「電通株」買ってはいけない 危うい「上場」断行の舞台裏 (選択2001年11月号)

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投稿者 sanetomi 日時 2001 年 11 月 22 日 21:14:34:

回答先: “超大型新人”に期待・不安・思惑・利害〜電通、30日上場へ(PAXNET) 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 22 日 20:12:42:

 二百万部も売れたというベストセラー本『買ってはいけない』に、重版・改
訂のチャンスがあるとするならば、是非とも加筆して欲しいアイテムがある。
その名は電通株。東京証券取引所一部への上場を十一月三十日に控えた金融
商品だ。
 その理由は、投資判断の「原材料」となる中立な報道、公正な株式情報の発
信が期待しにくいから−− こんな懸念が株式市場を覆っている。広告収入と
いう財布の紐を握られたメディアは、電通の利害関係者である。「厳しい報道
ができるか疑問」(弁護士)。正確な企業情報が市場で提供されない商品を、ど
うして投資家に薦められよう。
 さっそく編集部は電通に取材を申し込んだ。「上場関連の取材には応じるこ
とはできません。質問があるのならばファクスでどうぞ」(電通広報部)。案の
定、当方の質問状にはゼロ回答。半面テレビ局や全国紙など関係の深いメデ
ィアの社員ならばウェルカムという。来訪の際には、上場セットと呼ばれる
紙袋もプレゼントするらしい。紙袋の中には、創業百年社史、株式上場の目
論見書、電通や広告業界の解説本などが入っている過剰サービスぶり…‥・同
じメディアであっても、広告の取引関係がなければ門前払い、かく解釈すべし。

大手メディアは電通の言いなり

 発表リリースなどによると、上場後の電通株は、想定時価総額が五四〇〇
億円前後にも達する。今年の新規公開銘柄としては、日本マクドナルドをし
のぐ最大規模である。六兆円規模と呼ばれる国内広告市場。その二五%もの
シェアを電通が押さえている(業界推計)。業界二位の博報堂以下が足元に
も及ばないほど盤石な事業基盤が電通株の「買い材料」という。
 ちょっと待ってくれ。このチャームポイント、重要顧客である有力企業や
マスコミの経営幹部の子弟をコネ入社させる伝統的な人脈経営が裏にあるの
ではないか。昔から電通の採用枠は、「有力者の子弟、体育会系、東大卒エリ
ートの三本柱」と言われて来た。米ロサンゼルス現地法人社長による横領事
件(九四年)、「ウチの会社では(薬物使用が)ごく当たり前」と社員が東京地
裁で放言した大麻取締法違反事件(九五年)、法人所得申告漏れ事件(九九
年)、昨年のスズキヘの広告料不正請求・受領事件−−。ここ数年間、電通
が引き起こした事件の多さには驚く。圧倒的な市場シェアは、前近代的かつ
ルール違反ぎりぎりで勝負する電通商法のおかげとも読み取れる。
 公明正大な経営と利潤最大化の両方を要求する株式上場。従来通りの電通
商法は、もろ刃の剣とならないか。しかし、こんな素朴な疑問を投げかける
ことすら、大手メディアは尻込みする。最近、ある全国紙が書いた上場関
連記事の中身が気に食わなかったのか、電通幹部が編集局にねじ込み、「断筆
令」が出たと聞く。

