(回答先: 【「東奥日報」事件関連記事集】 <その6> 投稿者 あっしら 日時 2002 年 3 月 16 日 22:56:13)
『東奥日報』《「武富士」弘前支店強盗放火殺人事件関係記事》
2002年3月7日(木)
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武富士事件、オイル缶の調査進む
武富士弘前支店強盗殺人・放火事件で、強盗殺人容疑などで逮捕された浪岡町浪岡稲村、タクシー運転手小林光弘容疑者(43)の供述に基づき、弘前署と県警の捜査本部が七日、浪岡町の山中で発見したふたのついていない金属製オイル缶が、出光興産が販売する「ZEPRO」シリーズの四リットルオイル缶だったことが分かった。事件後、捜査本部は、現場の雑居ビルに残っていた同シリーズ缶用の金属製のふたを発見し、確保している。捜査本部は、山中で見つかったオイル缶が、小林容疑者が犯行に使用したものと同一との見方を強めて鑑定を急ぐとともに、ビル周辺に落ちていたふたと合うかどうか詳しく調べている。
捜査本部は七日午前十時半ごろ、前日までの捜索対象区域から約三百メートル浪岡町寄りで、小林容疑者の供述に基づき捜索した結果、オイル缶を発見した。缶は県道から斜面を約十メートル下った小さな沢の中にあり、雪に埋もれた状態だった。周辺にふたらしきものはなかった。
その後の調べで、見つかったオイル缶は、出光興産が同社のサービスステーションだけで販売している「ZEPRO」シリーズの四リットルオイル缶だったことが分かった。缶の表面には、さびが少し入っているが、文字などは、はっきり確認できるという。
捜査本部は事件直後、武富士弘前支店が入居するビル周辺で、ZEPROシリーズ四リットル缶用の水色のふたを発見している。出光興産によると、同シリーズの四リットル缶は十三種類で、缶の塗装は違うが、ふたはすべて水色の同一デザイン。
捜査本部は、小林容疑者が指摘した場所で、オイル缶が発見されたことから、同容疑者がガソリンを入れ犯行に使用した缶だったとの見方を強め、県警鑑識課が缶内部の成分分析や遺留指紋の有無、劣化の状態などを科学的に鑑定するもようだ。
また、缶が見つかった沢近辺では、現時点でふたが見当たらないことから、事件現場に残っていたZEPROシリーズのふたと合致する可能性もあるとみて、分析を進める。
捜査本部は缶の特定が済むまで、八日も山中の捜索を行い、オイル缶を含め事件との関連物がないか慎重に調べる方針。
2002年3月8日(金)
-------------------------------------------------------------------------------- 弁護士3人体制で手厚い弁護活動展開
武富士弘前支店強盗殺人・放火事件で、四日逮捕された小林光弘容疑者には、弘前市内の当番弁護士三人が交代で毎日接見に当たり、手厚い弁護活動を行っている。起訴前に三人もの当番弁護士が容疑者に接見するのは県内では異例で、事件の重大性を考慮して三弁護士は「容疑者の生の声をじっくり聞いていきたい」と話している。
七日会見した三弁護士は、弁護方針などを説明。三上雅通弁護士は「強盗殺人罪で起訴された場合、(小林容疑者は)殺意を否定しているため争わざるを得ない」と述べた。また、中林裕雄弁護士は任意同行から逮捕まで十八時間もかかった点について「争点になるか検討中。判決例などを踏まえ、任意同行から何時間まで許されるのか調べている」などと話した。
2002年3月8日(金)
--------------------------------------------------------------------------------オイル缶を有力物証に容疑固め急ぐ
武富士弘前支店強盗殺人・放火事件で、七日、小林光弘容疑者(43)の自供通りに浪岡町の山中からオイル缶が発見されたことで、捜査本部はこの有力な物証と事件の関連の特定を急ぎ、これを一つの「犯人だけが知り得る秘密(証拠)」として小林容疑者の容疑固めに入る。事件は、ガソリンによる爆発的な猛火で、物的証拠、遺留品が焼き尽くされたとされ、現時点で極めて少ない証拠のなかにあって事件への関与を客観的に立証できる代物。捜査本部は缶は小林容疑者が犯行現場に持参したものにほぼ間違いないとみている。
