投稿者 日時 2001 年 11 月 07 日 13:22:26:
回答先: テロ兆候知っていた 米国務長官〜「十分な情報収集できず」〔産経新聞〕 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 10 月 04 日 15:32:41:
回らない、上がらない、漏れる
無差別テロ攻撃に対しては、国際社会が力を合わせて戦う以外ない。その際、各国がインテリジェンス
(政策に役に立つ情報)面で協力しなければならない。なぜなら、インテリジェンスによって相手の陰謀を
事前に察知し、その行動の芽を摘むことができるからである。孫子の兵法ではないが、戦わずして勝つのが
「善の善なる者」だ。
政府は先の7項目のテロ対応策で「出入国管理などに関し、情報交換などの国際的な協力をさらに強化す
る」ことを打ち出した。パキスタンでの難民支援に自衛隊を派遣するとなると、米国をはじめ世界各国との
インテリジェンス協力はさらに重要になる。サイバーテロ対策も強化しなくてはならない。これを機に日本
の情報体制を強化するのが望ましい。
にもかかわらず、日本政府の情報体制には問題が多い。
中でも、(1)情報が回らない(2)情報が上がらない(3)情報が漏れる、という3大欠陥がある。
日本政府の情報収集の中心は、警察庁、防衛庁、外務省であり、米国とは米中央情報局(CIA)、国防
総省、国務省と情報交換している。米側にはそれらを統括する情報中枢機能が存在するが、日本側はバラバ
ラ、どこもトラの子情報は他と共有しようとしない。
今回のテロ事件の数日前、米側から警察庁に「日本と韓国の米軍施設にヒズボラによるテロ攻撃の恐れ」
との情報が入ったのに、警察庁はこれを外務省にも防衛庁にもすぐには知らせなかった。自民党外交部会で
警察庁局長は「第三者には流さないという先方との約束」だからと説明した。
次に、情報がなかなか政策決定者に上がらない。防衛庁の場合、電子・電波情報を吸い上げる情報本部か
らの情報が内局にさえ上がらないこともある。
それから、日本ほど機微に触れる情報が漏れるところも少ないだろう。93年、朝鮮民主主義人民共和国
(北朝鮮)がノドン・ミサイルを打ち上げた際、米国防総省はそれを極秘情報として防衛庁に通報。それは
直ちに、官邸に上げられた。ところが、当時の石原信雄官房副長官はその内容を記者団にしゃべった。日本
国民に新たな脅威の出現をはっきりと知らせるべきだとの政治判断だったが、米側は怒った。その後しばら
く米国からこの種の情報は来なくなった。
なぜ、このような現象が起こるのか。
「政府全体としての情報保全システムがないから他省庁に渡すとその先のリークを防げない。漏れたら情
報源との信頼関係が壊れる。だから、どこも他とは共有しない」(防衛庁高官)
「上がらないというが、政治家に上げたら漏れる。だから、上げない」(外務省高官)
といった官僚のホンネが聞かれる。防衛庁の次官経験者の一人は、ある政治家からの漏えいが目に余るの
でやんわり苦情を言ったところ、「オレのところに持ってくる以上、それは漏れるということくらい覚悟し
ておいてくれ、としかられた」そうだ。
日本政府の情報体制の欠陥を早くから指摘し、その根本的改革を訴えてきたのが中曽根康弘元首相であ
る。日本は、情報収集力だけではなく情報評価力も弱い。従って、情報部門を一元的、統合的に管理する必
要がある。そのために、内閣府に内閣法制局長官に匹敵する力と権限を持つ情報局総裁、それもできれば民
間人を置くことを検討せよと主張する。どこかの役所出身者だと他省が協力しないから民間人がいいという
のだ。
日本のような非軍事パワー中心で身を立てる国の場合、紛争予防の決め手となる情報は生死を分かつ安全
保障の要(かなめ)である。もう一つ、それは日米同盟を発展させる上でも重要だ。中曽根氏は「日本のよ
うな情報欠落の状況だと、アメリカに振り回される」点を懸念する。情報がディスインフォメーション(偽
情報)として操作される危険性もないではない。日米間の政策協議と戦略対話の強化は日本の独自の情報と
情報評価の力をつけなければできない。
情報をそれぞれの官僚機構の権益と縄張り拡大のため私する官僚と、情報を手にすることを自らのメンツ
と存在証明のようにみなし、それを私する政治家は実は同類である。彼らが扱う情報は第一線の政府職員の
日々の汗の結晶なのである。それを最大限有効に使うことが国民の安全と国益を守るのに資するのである。
そうした公の精神と使命を忘れている点で両者は変わらない。日本の情報体制の確立は、日本社会の中のパ
ブリック(公)を立て直すことでもある。(2001.10.04)