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思いやり予算の源流に/沖縄返還の「裏負担」
我部政明琉球大学教授が入手した沖縄返還に関するアメリカの秘密指定解除公文書は、基地施設改善移転費の物品・役務負担と基地従業員の労務管理費の肩代わりにより、日本政府が計7500ac万ドルを裏負担していた事実を明らかにした。使途が不明な政府の秘密負担枠は約2億ドルに上る。公文書は(1)陸軍省の「琉球諸島の民政史ファイル」の中の(1)返還協定調印一週間後のマイヤー駐日大使が国務省に提出した「沖縄返還書類つづり」(2)国防総省・陸軍省が同年10月の米上院外交委沖縄返還協定聴聞会の直前に作成した「想定問答集」。ポイントをまとめた。
我部教授は「基地移設改善費の6500万ドルと労務管理費1000万ドルは日米地位協定上、日本の負担義務はない。今の思いやり予算の源流だ」と指摘している。
【返還土地の原状回復補償費400万ドルの日本政府による肩代わり】
沖縄返還書類つづりの第八項。スナイダー駐日米公使と吉野文六外務省アメリカ局長=いずれも当時=の議事要旨として収録。沖縄返還協定で、米側が支払うはずの返還土地の原状回復補償費400万ドルについて、吉野局長が「返還協定第七条に基づいて支出する3億2000万ドルのうち、400万ドルを(外国政府からの資金を国務長官権限で支出できる)米信託統治基金の設立のため確保する」と発言。
【基地移設改善移転費などの秘密枠をつくる】
想定問答集の添付資料「沖縄返還財政取り決め」による財政措置は四項目が軸。
(1)日本政府の3億2000万ドルの現金支払い中、400万ドルの原状回復補償費のほか、海外向け短波放送「アメリカの声(VOA)」の移設費1600万ドルの日本側負担の密約を「返還書類つづり」第十項が記している。
(2)通貨切り替えで日銀に集中する6000万ドルを無利子で米中央銀行に25年間預け、1億1200万ドル相当の利益を米側に与える。
(3)日本政府が基地施設改善移転費6500万ドルを物品・役務で負担する。
(4)返還に伴う基地従業員の労務管理費1000万ドルは日本政府が肩代わりする。
公文書は米側の説明資料
吉野文六・元外務省アメリカ局長の話 返還協定で日本側の負担額は明記されているが、細かい内訳の数字までは覚えていない。しかし、「外務省公電漏えい事件」で裁判所は、外交に機密が存在することを認めており、すでにこれは決着した話ではないのか。(密約があったとされる公文書は)米側の説明資料であり、このような文書は日本側にはないだろう。