捜査本部はこれまで、小林容疑者が身に着けていた水色のつなぎ服、自家用軽自動車「サンバー・ディアス」のほか、青森テレビに届けた手紙を書いた際に下敷きとした便せんなどを押収した。これらは、有力かつ一定の証拠ではあるが、さらに、ガソリンをまき、放火するという実際の犯行に使用された−決定的な物証は得られていなかった。
こうしたなか、取り調べに対し小林容疑者は、武富士弘前支店にガソリンを入れて持ち込んだ缶について「浪岡町内の山林に捨てた」と自供。捜査本部は、六日午後、小林容疑者を車で山林に連行して確認させ、缶を捨てた場所をほぼ特定。さらに、七日午前、その供述通り、沢の中から最大の物証になり得る缶が発見されたことで、容疑の裏付け捜査は大きく進展する方向となった。
捜査本部は、小林容疑者が(1)自ら「缶を捨てた」と供述(2)容疑者のその記憶・供述、現場付近の指摘に基づき、オイル缶が見つかった−点を重視。数少ない物証の中で、同容疑者の自供を補強する最有力な証拠と判断、オイル缶の科学的な鑑定を進め、容疑の裏付けに入る方針だ。
判例では、具体的な凶器などが証拠提出されなくても、状況証拠、被告の自供などで、有罪となるケースは少なくない。しかし、被告が公判で供述を翻す場合もあり、物証の有無が公判維持、裁判審理の行方を左右することもある。
小林容疑者は、犯行着手から逃走までオイル缶を携行しており、犯行使用が断定された場合、事件解明は大きく前進する。
2002年3月8日(金)
--------------------------------------------------------------------------------武富士容疑者車両を弘前署に移送
武富士弘前支店強盗殺人・放火事件で、小林容疑者が犯行に使用したと供述している、同容疑者所有のスバル製軽自動車「サンバー・ディアス」が八日午前、保管場所から弘前署の捜査本部に移された。
車は、捜査本部が小林容疑者宅の家宅捜索で押収、確保していたもので、武富士事件の物証としてさらに詳しく裏付け捜査を進めることにしている。
2002年3月8日(金)
-------------------------------------------------------------------------------- 武富士事件、ガソリン黒石で購入
武富士弘前支店強盗殺人・放火事件で、強盗殺人などの容疑で逮捕された浪岡町浪岡稲村のタクシー運転手小林光弘容疑者(43)が、犯行前日、黒石市内にあるガソリンスタンドで、ガソリンを購入していたことが八日までに分かった。草刈り用に−と購入していたもようだ。犯行に使用したオイル缶は、店側からガソリンと一緒に購入したとみられ、弘前署と県警の捜査本部は、犯行の計画性を裏付ける事実とみて、さらに追及している。
これまでの調べで、小林容疑者は、犯行前日の昨年五月七日、武富士弘前支店を下見したほか、犯行時に店内にまき散らしたガソリンをあらかじめ購入したことが分かっている。
ガソリンは、オイル缶に入れて持ち込み犯行に及んでいたが、捜査本部は八日までに、小林容疑者がガソリンを買ったのは黒石市内のガソリンスタンドであることを突き止めた。
その際、オイル缶も同店から手に入れたもようで、ガソリンを缶に詰めた上で、浪岡町の家に持ち帰っていた。小林容疑者は地元ではなく、近隣の黒石市に足を伸ばしガソリンを準備していたことは、あらためて犯行の計画性を示すものとみられる。
小林容疑者が、犯行後に捨てたオイル缶と同一とみられる缶は、捜査本部が七日、浪岡町王余魚沢の山中を捜索し、発見している。県警鑑識課が現在、ガソリン成分の有無など缶の鑑定を進めている。捜査本部は慎重を期すため、八日午前から浪岡町王余魚沢の山中にある現場付近で二十五人態勢で缶などを捜索している。
2002年3月8日(金)
--------------------------------------------------------------------------------武富士事件で缶と現場のふた合致
