投稿者 dembo 日時 2001 年 10 月 31 日 21:10:10:
クラスタ爆弾 劣化ウラン研究会
これまでクラスター爆弾についてメディアの報道を見てきましたが、この情報は掲
載された形跡がありません。
クラスター爆弾は国際条約に違反する兵器です。しかしながら国際法に違反するか
どうかを決定し、犯罪であるならば制裁を加えるべき機関がないため、放置されてい
るのが現実です。犯罪も、検察も裁判所も警察も無ければ、刑法に何が書いてあろう
と無意味です。それと同じこと。
力のある側が力でもってごり押しすれば、違法だろうと何だろうといくらでも使え
るが、力のある側が無い側の持つものを「違法だ」といって取り上げようとすればで
きてしまう。それが国際政治の現実であるというだけのことです。
イラクの核開発施設は全部破壊されましたが、米国のそれは依然として無傷です。
どちらも破壊されるべきものですが、力のある米国が相対的に(湾岸戦争で勝ち国連
をも自らの意志に従わせ、多数の国を味方に付けたから)力を持っていないイラクに
のみ、破壊させたというわけです。北朝鮮にも同様の圧力をかけていました。一方、
イスラエルが核兵器を作っていても、見て見ぬ振りをしています。それが現実。嫌だ
と思うのならば行動しかありません。
国際条約では、一定の範囲に入る兵器は「非人道的兵器」として禁じています。有
名なところではダムダム弾(銃弾の先端に切り込みを入れるなどし、人体に当たった
直後に体内で破壊的打撃力を生み出す弾丸)など大きな苦痛を与える兵器は戦場で使
えばたちどころに非難されます。
ではクラスター爆弾はどうなのか。同じことなのです。
以下、96年に国連小委員会でなされた決議文です。正訳ではありません。私が国
連の正文である英文から訳しただけのものです。これ以外に日本語版を見たことがあ
るのですが、手元にないので、不正確な面がありますが、掲載します。なお、日本政
府の正訳文はありません。
この種の文書こそ、大々的に宣伝すべき立場にあるはずです。少なくても「核廃
絶」を言っている国なんだから。しかしそういうことには全く関心を持っていないの
が我が国の外務省であり、自民党などの与党なのです。
差別の防止と少数民族の保護に関する小委員会
PreventionofDiscriminationandProtectionofMinoritiesSUB-COMMISSION
小委員会決議 1996/16
TEXTOFTHESUB-COMMISSIONRESOLUTION1996/16
国際連合憲章の原則によって導かれた小委員会は、
世界人権宣言、国際人権規約、1949年8月12日のジュネーブ条約追加議定
書、1987年12月7日と1990年12月8日の国連総会決議43/111と4
2/99を想起し、
すべての人々がその生命についての普遍的権利を有していることを確信し、
申し立てられている兵器の使用が、大量の、そして無差別な破壊と死を、軍隊の構
成員と文民の双方にもたらし、
さらにそのような武器の使用による長期間にわたる物理的な影響により、環境と健
康と市民生活に障害の発生と苦難がもたらされ、
そしてそのような武器の使用により発生した打ち捨てられた汚染された装置の残骸
からの身体と環境への影響として、単独であるいは複合して、市民生活に重大な危険
を構成しており、
このような兵器の生産と販売と使用が苦悩と残虐で非人道的で下劣な処遇とひどい
扱いをもたらしていることは、これらが人権条項と相容れないことを確信し、このよ
うな兵器の完全な除去が必要であり、
そのために非人道的で無差別な効果に関して世論を鋭敏にするための努力に着手し
継続しなければならないと信じる。
1.すべての国に、大量破壊と無差別な影響を与える兵器の生産と拡散を抑止するた
めの国際的な政策を求めること。特に核兵器、化学兵器、燃料気化爆弾、ナパーム
弾、クラスター爆弾、生物兵器と劣化ウラニウムを含む兵器に関して。
2.事務総長要請
a)核兵器、化学兵器、燃料気化爆弾、ナパーム弾、クラスター爆弾、生物兵器と劣
化ウラニウムを含む兵器の使用に関する、それらの重大で、累積的な影響に関し、そ
して危険について政府、他の国際連合組織体と非政府組織からの情報を集めること
b)さらにこのような兵器を排除する実効的方法や手段について、どのような勧告で
あっても既に受け取っている情報があるのであれば、第49小委員会セッションに報
告を提出すること
3.小委員会への事務総長の報告で、あるいは他の国際連合組織、政府、非政府組織
によって小委員会に提出されるいかなる追加の情報も、第49番セッションにおいて
この問題のさらなる考慮を与えることを決めた。
国際連合小委員会決議
1996/10、1996年8月19日採択、賛成15、反対1(合衆国)、棄権8
クラスター爆弾について、もう一つ重要な情報を伝えます。まず、以下はNHK
ニュースです。原文を全部引用します。
--------------------引用開始--------------------------------------
