成田空港の暫定平行滑走路が完成し、十八日から運用を始める。開港二十四年で、ようやく滑走路二本の体制が整った。
しかし、空港反対派に用地買収を拒否され、新滑走路の長さは、当初計画の二千五百メートルを大きく下回る二千百八十メートルにとどまっている。
このため、ジャンボ機など大型機は発着できない。中型機でも大量の燃料を積む遠距離便は離陸できず、香港、サイパン以遠への運航は難しい。
成田空港は年間約二千七百万人が利用する「空の玄関」だ。一刻も早く、完全な姿にしなければならない。
新滑走路は、当初計画の滑走路中央部に残る反対派の用地を避け、北に約八百メートルずらす形で建設された。
「苦肉の策」ではあるが、この夏の発着枠の配分に際しては、「寸足らず」が大きなマイナスにはならなかった。
路線新増設の希望が中国、韓国など近距離のアジア路線に集中する一方、いつもは理不尽な手段に訴えてまで、強引に発着枠を求める米国勢が、太平洋路線の不振から要求を手控えたためだ。
昨夏と比べた国際線発着枠の国別シェアは、米国勢が減少、アジア勢が増加、日本勢が横ばいとなり、結果として米国勢への過剰な配分が是正された。
それでも反対派の抵抗は、新滑走路の様々な面に暗い影を落としている。
誘導路が「へ」の字に曲がり、航空機が地上で渋滞する恐れがある。舗装済みの当初計画部分を滑走路と間違っての誤着陸も懸念される。
事故は絶対に起こさぬよう、空港と航空各社は十二分に注意してほしい。
それにしても、開港から二十四年の長い年月を思わずにはいられない。
成田空港反対運動は、「両親が汗を流して開墾した田畑を捨てられない」という農民に「建設の本音は軍事利用だ」とする過激派が結合して、展開された。
親譲りの土地に対する愛着は尊重されてしかるべきものだ。しかし、その個人の利益と、安全で十分な発着能力を持つ空港という公共の利益が対立した時、個人の利益にはおのずと制限が加わる。
成田空港はわが国最大の国際空港であるばかりでなく、横浜港を大きく引き離す最大の「貿易港」でもある。代替農地も用意されている以上、居座りは国民的迷惑としか言いようがない。
成田空港には一人二千四十円の施設利用料がかかる。最初から二滑走路で運営されていれば、安く済んだはずだ。
国土交通省と千葉県は反対派との話し合いを続ける方針だが、そろそろ法的手段による解決を検討すべきである。
(4月17日08:54)