武富士弘前支店強盗殺人・放火事件で、弘前署と県警の捜査本部は八日、小林光弘容疑者(43)の供述に従い、浪岡町王余魚沢の山中から発見した四リットルのオイル缶が、事件後、現場のビル周辺で見つかった金属製のふたと合致したとして、犯行に使用されたガソリンを入れた缶と断定した。捜査本部は、容疑の立証に向け有力な物的証拠を得たことになる。
捜査本部が押収、確保しているオイル缶とふたは、いずれも出光興産が販売する「ZEPRO」シリーズのもの。小林容疑者は犯行当日、このオイル缶にガソリンを詰めて弘前支店に持ち込み、放火した後、そのまま持ち帰って逃走している。ふたについては「ビルに着いてから投げ捨てた」と供述している。
浪岡町の山中で発見されたオイル缶について小林容疑者は「自分が使ったものに間違いない」とし、事件の翌日、林の中に歩いて行き、投げ捨てた−と供述。捜査本部は、オイル缶とふたが合致することを確認、同容疑者の供述や現場の状況から、缶とふたは一体のもので、犯行に使われたガソリンの缶と断定した。
捜査本部は現在、缶の詳しい鑑定を進めているが、新たに、小林容疑者が移動のために使った「サンバー・ディアス」車内でのガソリン成分の有無を調べる方針。小林容疑者は犯行前日、黒石市内のガソリンスタンドで、ガソリンを購入していた。
2002年3月9日(土)
--------------------------------------------------------------------------------小林容疑者、知人に頼まれ借金
武富士弘前支店強盗殺人・放火事件で逮捕された小林光弘容疑者(43)が複数の消費者金融に借金を抱えて困窮するようになった要因に、仲人をしてもらった女性から用立てを頼まれたために借りた二百万円があったことが、八日までの関係者などの話で分かった。仲人の女性はその後二〇〇〇年に自殺したが、その直前、詐欺容疑で青森署から全国に指名手配されていた。借金については小林容疑者も被害者だった側面は否定できず、この女性のために作った借金返済や住宅ローンなどで雪だるま式に額が増え苦境に陥っていったとみられる。弘前署と県警の捜査本部も、既にこうした借金の事実を把握している。
関係者の話などを総合すると、小林容疑者は一九九七年ごろ、自身の仲人の女性に「面倒を見ている一人暮らしの老人から近々一千万円もらえる予定だが、その手続きに金がいる。貸してもらえないか」と持ち掛けられ、青森市内の四つの消費者金融から五十万円ずつ、計二百万円を借金したとされる。同容疑者の妻も消費者金融から五十万円を用立てていたという。
それまでの小林容疑者は、九五年に新築した家のローンがあったものの、手取り約二十万円の月給、妻の頑張りで返済し、生計を立てていたとされる。ところが、この女性に貸すために初めて消費者金融から借金。取り立てがやってくるなど苦境に陥ったという。
一時は同僚を交え、女性に金を返す旨の念書を書かせたりしたとされるが、既に督促に困っていた小林容疑者は、退職金を見込んで十年勤めた青森のタクシー会社を退社。それでも借金は残ったため、職場を転々。東京のタクシー会社にも勤めたが、思ったほど収入もよくなく三カ月で帰省している。
その後も、増収を見込んだ小林容疑者が運送業に移った矢先の〇〇年四月末。行方をくらましていた女性が、岩手県にある港で一家三人と心中。女性はその直前、詐欺容疑で青森署から指名手配されていた。小林容疑者も信じ込み、被害者の一人だった可能性があり、女性の死で借金を完全に背負う形になったという。
転職を繰り返しても収入は大きく増えることはなく、一方で、借金の取り立ては月収の倍に上っていたとされる。そうした中、競輪の借金は膨れ上がったとの見方も。捜査本部は、犯行が金目当てとの見方をほぼ固めており、小林容疑者の債務の実態などについて詳しく捜査する。
◇
当番弁護士として、小林光弘容疑者(43)の起訴前の弁護活動をしている中林裕雄弁護士が八日、同容疑者に接見し、弘前署で記者団に対し、その模様を語った。同容疑者は、武富士弘前支店を狙った理由を「消費者金融なら逃げやすいと思った」とし、「自己破産の説明会の際などに通り掛かり、以前から同支店を知っていた」などと話しているという。
