投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 10 月 10 日 17:54:30:
【ボカラトン(米フロリダ州)9日=大屋敷英樹】
米軍のタリバン空爆と前後して、炭疽(たんそ)菌の感染者が確認された新聞社がある米フロリダ州・ボカラトン。報復テロへの恐怖がアメリカを覆う中、マイアミの北約50キロに位置する静かな保養地には、市民の不安が高まっている。
炭疽菌による死者と保菌者の2人を出した「アメリカン・メディア社」の3階建て社屋は、9日も非常線が張り巡らされ、警察官が厳重に警戒していた。建物の電気はすべて消され、館内に人の気配はない。
米衛生当局は感染経路の特定と被害拡大を阻止するため、同社が発行する6紙の社員計300人に炭疽菌の感染検査を受けさせたほか、今年8月1日以降、同社屋に1時間以上滞在した人も検査対象とした。
地区内のデルレイビーチ保健センターでは、8日に743人、9日に242人が感染検査を受けるため、長蛇の列を作った。検査結果が出るまで一週間程度を要するという。
死亡したボブ・スティーブンさん(63)の2軒となりに住む銀行員ティミー・クランデルさん(34)は、数キロ離れた場所に同時テロの実行犯の何人かが住んでいたことに触れ、「近くに実行犯がいたと思うと、報復テロの話にも現実味がある。自分の子に害が及ぶのも心配だし、抗生物質が欲しい」と表情をこわばらせた。近隣住民の多くが炭疽菌の恐ろしさや生物兵器テロの可能性を報道などで最近知り、怖がっているという。
近所の電気技師ジョー・マッカリーさん(38)は「非常に親しくしていたボブの死は悲しいが、細菌テロといってもピンとこないし、自然な病気で死んだと思いたい」と冷静に話した。
炭疽菌の死者が出て以来、菌に有効な抗生物質(シプロ)を入手するため、人々が薬局に殺到。下町のスーパー「エカード」内の薬局で働く女性薬剤師は、「きょうも十数人がシプロを買いに来たが、3日前から品切れ状態」という。他の薬局も同じ状態だ。
炭疽菌は吸い込むと激しい風邪のような症状を起こし、治療しなければ9割が数日以内に死亡する危険な伝染病。米国で、吸い込んで感染した人が出たのは1976年以来、25年ぶり。20世紀を通じても18例しか報告されていない。
FBIマイアミ支局は「現在捜査中で、今回の炭疽菌が自然界から来たものか、人為的な手を加えられたものかは、まだ判明していない」としている。
9日夕、フロリダ州パームビーチ郡健康局も記者会見を開き、「高度の分子構造の分析結果を待っているところだ」と説明した。同局が採取した検体はすべて、米疾病対策予防センター(CDC)に送られ、分析中だ。
一方、マイアミヘラルド紙をはじめ複数の米マスコミは9日、「タブロイド紙でインターンをしたスーダン人学生を事情聴取」と報じた。しかし、この学生が通っているとされるフロリダ・アトランティック大学の広報室は、「スペイン・バスク地方からの移民三世である男子学生が聴取を受けたのは事実だが、すでに無関係として釈放されている」として、報道を否定した。
(10月10日14:18)