投稿者 FP親衛隊國家保安本部 日時 2000 年 8 月 16 日 13:04:36:
東京・神田のニコライ堂に名を残し、幕末、明治期の日本でロシア正教の普及に務めた大主教ニコライ(一八三六〜一九一二)の日記が翻訳され、「宣教師ニコライの日記抄」として、北海道大学図書刊行会から出版された。日露戦争を巡って苦悩する姿や、当時の知識人らとの交流などもわかり、貴重な史料として注目される。
翻訳したのは、中村健之介・大妻女子大教授(比較文化・ロシア文学)ら四人。ニコライ日記は一九二三年の関東大震災で焼失したとされていたが、同教授が、北大助教授時代の一九七九年、当時のソ連古文書館で原本を発見。九四年、ロシア語版を同会が出版した。
日記には、日本初の女性洋画家の山下りんを始め三百人近くの日本国内の信者の名前も出ている。
翻訳された日記は、一八七〇年から一九一一年にかけての部分の約一割。日露戦争(一九〇四〜五年)について、「私の愛する日本人たちは勝利を祝っている。だが、今は彼らと一緒になれない」(一九〇四年四月十八日)、「戦争のことが頭から離れぬ。愛国心もまた自然な感情なのだ」(同八月十七日)などと記している。
また、ドイツ系ロシア人として東京帝国大学で夏目漱石らに哲学を教えたラファエル・ケーベル博士との交流や、ロシアに一時帰国して会ったドストエフスキーとのエピソードも紹介している。
中村教授は「日記は当時の生きた情報を伝えてくれる。今後は全訳刊行を目指したい」と話している。五百八十五ページ、本体価格六千五百円。