中林弁護士によると、小林容疑者は、動機は借金で、「銀行、郵便局も考えたが、人が多いのであきらめた」と話しているという。七日に浪岡町の山林で発見されたオイル缶については「自分が捨てた缶」と認めている。
犠牲者や被害者に対して「人生、命を奪ってしまい、ひたすら頭を下げるだけです。後は、法の裁きを受けるだけ」などと話しているという。
2002年3月9日(土)
-------------------------------------------------------------------------------- 武富士事件の缶に自供通りの穴
武富士弘前支店強盗殺人・放火事件で、小林光弘容疑者(43)の供述通りに浪岡町の山中で発見されたオイル缶の表面に、数カ所の小穴が開けられていたことが九日、弘前署と県警の捜査本部の調べで分かった。同容疑者は缶が発見される前に、「缶に何カ所か穴を開けて捨てた」と自供しており、小穴は自供と一致した。発見された缶については、同容疑者が「自分が捨てた缶に間違いない」と認めているが、本人しか知り得ない小穴が確認されたことで、捜査本部は、犯行に使われた缶であることがさらに裏付けられたとみている。
同町の山林で発見されたオイル缶について、捜査本部は慎重な鑑定作業を行っている。九日までの調べで、缶の表面に数カ所、小さな穴が開いていたことが新たに判明。小穴の形状などから、腐食などの自然原因によるものではなく、人為的に開けられた穴との見方が強い。
捜査本部が缶を発見する前、小林容疑者は「何カ所か穴を開けて捨てた」と詳細に供述しており、缶の特徴と同容疑者の供述はほぼ一致した。捜査本部は、缶の穴については同容疑者だけが知り得る事実であり、発見された缶が犯行に使用したものであることを客観的に裏付ける重要事項として、鑑定を急いでいる。
缶は捜査本部が七日、同町王余魚沢の山中にある沢の中から発見した。供述通り、出光興産が販売する「ZEPRO」シリーズの四リットルオイル缶だった。捜査本部は(1)自供通りの場所で発見(2)小林容疑者が「自分が捨てた缶」と認めている(3)事件現場の雑居ビル周辺で見つかったふたと合う−などから、犯行に使用した缶との見方をほぼ固めていた。
小林容疑者は、ガソリンスタンドの勤務経験があり、ガソリンの危険性を十分認識していたとされる。捜査本部は、同容疑者が犯行後、缶内に残ったガソリンを気化させる目的で、穴を開けた可能性が高いとみて調べている。
2002年3月9日(土)
-------------------------------------------------------------------------------- 武富士弘前支店を選んだ理由供述
武富士弘前支店強盗殺人・放火事件で逮捕された小林光弘容疑者(43)は、犯行前日に下見に行くまで同支店従業員と面識がなかったことや、さまざまな逃げ道がある同支店の立地など、犯行後に捕まらないことを考えて同支店に狙いを定めた可能性が高いことが、九日までの弘前署と県警の捜査本部の調べで分かった。また、犯行前日に下見した際、従業員が追跡できないよう、ガソリンをまき散らす場所を確認しており、逃走に相当の神経を使っていた。
捜査本部のこれまでの調べでは、小林容疑者は複数の消費者金融から金を借りていた。消費者金融を狙った理由を同容疑者は「他金融機関に比べ逃げやすいと思った」と供述している。
しかし、同支店から金を借りていず、犯行前日に下見に行くまで入店したこともなかった。同支店を選んだ理由を「たまたま見て、そこに店があるのを知っていたから」と供述している。小林容疑者は、(1)融資など取引がなく、顔を知られていない(2)市東部に位置し、隣接町村に抜けやすい−という理由で、同支店なら犯行後に逃げやすいと判断したとの見方が強まっている。
また、小林容疑者は犯行前日に支店を下見し、従業員がいるカウンターなどを確認。その際、犯行後に同店従業員が追いかけてくる可能性を考え、階段に新聞紙を置いて火をつけ、追跡を阻むことを考えついたという。
一方で同容疑者は、帽子やマスクなどで変装をせず、素顔のまま支店に押し入っている。この点については「(変装などは)あまり考えなかった」「金を取ることだけを考えていた」などと供述しているもよう。従業員に追いかけられて捕まることを極端に警戒する一方で、顔を見られることにはあまり注意を払っていなかったようだ。
