投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 16 日 11:06:55:
ソニーがパソコンを中国で生産するようだ。日本企業で初めてパソコンを中国で生産、販売を自社で手掛けるという。中国のWTO加盟で、この動きはますます加速していくことになろう。そして、その動きの行く先は、グローバル企業の多国籍化の進展と日本の産業の空洞化ということに帰結する。高い税率、効率の悪いセクターの温存が、「勝てる企業」の日本脱出という合理的な行動を急がせることになりそうだ。
ところで、日本企業の財務健全性に対し、社債や貸出債権の信用リスクを売買するクレジットデリバティブ市場で、日本企業の債務不履行に備えた保険料率が急上昇しているという。例えば、ここ1年で富士銀行を対象とする料率が約0.5%上昇、新日鉄も約0.4%上昇したようだ。このレベルは、1998年後半に金融危機が深刻化した水準に近いという。
そのような状況で、4大メガバンクの時価総額が、今年5月7日から合計で約15兆円減少したようだ。不良債権処理問題を先送りした結果であり当然の市場現象と言えよう。本日は日銀の政策決定会合が終了する。何か出るとの思惑はあろうが、もはや今後日銀の打ち出す策は、「モルヒネ」であり、これ以上期待することは、モラルハザードを招くだけだろう。これを欲する市場は、麻薬中毒患者の禁断症状に酷似していると考える。
モルヒネに頼らない経済に向けて動くか。これは、銀行と政策当局の決断にかかっているが、もはや銀行もことここに至っては動くに動けないだろう。不動産バブル崩壊での不良債権処理を先送りし、その後のITバブル崩壊でニッチモサッチも行かない状況に陥っている可能性がある。株価はそれを如実に映している。PBR1倍割れ水準で解散価値を大幅に下回ったレベルまで叩き売られている状況は、営業時間終了間際の、生鮮食料品のような割引価格を想起させる。
日本は現状売りだ。ただし、世界レベルで勝てる日本企業は買いだ。日本の財政が破綻しても、残れる企業は積極的買える状況と割り切って見ておく必要がある。不良債権を抱えている企業は触れない。ましてや、不良債権となっている可能性のある企業も触るべきではなかろう。クレジットデリバティブ市場で、日本企業が金融危機当時のレベルとなっているのに、危機感が乏しいのは、日銀による過剰流動性というモルヒネが効いているだけのことだ。その点を考えれば、現状は、98年当時より危機感が乏しいだけ、よけいに始末が悪いと考えておきたい。