投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 8 月 23 日 13:15:40:
スタンダード＆プアーズは、日本の生保会社が保険契約者に対して保証している既保険契約の予定利率の引き下げを実施した場合、契約上の債務不履行であると解釈すべきとの見解を示した。
★ををっ、政府と生保業界の予定利率引下げ論議に外資の先制攻撃です！
スタンダード＆プアーズは、今後、生保会社が既保険契約の予定利率の引き下げを検討していると発表した場合、直ちに、その生保会社の保険財務力格付けおよびカウンターパーティ格付けを格下げの可能性ありとして「クレジット・ウォッチ」に掲載することを予定している。「クレジット・ウォッチ」掲載後、予定利率の引き下げが確実となった場合、スタンダード＆プアーズは、詳細情報を入手した上で、保険財務力格付けおよびカウンターパーティ格付けを「CCC」もしくはそれ以下のカテゴリーに格下げする。
最終的には、スタンダード＆プアーズは、既保険契約に対する引き下げ後の新予定利率の発効日をもって、既保険契約に対する債務不履行が発生したとみなし、カウンターパーティ格付けを「SD（選択的デフォルト）」に引き下げる。また、既保険契約に対する予定利率の引き下げと同時にその保険会社に関わるその他の債権者にも影響があり、その他の債務についても事実上の債務条件変更または債務不履行が生じた場合には、格付けを「D」に引き下げる可能性もある。さらに、生保会社が規制当局の監督下に置かれた場合には、スタンダード＆プアーズは、カウンターパーティ格付けを「SD」もしくは「D」とする一方で、保険財務力格付けを「R」に引き下げる。スタンダード＆プアーズは、債務条件変更もしくは既保険契約に対する予定利率引き下げ後の生保会社の債務履行能力の改善状況を織り込んだ上で、改めて保険財務力格付けとカウンターパーティ格付けを付与する予定である。
現時点では、日本政府は、経営困難な状況にある生保会社に対する支援策の一環として、既保険契約者に保証している予定利率の引き下げを検討中である。
低金利環境が続く中、大半の日本の生保会社は、実際の運用利回りが予定利率を下回る逆鞘の状況に陥っている。逆鞘に加え、運用力の弱さと国内株式市場の低迷もあり、昨年度だけで5社が経営破綻に陥った。短期的に低金利環境が変化する兆しもなく、財務の健全性が危ぶまれる生保会社が全くないわけではない中、政府の諮問機関である金融審議会は、さらなる生保会社の経営破綻回避のため、保険契約者の承諾を前提とした予定利率の引き下げを提言している。
同提言については様々な意見があり、保険業法の改正をも必要とされる事項であることから、同審議会は、最終的な結論を取りまとめるに当たり、8月31日を期限として民間からの意見を募っている。
しかし、たとえ既保険契約に対する予定利率の引き下げが、経営困難に直面している保険会社にとって経営再建の１つの選択肢として与えられたとしても、スタンダード＆プアーズは、実際にこの選択肢を実行する生保会社は極めて限られると考えている。
事実、金融審議会は、生保会社がこの選択肢を取る場合には、第一に保険会社が収支見通しを含む財務内容を完全に公開し、それにより、予定利率の引き下げ以外では債務超過を回避するのは不可能であることを示すよう提言している。さらに、同審議会の提言では、予定利率の引き下げは、あくまでも保険会社の包括的な財務再建計画の一部であるべきであり、既保険契約者のみならず、その他債権者にも負担が及ぶ可能性にも言及している。
スタンダード＆プアーズは、保険加入者の事前承認を予定利率引き下げの前提条件に盛り込むことは望ましいとする一方で、すべての保険加入者がその要請に応じることは現実的ではなく、逆に、既存の保険会社と保険契約者と間の保険契約が破棄されるリスクを懸念している。
以上の理由により、スタンダード＆プアーズは、既保険契約の予定利率の引き下げは、実質的に、生保会社による保険契約上の債務不履行に等しいみなすこととなる。
しかしながら、日本の生保会社の大部分が逆鞘の負担を負っているものの、その大半は、逆鞘をその他の収益（死差益および費差益）で十分埋め合わせ全体の収益を確保しており、財務状態は健全といえる。
例えば、業界最大手の日本生命は、昨年度末時点で約3,160億円の逆鞘を抱えていたが、その約3倍に相当するその他の収益で十分に逆鞘を相殺できている。従って、たとえ、既保険契約の予定利率引き下げが法的に可能となったとしても、実際に予定利率の引き下げに踏み切る生保会社はごく少数に限られるであろう。
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。