しかし、目撃証言に基づいて作成された二枚の似顔絵については「自分でも似ていると思った」と供述。二枚目の似顔絵が公表された後、「犯行時は帽子、マスク、手袋をしていた」などと書いた手紙を青森テレビへ送ったのは似顔絵が似ていることへの焦りから、捜査かく乱を狙った可能性が高い。
2002年3月10日(日)
-------------------------------------------------------------------------------- 「捕まってほっとした」小林容疑者弁護士に語る
弘前署内で九日に小林光弘容疑者に接見した弁護団の三上雅通弁護士は同日、同容疑者が「仕事中は事件を忘れることができたが、休みのときは思い出してつらかった」と逮捕されるまでの心境を語り、「捕まってほっとした」と話していることを明らかした。
三上弁護士によると、小林容疑者は(1)自首も考えた(2)公開された似顔絵は自分でも似ていると思った(3)妻子に犯行を話していなかったため、平静を保たなければならず、逃亡することはできなかった−などと述べているという。
2002年3月10日(日)
-------------------------------------------------------------------------------- 目撃情報や犯行状況、現実と微妙な差
頭髪は「白髪交じりで立った感じ」ではなく「黒くて緩くパーマのかかったオールバック」、逃走車両は「サンバー・ディアス・クラシック」ではなく「サンバー・ディアスの亜種」−。武富士弘前支店強盗殺人・放火事件で逮捕された小林光弘容疑者(43)の風ぼうや供述内容から、捜査当局が事件発生直後につかんでいた目撃情報や犯行状況、逃走手段などとの微妙な差異が次第に明らかになっている。捜査当局は起訴後の公判維持のため、物証・状況証拠を固める裏付け作業を急いでいる。
<人相>
手書きとコンピュータグラフィックス(CG)の二種類の似顔絵で、最も特徴が表れていると思われた頭髪が、似顔絵では白髪交じりで立っているが、実際は黒髪で緩くパーマがかかりオールバック。大きな目や横一文字に結んだ唇の感じは良く似ている。
<着衣>
従業員の証言から立ち襟で、水色のつなぎ様のもの、あるいは紺色のウインドブレーカー様のものを着ていたとみていた。逮捕後、容疑者の自宅から水色のつなぎ服を押収した。紺色のウインドブレーカーについては、小林容疑者が勤めていた青森市のタクシー会社で八年前に仲間とともに作ったジャンパーが似ている。同容疑者が事件の数日前にこのジャンパーを着ていたことが同僚に確認されている。つなぎの上にジャンパーを着ていたのか、逃走時に着込んだのかなどは判然としない。
<逃走車両>
犯行直後の複数の目撃情報からスバル製の軽ワンボックスで、旧タイプの「サンバー・ディアス・クラシック」を割り出した。前部のグリルに特徴を持ち、車体色は深緑色とみて車当たり捜査を展開したが、逮捕後に押収した車は現行型の「サンバー・ディアス」。上部が深緑色、下部がグレーのツートンカラーで、同容疑者は犯行前の昨年一月に新車で購入していることが、関係者の話で判明している。
<逃走経路>
国道や幹線を中心に行われた検問では同車が通った記録はなく、裏道や農道を通って浪岡町の自宅まで逃走したものとみられる。また小林容疑者は犯行当日の午後四時ごろ、浪岡町の道の駅で買い物していたことが店員の証言から判明、大胆であり不可解な部分だ。
2002年3月10日(日)
--------------------------------------------------------------------------------武富士事件、殺意の立証が焦点
武富士弘前支店強盗殺人・放火事件で、弘前署と県警の捜査本部は、小林光弘容疑者(43)を強盗殺人容疑で逮捕したが、弁護側は、小林容疑者が「殺すつもりはなかった」などと殺意を否定している状況から、公判では強盗致死傷罪など争う構えを打ち出している。捜査本部は、小林容疑者に捜査の結果、万一、積極的な殺意がなかったとしても、犯行状況などから、ガソリン放火で生じる重大な結果(死者が出る)はあらかじめ分かっていたとして、「未必の故意」適用も視野に入れ、強盗殺人罪などで立件する方針。この点が、今後の捜査の一つの大きな焦点となる。
