Tweet |
沖縄本島中部にある米軍払い下げ品取扱業者の物資置き場に「劣化ウラニウム」と書かれた米軍25ミリ機関砲弾の薬きょうが数百発以上放置されていることが琉球新報社の調べで分かった。薬きょうは1995年末から96年の初めにかけ、米海兵隊のAV8Bハリアー攻撃機が鳥島射爆撃場に誤射した1520発の劣化ウラン弾と同種類の物。業者は数年前に米軍キャンプ・キンザーの米国防再利用売却事務所(DRMO)から鉄くずとして購入したと話しており、誤射した劣化ウラン弾の薬きょうが流出した可能性が出ている。在沖米海兵隊報道部は「事実確認を急ぎたい」と話している。
放置されていた薬きょうは胴体の部分に「DEPLETED URANIUM(劣化ウラニウム)」、25ミリ機関砲弾を示す「25MM」の記述が見られる。野外に長期間放置されたためか、表面は一部がさびている。薬きょうはドラム缶の中に詰められており、数百発以上に上る。
科学技術庁の「劣化ウラン含有弾の誤使用問題に関する環境調査の結果について」(97年6月)と題する報告書によれば、ハリアー機が鳥島に誤射した劣化ウラン弾は25ミリ徹甲焼い弾で、弾頭は直径25ミリ、全長223ミリ、薬きょう部分の直径は38ミリ、長さ137ミリとなっている。発見された薬きょうは報告書に記述された寸法とすべて一致している。
航空・軍事評論家の青木謙知氏は「劣化ウラン弾は25ミリをハリアー機が、30ミリはA10サンダーボルト攻撃機が使用している。薬きょうに劣化ウラニウム、25MMと書かれており、間違いなくハリアー機の劣化ウラン弾だ」としている。
米軍側は誤射事件発覚後、鳥島に撃ち込んだ劣化ウラン弾の弾頭の回収作業を現地で実施してきたが、薬きょうの処理については言及していなかった。外務省の日米地位協定室では「劣化ウラン弾の薬きょうをどのように処理したかについては把握していない。米軍から説明を受けていなかったので、事実関係を照会したい」としている。
米軍は鳥島で劣化ウラン弾が使用されたことについて、配布支給制限の表示が欠落し、誤って海兵隊に支給されたことを理由に挙げている。このため在日米軍は通常、日本国内の演習場では劣化ウラン弾を使用していないとの立場を取っており、今回の薬きょうは鳥島で使用されたウラン弾の可能性が出ている。
・・・・・・・・・・
劣化ウラン弾
戦車などの装甲を破壊するため、米国が開発した弾丸。ウランの廃棄物を砲弾の弾芯(しん)に用いることにより破壊・貫通力が格段に増し、コストも安いことから、国際紛争で多く使われている。日本では1997年、在日米軍機が過去に鳥島の射爆場での訓練中に劣化ウラン弾を「誤射」したことが明らかになり、政治問題化した。
汚染の可能性十分/専門家ら、放射能測定必要と指摘
「市場に出回るなんてとんでもない」「米軍がずさんで無神経な取り扱いをしている証拠だ」―。民間地で大量の劣化ウラン弾の薬きょうが見つかったことで、県、専門家や研究家からは米軍のずさんな管理体制を批判する声が相次いだ。
劣化ウラン弾の使用を国際条約で禁止しようと活動している、劣化ウラン研究会の山崎久隆氏は人体への影響について「ほとんど影響はない」としながらも「薬きょうであっても、放射能に汚染されている可能性は十分にあり、核のごみとして密封管理が原則。米軍の重大な過失であり、第三機関による発見された場所の放射能汚染測定する必要がある」と指摘した。
劣化ウラン弾の芯(しん)は放射能の汚染を防ぐため、アルミニウムで覆われている。しかしながら発射の際、火薬の勢いでアルミニウムが削られ、劣化ウランの微粉末が薬きょうに付着する可能性や弾芯の下部から発射ガスとともに微粉末が薬きょうに流れる可能性があり、薬きょうの放射能汚染は十分に考えられるという。
また山崎氏は「米軍は薬きょうの放射能測定を行っているのか。汚染がないという前提で市場に出したのか」と米軍の対応を疑問視。「測定をしないで市場に出したのなら、結果的に汚染がないとしても、管理義務違反になり、米軍の重大な過失で故意の事実隠ぺいに当たる」と強く米軍を批判した。
山田義人県基地対策室長は「もし事実ならば、由々しき事態だ」と驚き、「鳥島で誤射された劣化ウラン弾は極めて慎重な回収が行われている。県民に劣化ウラン弾に対する根強い不安感が残る中で、薬きょうといえども民間地域にあるのは非常に問題があるのではないか」と話し、事実確認を行う意向を示した。
太平洋軍備撤廃運動(PCDS)国際コーディネーターの梅林宏道氏は「鳥島で使用されたものかもしれないが、ほかの訓練で使用された可能性も捨て切れない。劣化ウラン弾の薬きょうが、こうした形で外に出ているのは、米軍がずさんで無神経な取り扱いをしている証拠」と米軍の管理の不備を批判した。
人体への影響について航空・軍事評論家の青木謙知氏は「薬きょうにも微量のウラニウム汚染があるはずだ。しかし自然界の放射線量と比較しても許容範囲だろう」と話していた。