社会の批判が出ている今こそ、テロ支援国家のイラクをたたくチャンスだ」と主張。政府内に同調者が少しずつ増えているのは事実だ。
しかし、パウエル国務長官は、イラクを攻撃することでアラブ諸国が反発し「反テロ連合」に亀裂が入ることを懸念して、慎重な姿勢を崩していない。
また政権内には、ウサマ・ビンラディン氏との関係が深いソマリアへの攻撃を優先させるべきだとの意見や、イスラム諸国の批判をそらすために、次は非イスラムの過激派を攻撃対象にすべきだとの意見もある。
こうした状況の中で、あえてイラク攻撃を強く示唆する言動を米政府がとり始めたのは、内外に対する観測気球的色彩も否定できない。
ブッシュ政権はテロ発生後、九割近い支持率を維持。さらにアフガンの軍事展開も順調に推移していることから、国民の意識も高揚している。米政府は、こういう時こそ「テロとの戦い」がアフガンだけでは終わらないことを国民に強く訴えておくのが得策と判断、当面の“仮想敵国”としてイラクの名を意図的にあげている可能性もある。
また、イラク攻撃をにおわせることで、国際社会がどんな反応を示すか探る狙いもありそうだ。
現段階ではまだ唐突な印象もあるイラク攻撃論が、観測気球で終わるか、それとも現実となるか−。これから数週間の米国民や国際社会の反響に左右されることになりそうだ。