取り調べに対し小林容疑者は、同支店に押し入り、金を要求、ガソリンに放火して、従業員五人を死亡させ、四人を負傷させた−との事実は全面的に認めている。捜査本部は、小林容疑者が放火する前の段階で「金を断られ、従業員を殺害することを決意した」とし、明確に殺意があったとする。
かつての判例(一九五〇年、最高裁)は、「強盗殺人罪の成立には、強盗の機会に人を殺害すれば足り、必ずしも殺人を強盗の手段に利用することを必要としない」としている。捜査本部は(1)社会通念上、ガソリンは危険物という客観的な認識がある(2)そのガソリンに着火すれば、重大な結果が生じることは十分予見が可能−との点から、小林容疑者に殺意があり、放火の手段を取ったとみている。
しかしこれに対し、小林容疑者は接見した弁護士に対して「最初から殺すつもりはなかった。逃げるしかなかったため火をつけた。(九人死傷と聞き)がく然した」と、殺意がなかったことを伝え、「ガソリンは、ちらつかせて脅かすために持ち込んだ」とも主張した。殺意を否定しているわけで、弁護側は強盗殺人罪で起訴されれば公判で争う意向だ。
一方、捜査本部はガソリンスタンドでの勤務経験がある小林容疑者はその危険性を分かっていた可能性が極めて高く、ガソリン放火で発生する結果を認識していたはず。加えて、ビル三階の密室で放火、逃走時に階段上で再び放火した客観的状況などから、仮に事件前に明確な殺意がなかったとしても、“事を起こせば”死亡するという「未必の故意(不確定な故意)」を持っていたとして、「強盗殺人罪」での立件を進める方針だ。
2002年3月11日(月)
--------------------------------------------------------------------------------小林容疑者「来た道たどり昼前に帰宅」
武富士弘前支店強盗殺人・放火事件で、小林光弘容疑者(43)の弁護活動をしている中林裕雄弁護士は十日、小林容疑者と接見後、記者団に対しその模様を語った。小林容疑者は犯行後、「浪岡町の自宅から現場に来たのと同じ経路をたどり、正午前には帰宅していた」、と話していることを明らかにした。同弁護士は「(小林容疑者は)昼前にはもう(自宅に)着いていて、たまたまつけたテレビで武富士が燃えている画面を見て驚いた、と話している」と述べた。途中の寄り道はなかったという。
また、小林容疑者が一九九七年ごろ、自身の仲人の女性に用立てを頼まれて二百万円を借金したことについて「家を購入してから、その人(仲人)が現れるまでは平和だった、その人が出てきて借金をすることで苦しくなった、と話している」と語った。
2002年3月11日(月)
--------------------------------------------------------------------------------オイル缶の捜索終わる
武富士弘前支店強盗殺人・放火事件で、県警と弘前署の捜査本部は十日、小林光弘容疑者(43)=浪岡町浪岡稲村=が犯行後に捨てたと供述している浪岡町山中でのオイル缶の捜索を終了した。
捜索は、同容疑者が捨てたと断定されたオイル缶が七日に発見された後も、慎重を期すため続けられていた。
捜索日数は六日間、延べ約百八十人の捜査員がオイル缶の発見に全力を注いだ。九日と十日の捜索では、一斗缶やペイント缶などが約二十個発見されたが、小林容疑者が使用したとされる四リットルのオイル缶は発見されなかった。
2002年3月11日(月)
--------------------------------------------------------------------------------武富士事件、新聞から居住地特定