 十月五日、共同通信が都内のホテルに加盟社幹部を招き、懇親会を開いた。
当時は、米同時多発テロの影響で世界中の株価指数が安値を更新中。灰聞す
るに、大広間のいたるところで「共同通信のトップが電通の成田豊社長に上
場敢行を懇願したらしい」、「(電通株の引受・販売の責任をもつ)主幹事の野
村證券が、株式売り出し価格を低くしたがっているようだ」などと、電通上
場のよもやま話で盛り上がったという。
 なぜ、電通上場はメディア各社の関心を引くのか。電通の株主名簿を眺め
れば、一目瞭然だ。一位は共同通信。保有株数は三十一万八四四株、保有比
率で二二・七六%もある。二位の時事通信は二十二万二三三六株、一六・二
八%。以下、別表の通り上位百株主の
うち二十九が主要メディアである。(sanetomi注:表はカットします)
 くだんの共同通信は目下、東京・汐留で五百億円もかけてニュースセンタ
ービルを建てている。時事通信も銀座で本社ビルを建設中だ。両社の斎田一
路、村上正敏社長は電通の取締役を兼務している。上場に伴う株式売り出し
で、建設資金を捻出する予定だけに、低迷を続ける株式市場にさぞかし頭を
抱えていることだろう。
 戦時体制下の電通は、国策会社、同盟通信の支配下にあった。戦後も、そ
の関係で共同と時事通信が大株主におさまるという歴史的背景がある。さか
のぼること五十年、中興の祖と言われる第五代社長の吉田秀雄氏はメディア
関係の強化策を打ち立て、電通は急成長を遂げた。平成十二年度の連結売上
高一兆八一四三億円のうち、新聞、雑誌、ラジオ、テレビなどマスメディア
広告の売り上げが七割を占めている。
 マスコミが利害関係者になったのは外でもない。電通こそが、「媒体の販
売・放送そのものではなく、収益の大半を広告収入に依存する」というマス
コミの事業構造を築き上げた立役者であるからだ。「広告依存」経営でありな
がら、新聞、テレビ局の営業マンは自らクライアントとなる広告主を見つけ
る能力に乏しい。そこで、電通マンの営業カに依存することで広告を増やし、
視聴率アップや部数拡大との相乗効果によって広告収入の極大化を狙った。
 電通は電通で、広告主を紹介してスペースや時間枠を確保した分だけ、広
告料の一五〜二〇%の手数料をメディアから頂戴する。要は、「ショバ」取り
屋だ。目論見書に掲載されている保有手形や売掛金の相手先には、カネボウ、
資生堂、トヨタ自動車、NTT、花王、サントリー、松下電器産業と日本を代
表する大企業がずらり。電通自身も全国朝日放送、日本テレビ放送網、ニッ
ポン放送、フジテレビジョンなどの大株主でもあることから、業務、資本の
両面でメディアともたれあう。
 電通は「メディアの金融機関としての支配力」まで持つ。広告主からの手
形をマスコミに現金で支払ったり、売掛金回収も引き受ける。今年三月末の
現預金残高は一二二一億円と豊富な手元流動性。自己資本比率も三五%あり、
銀行よりも高い格付けが取れるのではないか。さらに広告主の倒産等の非常
時に、メディアヘの支払いを肩代わりする保険機能まで併せ持っている。
 メディア界の支配者ならではのトラブルシユーター機能も、電通の厚い利
ざやの根拠になっている。メディアと企業が記事や番組内容などで摩擦を起
こせば、広告や記事掲載の斡旋を通じて両者を仲裁する。読者は最近、ゴー
ルデンタイムと呼ばれ視聴率がアップする夜七時から十時の時間帯に、消費
者金融のCMが急増していることにお気づきだろうか。「広告枠の拡大斡旋を
通じて、八〇年代のサラ金問題以来、犬猿の仲にあった大手メディアとサラ
金業界を電通が仲直りさせた」(同業他社)。実際、主要キー局は、サラ金広告
規制を撤廃している。他社間のトラブルをもみ消すぐらいだから、自社にま
つわるトラブル処理で見せる腕力はいわずもがなだ。

