モルオの巣穴の近くには、不良債権で有名な巨大スーパーD
がある。周辺地域には合計4店のスーパがしのぎを削っている。巣穴から歩いてすぐの所に、個人経営の二件のコンビ二店が常連客を相手に商売している。それら以外には見るべきものもなく、寂れた都会の過疎地となっている。20年ほど前には、A 商店街として繁盛していたが、スーパーの進出とともに客足が遠のき、零細の個人商店は次々と店じまいしていった。初めはD落とした安売用品をそこそこの価格で販売している。昨秋のある日、近くの個人商店への足を伸ばし、モルオはエサ探しに出て行った。Dス−パーには安価で品質の良いエサが少ないからである。スーパーDの果物売り場では、1個100モルコドルの柿を見つけていた。しかし、巣穴の子モルモットと母さんモルコと自分の分を買うと500モルコドルの出費になる。子モルモットに食べさせてやりたいと切に思ったが。店をでて、近くの80歳すぎの老ウサギの経営する店を覗いてみた。驚いたことに、同じ柿が5個150モルコドルで売られていた。モルオは老ウサギに感謝し、5個の柿をお土産に巣穴へと帰て行った。モルオは価格差の原因について考えてみた。老ウサギの古い店の中は暗く、品物は雑に積み重ねてあり、お世辞にもきれいなものではない。店も自分の住居を兼ねていて、軒先で営んでいる。品物の値段が安い理由は、賃貸料と人件費がかかっていないのである。Dスーパーの店内は明るい照明があり、販売員がついていた。店の高い賃貸料と従業員の給料、さらに銀行からの金利を含めた借入金の返済分を加えた価格はずいぶんと高くなってしまうのだ。モルモットは老ウサギの個人商店の持つ実力を知った。品揃えは少ないが、柿、りんご、バナナ、イチゴ、みかんなどの少品目に限れば、巨大スーパーに勝てるのである。大資本優先の資本主義社会となってしまった昨今のモルモット国のある地方都市でのことである。デフレ経済下の時代は、コストがかからない個人商店の時代になるのである.巨大恐竜が環境変化に適応できず、滅んでいったが、次の時代を担う小動物の時代がやってきたのだ。