武富士弘前支店強盗殺人・放火事件で、犯行現場の同支店が入っていたビルに残されていた数少ない遺留品の新聞紙の束が犯人の居住地を浪岡町と絞り込む決め手になっていたことが、十日までに分かった。弘前署と県警の捜査本部は、残されていた新聞紙に重大な関心を寄せて捜査。チラシが全く入っていないことに加え、印字に発見した極めて微妙な具合、さらに広告や記事の状況などから配達された地域を「浪岡町」と特定した。逮捕された小林光弘容疑者(43)=浪岡町浪岡稲村=宅の周辺世帯から、現場のものと同じ日付の紙面を取り寄せて比較し、同容疑者が犯行に使用したものとの確証を深めていったもようだ。
同事件では、支店に通じる階段の二階踊り場付近から、昨年四月下旬から犯行日の五月八日以前の本紙が約二週間分余ほど見つかっている。ガソリンが染み込み、燃えた跡があったが、ほとんどは焼け残っていた。
この新聞紙の束は、早い段階で支店と、ビル内のCD、ビデオレンタル店のいずれも定期購読していなかったことが確認された。階段の燃え方がひどくないにもかかわらず不自然な燃え方をしていたため、捜査本部は犯人が持ち込んだものとの見方を強め、重大な遺留品とみて一枚一枚を詳細に鑑定していった。
事件直後の初期捜査では、新聞にチラシや折り込み広告が全く入っていないことから、コンビニ店の捜査とともに、分別販売を含め、古新聞を回収する際に新聞とチラシを分別して出すことを奨励している地域を調査。その結果、西郡の二村、中郡二村と浪岡町が対象地域として浮かび上がった。
捜査本部は鑑識活動を強化、これらの地域から、現場に残されていた新聞と同じ日付のものを取り寄せた。次に紙面に印刷されている活字を詳細に比較。こうした科学捜査の結果、印刷の時間帯によってインクの付き方が極めて微妙に違うことを発見。この発見により、現場のものと同様の活字の特徴を持つ紙面が、浪岡町周辺で配達された可能性が極めて強いものであることを突き止めた。
さらに、紙面広告の地域的な違い(切り替え版)、「新首相に小泉氏」(昨年四月二十六日付夕刊)など、時間を追って調整されていった記事の状況など、紙面に現れている複数の要素を照合し、浪岡町で配られた新聞であることを特定した。
これと並行し捜査本部は、これまでの捜査線上に挙がった浪岡町内の「継続捜査対象者」をコンピューターなどで再検証。(1)緑色の軽ワンボックスカーを所有(2)事件当日、仕事は休み(3)アリバイがはっきりしない(4)公開した似顔絵に人相が似ている−の小林容疑者が「重要参考人」として浮上した。
逮捕後、小林容疑者は新聞を事前に持ち込んだことと、店から逃走する際に「従業員の追跡をかわすために火をつけた」と自供している。
捜査本部は今年一月中旬以降、町内での聞き込みを行う一方、同容疑者宅近隣から、同じ日付の新聞紙を取り寄せ比較。犯行現場に残されていたものと同様の特徴を持つものであることを確認した。
2002年3月11日(月)
--------------------------------------------------------------------------------小林容疑者、金を借りては競輪に
武富士弘前支店強盗殺人・放火事件で、小林光弘容疑者(43)が、仲人のために工面した借金の返済のためギャンブル(競輪)に金をつぎ込み、債務を膨らませていたことが十一日までの、弘前署と県警の捜査本部の調べで分かった。小林容疑者は、消費者金融や知人から新たに借りては、返済することなく、競輪に金を使っており、次第に行き詰まった可能性が高いとみられている。
捜査本部によると、小林容疑者は一九九七(平成九)年、仲人を務めた女性から、一時的に金の融通を頼まれ、青森市の消費者金融四社から二百万円を用立て、妻も五十万円借りていた。しかし、三年後にはこの女性が自殺、金は戻らなかったことが分かっている。
捜査本部は、小林容疑者は、借金の利息が増え、収入からの返済が苦しくなったため、ギャンブルで返済資金を捻出(ねんしゅつ)することを決意したとみており、消費者金融や知人から金を借りては、競輪に金をつぎ込んだとされる。その結果、借金を抱え込んだ消費者金融は四社以上に上ったとみられる。
また、競輪では十万円単位で賭けたことがあったが、思うように勝てなかったほか、新たに借りた金を、もともとの借金返済に充てることなく、結果的に借金は雪だるま式に増えたとみられる。小林容疑者は事件後になって、自己破産を申し立てている。