10/3015:52NH:米軍 不発弾にさわらないようアフガン住民に呼びかけ
NHKニュース速報
アメリカ軍は、アフガニスタンに投下したクラスター爆弾の不発弾によ
って住民に被害が出ていることから、不発弾にさわらないよう住民に注意
を呼びかける異例のラジオ放送を始めました。
クラスター爆弾は多数の小さな爆弾をまき散らし、敵の兵士や車両を一
度に攻撃するための兵器ですが、不発弾となった場合、一見して爆弾と見
分けるのが難しいため、今回アフガニスタンでも住民が不発弾にさわって
死亡するケースが報告されています。
このためアメリカ軍は、アフガニスタン上空の航空機から住民向けに行
っているラジオの宣伝放送を使って、不発弾に注意するよう呼びかけを始
めました。
ロイター通信によりますと、このなかでアメリカ軍は「不発弾は黄色い
色で筒の形をしている」などと説明したうえで、最近空爆のあった地域で
黄色の物体を見つけたら絶対に触らないよう注意を促しています。
アメリカ軍が自ら投下した個別の爆弾について、現地の住民に注意を呼
びかけるのは極めて異例のことです。
アメリカ軍がこうしたラジオ放送をあえて行った背景には、空爆による
民間人の犠牲者に国際的な批判が高まるなかで、これ以上民間人の犠牲者
が増えるのを何とかして避けたいという思惑があるものとみられます。
---------------------引用終了-------------------------------------
このニュースそのものは、「間違い」ではありません。しかしきわめて重大なこと
が欠落しています。
アフガニスタンの人々に警告しなければならないほど、この「黄色い不発弾」つま
りクラスター爆弾の子爆弾にどうしてわざわざ人が接近するというのでしょう。
この「黄色い不発弾」は、実は米国が「人道目的」とやらでばらまいている食糧な
どのパックと、色や形が非常に似ているのだそうです。
つまり、クラスター爆弾と食糧パックを間違えて拾ってしまう危険性が極めて高い
のです。
こんな形で、わざわざ「異例の注意」など、いまだかつて米軍が行ったことなどあ
りません。だいたいクラスター爆弾のもともとの役割からすれば、爆弾とは分からな
いようにしているのですから、警告放送などは軍事目的を損なうわけで、本来ならば
やるわけはないのです。
クラスター爆弾は99年のコソボ紛争でも大量にばらまかれ、赤十字によれば戦後
100名以上の死傷者を出しています。1万5千発もの不発爆弾が残り、対人地雷に
なって人を殺傷したのです。
しかしそのような事態になっていても、こんな警告放送は米軍はしてません。コソ
ボ紛争の時にはクリントン大統領の言葉として「私はひとりの子供も傷付くことを望
まない。我慢して欲しい」と帰還を遅らせるよう難民たちに訴えた言葉が、このクラ
スターの不発弾に関しての警告であったと「解釈」されている程度です。
今回突然、いかにも「人道上の配慮」を始めた本当の理由は、自分が投下した食糧
とクラスター爆弾を、わざと混同させて人を殺傷しているのだという宣伝に対して、
そうではないことを見せるためのポーズであろうと思われます。
現実に、食糧パックと間違えたのかどうかは不明ですが、爆撃後に不発のクラス
ター爆弾に接近して一人死亡(合計の死者は9名)していると、国連アフガニスタン
調整事務所報道官が現地で確認したこととして、共同通信と毎日新聞は伝えてきてい
ます。
食糧パックとの誤認問題は、英国紙には掲載されています。というより、メインが
「食糧パックとの誤認の恐れ」であり、そのため米軍が警告放送を余儀なくされたと
いう文面です。(といっても英文なのであまり自信はないけど(^_^;))
NHKの報道が、食糧パックとの誤認の部分だけを全く欠落させたのはなぜか、そ
の意図がどこにあるのか、私は知りませんが、覚えておきましょう。
自分でばらまいた爆弾に、自分で警告をし、それでもばらまくことをいっこうに止
めない。米軍の本音はどこにあるのか、一般にはわかりにくいことです。
しかし軍の論理で言えば、クラスター爆弾や劣化ウラン弾のように効果的に打撃を
与えられる兵器を使うことは至極当然のことです。その国がコントロールしない限
り、それを外から規制することは、難しいのです。
軍の本質が分かっているのであれば、クラスター爆弾のような兵器を使わせないた
めには、軍事行動をさせないことでしか解決の道はないのですが、今現在、そうは
言っても始まってしまっています。
軍隊が自らをコントロールするなど、およそ歴史上も現状も、考えられません。軍
の論理とはそういうものです。それが分かっていて、軍の暴走が嫌ならば、本質的解
決法は軍隊を持たないと言うことに尽きます。
そういっても軍は現に存在し、暴走状態にありますので、次にすべきは、米国が自
国の軍隊をコントロールするよう、国際社会、米国、そして米国民に訴え、さらに日
本政府がそれなりの国是を持っているのだから、その責務を果たさせるように私たち
が訴えることです。しつこく、しつこく。戦争が終わるまで。