98年6月以前に日本がイタリアから輸入した肉骨粉に、狂牛病(牛海綿状脳症、BSE)の病原体・異常プリオンの感染力を失わせる加圧処理が行なわれていなかったことが13日、明らかになった。農水省がイタリア政府の回答を公表した。「加圧処理していた」とするこれまでの見解を全面撤回する内容で、95年から98年6月までの間に計606トン輸入された同国産の肉骨粉がBSEの有力な感染源として浮上した。
日本とイタリアの間では95年3月、異常プリオンの感染性を失わせるため肉骨粉を「136度30分3気圧」という条件で処理することが決まった。しかし、昨年10月、農水省が職員をイタリアに派遣して調査した結果、この条件を満たす加圧器が98年6月まで肉骨粉製造工場に設置されていなかったことが分かり、同省は「同月以前は加圧条件が満たされていなかった可能性がある」と発表していた。
イタリア政府は「98年6月以前の肉骨粉についても3気圧の加圧処理が実施されていた」と説明していたが、根拠が示されていなかったため、農水省が改めて問い合わせていた。
今回の回答は今月9日に届いた。一転して加圧処理していなかったことを認める内容で、肉骨粉に添付されていた加熱・加圧処理が行なわれたことを示す輸出検査証明書も、虚偽であった可能性が強まった。このため、農水省は証明書の記載内容についても、さらにイタリア政府に問い合わせている。
同省によると、日本に輸入された肉骨粉を製造していたイタリアの工場は1カ所だけ。この工場からは95年以後98年6月までの間だけでも丸紅、三菱商事など5社が計606トンの肉骨粉を輸入している。輸入業者は魚の餌やペットフードに加工したと回答しているが、最終的にどこに流れたか不明な肉骨粉もある。
【高橋龍介】
[毎日新聞2月13日] ( 2002-02-13-20:03 )