2002年3月12日(火)
--------------------------------------------------------------------------------犯行に使用した「ガソリン」は混合油
小林光弘容疑者が犯行前日に購入し、犯行に使用したガソリンは、オイルとの混合油であることが、十一日までに分かった。弘前署と県警の捜査本部は、成分の割合などさらに詳しく調べる。
これまでの調べで、小林容疑者が犯行時に店内にまき散らしたガソリンは、犯行前日の昨年五月七日、あらかじめ黒石市内のガソリンスタンドで、草刈り機用として購入したことが分かっている。同容疑者の供述などから、犯行に使ったのは農業機械に使用されるオイルとの混合油だったことが新たに判明した。混合油は全体の95%以上がガソリン成分とされている。
2002年3月12日(火)
--------------------------------------------------------------------------------小林容疑者、軽トラ購入で生活苦
武富士弘前支店強盗殺人・放火事件で、小林容疑者の弁護活動をしている中林裕雄弁護士は十一日、小林容疑者と接見後、記者団に対しその様子を語った。小林容疑者は「宅配業用に、軽トラックを購入したことが生活を苦しめた」と話しているという。
同弁護士は、小林容疑者が「借金の総額は自分でも分からない。宅配業用に購入した約三百七十万円の軽トラックが生活を苦しくした。高収入を見込んで始めた宅配業で、思うような収入が得られなかった」と話していることを明らかにした。
小林容疑者は二〇〇〇年に宅配業にかかわっていたことが分かっている。
2002年3月12日(火)
-------------------------------------------------------------------------------- 小林容疑者、手紙示され犯行自供
三日朝の任意同行後、約十八時間にわたって犯行を否認していた小林容疑者が四日に入り犯行を認め、自供を始めたのは、青森テレビに犯人を名乗り匿名で出した手紙と、その際に使用し、自宅から押収された便せんを示されたため、観念したから−と接見した三人の弁護士に話していることが分かった。
同容疑者は任意同行から自供までの経緯について、三日午前十時半ごろから、金木署で取り調べを受け、取り調べの間、休みはなく、食事は出されたが昼食も夕食も食べなかった。また黙秘権は伝えられたが「話さない限り自宅には帰さない」と言われた−などと語っているという。
2002年3月12日(火)
--------------------------------------------------------------------------------武富士事件の引き金は「60万円」
武富士弘前支店強盗殺人・放火事件で、小林光弘容疑者(43)が犯行の直接の動機について、競輪のために二〇〇一年三月に自動車担保金融業者から借りた六十万円の借金が、犯行直前に当たる返済期限の五月二日になっても返済できなかったため−と接見した弁護士に話していることが十二日分かった。犯行時、野球帽をかぶっていたとも話しているという。三人の接見弁護士が同日午前、弘前市役所内で行った二回目の会見で明らかにした。
小林容疑者の仲人で、その後自殺した女性から一九九七年ごろ頼まれて消費者金融から借りた二百万円については、同容疑者の親類が代わって返済したという。
一方で同時期ごろから始めた競輪は妻には内緒だったといい、三上雅通弁護士は「競輪の借金は誰にも打ち明けられず、通勤に必要な車を担保に取られるわけにもいかなかった。彼にとっては六十万−百万円の金が必要なだけだった」と推測。その上で「もう少し動機の解明が必要だ」などと話した。
また、同容疑者の犯行当時の格好は、野球帽を後ろ向きにかぶっていた−と話していることが分かった。また、顔を隠す目的でマスクを用意していたものの、マスクをせずに店内に入り、犯行に及んだという。逃走経路も普段走り慣れている裏道を通っただけだといい、弁護士は「計画性はない」と主張した。