投稿者 weeklypost 日時 2001 年 11 月 07 日 15:51:32:
「戦力なき自衛隊」で世界の理解は得られるのか
安倍晋三内閣官房副長官VSジャーナリスト・田原総一朗
田原 こ
れは安倍
さんから
聞いた話
ですが、
日本の自
衛隊員が
自衛隊の
機密を漏
らすと最
高で懲役1年に罰せられる。しかし、アメリカ軍から
得た機密を漏らすと懲役10年だ。これも変な話で
す。
安倍 日米安保条約では、お互いに密接な連絡を取り
合いながら、日本と極東の安全を守っていくことにな
っています。米国は、そのための機密を保護する日本
の法律、罰則は甘いんじゃないかと危惧を持ったとい
うことです。ただ、自衛隊の機密漏洩についても、法
律改正で最高5年の懲役に変わっています。
田原 自国の機密を漏らすより、米国の機密を漏らし
た方が罰則が重い。いかにも日本は米国の属国じゃな
いかと感じる人が多いでしょう。
安倍 そういうイメージがつきまとうとは思います
ね。もちろん、法律的には理屈があるのですが、今の
ままでは、そういうイメージもしょうがないのかなと
思います。
田原 日本の安全保障の矛盾は集団的自衛権の問題だ
けではありません。例えば『専守防衛』。これは大分
前のことですが、イギリスの軍幹部が来日した際に、
防衛庁の事務次官が大変困ったことがあったそうで
す。彼らはこう質問した。“あなたの国は専守防衛だ
というが、専守防衛の鉄砲とイギリスの鉄砲とどう違
うのですか。弾が当たっても死なない鉄砲なんです
か”と聞かれて、事務次官は答えに窮したわけです。
あるいは『後方支援』もそう。こんな言葉は世界に
通用しないんだけど、そういう矛盾は今回の議論でも
解決されていませんね。
そもそも、「戦力なき自衛隊」などあり得ない。
安倍 今までは「自衛隊は攻撃的な武器は持たない」
ということになっていますが、では、攻撃的でない武
器というのはどういうものか。
今、世界が日本の国会の論戦を見守っている中で、
そんな議論をしているのかといわれるのは恥ずかしい
ことですから、われわれ政治家には、そこをわかりす
く整理し直す責任があると思います。本来、政治家と
は、わかりやすい言葉で国民に向かって説明をしてい
くべきなのです。
田原 安倍さんのところに自衛隊の方が相談にくるそ
うですが、彼らはどんな悩みや不満を持っています
か。
安倍 われわれ国会議員が、時には議会の場において
現実とは違う世界を作り出し、その中できれい事をい
っていろいろな縛りをかけていく。しかし、現実は全
然違う。その現実の場に行くのは自分たちだ、政治家
ではない、ということですね。我々は後方どころか、
“超後方”で議論しているわけです。もちろん、隊員
は戦闘地域には行きませんが、それでも赤坂とか永田
町とは違います。もっと現実に立って議論してもらい
たいという気持ちはあるでしょう。
田原 彼らが捕虜になったらどう対応しますか。
安倍 もし拉致されてしまった場合は、派遣先の警察
なり軍に捜査をお願いすることになります。こちらが
派遣先で取り返すということは法律でできないので
す。
田原 憲法を変えるならともかく、変えないのなら、
自衛隊派遣は国連の枠組みでやるべきではないです
か。僕は、国連軍に参加するということなら、後方だ
ろうが前方だろうが区別なく行けると思います。これ
からの安保は日米の枠でいくのか、国連で進めるの
か、どっちですか。
安倍 両方だと思います。日本が出ていく場合には国
連の枠組みでしょう。逆に、日本が攻められたときは
当面はやはり日米安保です。日本を攻めたらアメリカ
と戦争することになるんだという方が抑止力が効きま
す。
田原 アメリカは、イラクがクウェートに侵攻したら
追い返したが、イスラエルがヨルダン川西岸地区を占
領しても認めている。そのダブルスタンダードをどう
考えますか。
安倍 それは世界が指摘している点ですが、米国もイ
スラエルとパレスチナの間に入って和平を達成しよう
と努力してきたと思います。それが残念ながら頓挫し
ている。
田原 そうした場面で、日本がもっと積極的に仲介す
べきだという意見もあります。
安倍 日本独自の外交的財産は活かしていきます。し
かし、テロと相対していく点で足並みを揃えるのは当
然です。