(回答先: 【大間違いの経済理論】 “超低金利政策”はデフレを悪化させる 《金利引き上げがインフレを誘発し「デフレ不況」から脱却するための一つ方法》 投稿者 あっしら 日時 2002 年 3 月 16 日 00:22:32)
2chの「★阿修羅♪ 国家破産について語ろう」というスレッドで、オリジナルの書き込みが取り上げられていたので、補足説明を書き込みました。
その内容を再掲します。
>金利引き上げたら国債持ってる銀行とかヤバくない?
ただでさえ、不良債権を抱えるとともに「デフレ不況」のために貸出先も限定されている銀行は、金利が上昇することで保有既発債の評価損が生じて、ヤバくなります。
公定歩合が2%になれば、長期国債の利率は、およそ3.6%になると思われますから、利率1.4%程度の現在保有している長期国債の評価は、現在価値の78%になるでしょう。
長期国債を80兆円保有していれば、評価額が62.4兆円となり、17.6兆円の評価損が発生します。このようなことから、現在の公定歩合0.5%を一気に2.0%に引き上げるのではなく、様子を見ながら0.25%刻みで引き上げます。
そして、「デフレ不況」対策のための突然の政策変更ですから、国債保有に伴う評価損でヤバくなった銀行には、国有化につながらない優先株で資金注入を行います。
(このまま「デフレ不況」が進めば、不良債権がますます増え、「大手銀行救済」を第一義的に考えている政府は、厖大な公的資金を投入せざるを得ません。そして、それでも、問題は解決できません)
現在、財務省は、このような意図的な金利上昇ではなく、“不測”(国債の需給バランスが崩れること)の金利上昇に備え、銀行の保有国債をできるだけ短期のものに変えようとしています。これが進めば、長期金利が上昇したときに必要な銀行への公的資金注入は低く抑えられることになります。(超金融緩和状態は公定歩合を上げても変更する必要はありませんから、“不況下”で他にはなかなかない短期かつ安全な投資先である短期国債の利率はそれほど上昇しないと思われます)
国債の評価損がカバーしてもらえるのなら、貸し出し先が拡大し貸し出し実質利率も上昇する「デフレ不況」から脱却できる金利政策の変更は、銀行にとっても有利なものです。
銀行の経営が現在苦境に陥っている最大の要因は、既存の不良債権ではなく、最大の収益源である貸し出しができないことにあります。(銀行は、今、新たに貸し出しを行えば、新たな不良債権を生み出すという危惧を持っているからです)
“不測”の事態でインフレが発生すれば、銀行も大損を被り、インフレの制御もできなくなります。社会政策のために否応なく国債を大量の発行しなければならなくなり、ハイパーインフレになります。その後で、「新円切替」という荒療治になるでしょう。
このまま「デフレ不況」が進めば、5,6年で必ずそうなります。
「デフレ」は、一日でも早く手を打ったほうが脱却しやすいし、遅れれば遅れるほど脱却が難しくなり、“不測”による脱却であればとんでも災厄をもたらすことになります。
>金利引き上げたかったら、インフレにするのが先だろ…
「インフレにする」ことがいかに大変なことなのかは、この5年ほど“デフレ解消”を叫びながら実現できていないことでもわかると思います。
インフレにしたいとかインフレターゲット政策を実施すると言っても、インフレにはなりません。
また、日銀が、じゃんじゃん日銀券を印刷し、商業銀行にどんどん貸し出しをしたからといってインフレになるわけではありません。
これは既に現状に近いもので、日銀と商業銀行の間に日銀券が貯まるだけになります。
企業も、需要拡大が見えないのに、生産設備を増強するために借り入れを行うことはありません。表面金利は低くても実質金利は高く、デフレが進むということは、実質金利がより高くなることなので、借り入れは危険な経済行為です。
(政府が国債を発行してお金を国民にばらまいても、一時的な消費拡大にはつながりますが、インフレになるかどうかはわかりません。このような手法で持続的なインフレにしたければ、政府がばらまきを続けなければならないことになり、それを行えば、財政が破綻し、通貨の信認性が失われることになります)
本当は、経団連などが音頭をとって、上場企業が個別利益志向を乗り越え大幅ベースアップを行えば、デフレを解消する近道になるのですが、個別利益にしがみつく人たちなのでそうはしないだろうということで代替として「金利上昇政策と所得税制変更のミックス」を提起したわけです。
(給与が高くなれば、金利上昇と同じようにコストアップになりますから、製品価格は上げざるを得ません。経団連の音頭ですから、みんなが製品価格を上げるでしょう。そして、製品価格が上がっても給与も上がっているので、需要はちゃんとあります。中国製品と言っても、中国企業が日本で商売しているわけではなく、日本企業が輸入して販売しているので、日本の製造コストが上がっても今のところは問題ありません。中国から輸入して販売している製品は、全般の価格上昇のおかげでより多くの利益が得られるということです。流動性不足のためにベースアップできない企業については、経営内容を精査して存続が可能と判断されれば、ベースアップ分についてのみ政府保証で融資を受けられるようにします。このような政策も、中国企業が自前で日本市場向けの商売をするようになってからでは遅きに失することになります)