長期政権「成田天皇」の花道づくり

 電通の築地本社十階。その一角に、「ジャンプ推進事務局」なる組織があ
る。九八年の上場計画決定を受けて、九九年一月に立ち上がった上場準備部
隊である。経理や財務経験者を幹部に据え、上場後はIR(投資家向け広報)
を担当する。上場に必要な経理内容の透明性を確保するのが目的だ。社員か
らは「(ナチスの秘密警察)ゲシュタポのように恐ろしい」との評判だ。業界
に横行する危ない商慣行、架空取引による裏金プールなど不正経理を排除す
るため監視の眼を光らせて来た。
 電通は今年、創立百周年を祝い、来年には総工費二千億円というIT(情
報技術)フル装備の四十七階建て新社屋(劇団四季の劇場などテナントも入
る豪華さ)が竣工する。米同時多発テロ、世界景気の後退、株式相場の急落
−−−という暴風雨にもかかわらず、株式上場に踏み切るのは、「長期政権の成
田天皇(社長)が来年、花道を飾るため」(電通関係者)と社内で囁かれてい
る。ジャンプ推進事務局は成田社長直属の部隊だ。
「ウチは野村総合研究所と会社のレベルが違うんだよ」。野村総研が株式上場
を見送った九月半ば、成田社長は側近にこう漏らしている。電通幹部は上場
決定の舞台裏をご存じだろうか。「野村が虎の子である野村総研上場を延期し
たのは、電通の上場を成功させたい一心」「需給悪化を避けるべく、上場の
順番を先に譲った」が通説である。
 野村総研の延期決定後、「成田社長が野村の氏家純一社長に面会した」(電通
関係者)。この場で、成田社長は「上場を成功させたいのなら、公募・売り出
しの規模を小さくしたうえ、公開価格を低く設定せざるをえない」と説得さ
れたようだ。現時点で、想定仮条件三八万〜四〇万円の下限は、九七年に第
一勧業銀行、三菱信託銀行などを相手に実施した第三者割当増資の発行価格。
今年夏に導入したストックオプション制度の譲渡価格でもある。
「昨年までは『当社株は百万円の価値がある』と主張していた成田社長が、
よくぞ譲歩した」(競合他社)との見方が広告業界ではしきりだ。そこで、「見
返りとして、野村が来年の第二公募・売り出しにOKサインを出した」との
密約説も出ている。現在の想定水準では、共同通信と時事通信の資金調達額
がそれぞれ二五〇億円、九十億円程度と当初目標の半分以下となる。これだ
けでは本社ビルは建てられない。
 電通は昨年四月、株式上場時に自社株と交換できる社債(EB)を二億ドル
発行した。海外提携先に米ドルで出資するのが目的だったのだが、このデリ
バティブの仕組みを作ったのが野村だった。株式公開時点において、投資家
は公募・売り出し価格でEBを強制的に電通株に転換しなくてはならない。
仮に、株式公開の中止や償還期限(来年四月)以降の延期が行われたら、発
行体である電通は強制的に割増償還を迫られる。上場断行で電通のメンツは
立ったが、EBの買い手である投資家は地合いの悪いときに電通株をつかむ
ことになる。

リスク情報の開示に問題あり

「そんな取引は太田昭和センチュリー監査法人には認められません」−−ジ
ャンプ推進室など社内の財務担当者は常識人が多いという。事あるごとに、
業界の宿「あ」(注:「あ」はやまいだれに「阿」と書く漢字)とも言える
不正経理や不透明取引をチェックしてきた。監査法人は上場の条件として、電通に対し
@収支が赤字の取引先と取引停止、A取引は正規価格で、B子会社電通テックの
赤字解消、C過大な交際費など無理な得意先経費の削減、D反社会的勢力と
は取引しない、E社員は法令遵守に努める、等の勧告を行った模様である。

中でも「特戻し」と呼ばれるバックマージンの規制は厳しいそうだ。旧来の電
通商法を断ち切る努力は評価できる。
 大物銘柄の上場前には怪文書が乱れ飛び、足を引っ張る勢力はどこにでも
いるものだ。電通上場はライバル他社には脅威だし、成田社長の上場プラン
に反発した営業局員はゴマンといた。
 しかし、電通の場合、上場決定のはるか以前から、きな臭い風評、事件がら
みの醜聞に事欠かなかった。特に一〇○%孫会社、プロックスエンジニアリ
ングサービス(PES)を巡る事件は物議をかもした。九八年に倒産したプ
ロックス社は、暴力団筋とののっぴきならない関係や裏金疑惑が複数の雑誌
に報じられ、成田社長がらみの不祥事と叩かれた。
「関西の広域暴力団幹部がカネに困った電通OBから、言い値で未公開株を
買い取った」、「上場後の増配など株主還元策を見込んで、電通幹部や関係者
がEBを他人名義で購入している」。
 いずれも真偽不明の怪情報とは言え、「事件の宝庫の電通ならさもありなん」
との風評を呼んでいる。目論見書の免責事由とも言えるリスク情報の開示は
十分なのか。取材に応じない電通の目論見書には「当社にはマスコミのチェ
ック機能が働きにくい懸念があります」と書き加えたらどうだろうか。
 ちなみに、上場日が当初予定の十一月二十日前後から三十日にずれ込んだ
のは、「皇太子妃、雅子さまのご出産日に合わせるのが目的」(電通幹部)との
噂がもっぱらだ。慶祝相場に華を添える、いや初値を高騰させたいソロバン
勘定に違いない。泣く子もだまる電通商法、健在なり----- である。



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