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ハンバーグや焼き肉をふたのない鉄板で焼いた場合、肉の中の病原性大腸菌O157が生き残る場合があることが、東京都立衛生研究所の調理実験で分かり、30日、札幌市での日本細菌学会で発表する。厚生省は従来、摂氏75度で1分間加熱すれば菌は死滅すると指導してきたが、実験ではハンバーグの中心温度が75度に達しても生き残った。ふたをして焼くと完全に死滅したため、研究グループは「ハンバーグを焼く場合はできるだけ、ふたをする努力を」と呼びかけている。
小西典子研究員と甲斐明美主任研究員らの研究グループはハンバーグをホットプレートに乗せ、肉1グラムあたり26万個の大腸菌を接種した後、ふたをしないで9分間焼いた。中心温度は焼き始めから5分で75度、焼き上がりでは97度だった。
ハンバーグ全体のO157は75度に達した1分後で1万3000個、焼き上がっても数個から数十個が残った。過去に10個程度の菌で人間が発病した例もあり、完全に死滅させないと予防効果がない。これに対し、ふたをして途中で裏返して片面3分ずつ焼くと菌は全く残らなかった。
焼き肉の実験では、肉片10切れに菌を1グラムあたり1400個付けてホットプレートに乗せ、2度裏返して、2分10秒間焼いた。焼き上がり後、10切れ中3切れの肉片から、数個から数十個の菌が検出された。ふたをしての焼き肉はほとんどないため、ふた付きの実験は行わなかった。
O157が生き残った理由について、甲斐さんは「ふたがないと、ハンバーグの表面温度が75度まで上がりきらないようだ。焼き肉の場合は、焼く途中で丸まったりし、加熱むらができる影響ではないか」と説明している。
ふたをする習慣のない焼き肉対策として、研究グループは「焼く直前まで肉を冷蔵庫に保存して菌を増やさないことが大切。そして生肉に触ったハシで食べないよう注意して」と話している。 【高木 昭午】
[毎日新聞5月29日] ( 2000-05-29-01:12 )