投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 22 日 20:12:42:
広告界の巨人・電通(4324)の上場日が迫ってきた。今回、上場に先駆け公募・売り出し価格が決定、あとは上場日を迎えるだけの段取りとなった。業界第2位の博報堂を大きく引き離し、世界最大の広告会社の座に君臨する同社の上場は、日本マクドナルド<2702>をしのぐ今年最大のIPO(株式公開)だけに、市場関係者の注目度は極めて大きい。1998年に上場計画を決定して以来、3年越しで上場にこぎつけた電通だが、株式市場の低迷は発行体と株主の「皮算用」を大きく狂わしている。上場延期が続出する中、抜群の知名度、財務力を誇る電通がなぜこの時期に上場を急ぐのか。そこには電通を取り巻く関係者の利害や思惑が交錯している。
●一致する利害〜資金調達と花道
電通上場を急がせた一番の要因は、大株主の意向が強く働いたからといわれている。
電通の大株主は共同通信社(発行済み株式の22.76%保有)を筆頭に、時事通信社(同16.28%)、電通社員持株会(同7.11%)、第一勧業銀行(同4.91%)となっている。戦時体制下、電通は共同と時事の前身である同盟通信社の傘下にあった関係で、通信2社
が大株主として君臨している。そしてこの2社こそが電通上場を是が非でも成功させたい事情があった、と伝えられている。
偶然にも株主である共同、時事ともに現在、東京都内に新社屋を建設中だ。共同は汐留にニュースセンタービルを、時事が銀座東急ホテルを買い取り念願の本社ビル建設に着手している。実はこの建設資金を電通株の売却で賄おうと計画したからこそ、上場を急ぐ必要があった、との説が有力だ。
両社は当初、電通の実力から判断し「1株100万円」という計算で資金調達を計画したといわれている。関係者の話をまとめると、共同は売り出し時点の放出株数6万3400株で634億円を、時事が2万3700株放出で237億円を調達できると踏んでいたフシがある。
しかしそれはやはり皮算用であった。「超優良株」といえども、株価低迷のあおりで公募・売り出し価格は42万円に抑えられ、実際の調達資金額は共同がおよそ266億円に、時事は100億円弱と、当初見込みを大幅に下回る水準となる可能性が高まった。
目先の資金計画上、両社の生命線ともいえた電通の新規上場ではあるものの、抑え込まれた売り出し価格が、今後両社の資金繰りに大きな狂いが生じるのは必至であろう。
両社関係者のため息は想像に難くない。
大株主だけなく、当事者である電通でも株式上場を急ぎたかった理由があるともささやかれている。電通は今年創業100周年という節目の年。しかも来年には新本社ビルの竣工が予定されている。一説には「上場、新本社竣工という2本立てで、就任9年目に突入した成田豊社長の花道に」(電通関係者)という思惑が強く働いているという。これが本当であれば、株価低迷でもどうしても上場させたい、といった利害が発行体、株主ともにここで一致する。
●期待と不安が拮抗する証券業界、マーケット
ビッグカンパニーの上場を控え、株式市場でも期待感と不安感が入り混じっている。
「今年の株式市場最大のイベント」(準大手証券)といわれ、市場に背を向ける個人投資家に対する宣伝効果は極めて大きいことは間違いない。しかし、一般的には株価低迷時における大型上場が市場に歪みをもたらす不安があることも確かだ。
通常、株価上昇時の優良株上場は、新たな個人投資家の参加が見込まれ、市場全体が活気づき好循環をうながす。ところが問題となるのは現在のような株価低迷時。この時期に大型案件があると、個人や機関投資家は他の銘柄を売却した代金で当該株式を購入するというポジション替えが頻繁に行われる。それだけに市場全体のバランスが崩れ、株価指数は悪化する危険性をはらんでいる。「電通株は市場の需給関係を悪化させる懸念もある」(大手証券)―。市場関係者は電通株が明と暗のどちらに転ぶか見通しが立たず、戦々恐々としている。
電通という「超大型新人」の登場には、一企業の単なるIPOにとどまらず、さまざまな利害や思惑が複雑に絡み合っている。師走を目前に控えた今月30日、注目の上場を果たす。
○URL
・電通
http://www.dentsu.co.jp/
・電通は「冬場の麦わら帽子」?〜小泉退陣なら株価躍進も
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200111/15/20011115110007_30.shtml
[井原一樹 2001/11/22 14:08]