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http://www.jrcl.org/liber/l1620.htm
第1620号(2000年5月22日)
神戸事件 写真三枚をコッソリスリカエ
「A少年=犯人」説破綻のボロ隠しにおおわらわの
朝日新聞社発刊『暗い森』文庫版
神戸小学生殺傷事件を取り上げた朝日新聞社発刊の『暗い森』の文庫版が三月
一日に出版された。一九九八年四月に出版された単行本『暗い森』(まったく売
れなかったと言われている)を、朝日新聞社は、約二年後に文庫版として出版し
た。その際に朝日新聞社は、なんと、単行本に掲載された三点の写真を、なんの
注釈もなくコッソリとさし替えたのだ。このことは、神戸事件「A少年=犯人」
ストーリーの破綻をなんとかとりつくろうための、苦しまぎれのゴマカシにほか
ならないのである。
「ショックハンマー」 が消された
『暗い森』文庫版においては、単行本にあった次の三点の写真が、なんの注釈
もなくコッソリとさし替えられている。
第一は、単行本では「一連の(通り魔)事件に使用されたものと同種のショッ
クハンマーと金槌」などとして掲載されていたハンマーと金槌の写真を、文庫版
においては金槌のみにし「ショックハンマー」を写真から削除していることであ
る。(写真@)
一九九七年二月の「通り魔事件」の凶器は、警察による「発表」では「ショッ
クハンマー」とされていたのであった。そして、この「ショックハンマー」は、
警察発表では犯行現場近くの「コープリビングセンター」でA少年が万引きした
ものとされていたのである。このような、警察権力がつくりあげ発表した筋書き
を、そのまま鵜呑みにし、サモサモらしく宣伝してきたのが「朝日」の『暗い
森』(旧版)であった。
だが、そもそも「ショックハンマー」なるものは存在せず、「ショックレスハ
ンマー」なら存在する。そして単行本の写真に写っているのは「ショックレスハ
ンマー」である。「ショックレスハンマー」はその名のとおり対象にキズをつけ
ないように叩くためのもので、金槌の周囲をウレタンで覆ったものだ。しかし、
かの「コープリビングセンター」には事件当時「ショックレスハンマー」は販売
されてはいなかったという決定的事実が暴露された(「神戸事件の真相を究明す
る会」発行の『神戸小学生惨殺事件の真相・第三集』)。したがって、「凶器=
A少年が万引きしたショックハンマー」などという筋書きが警察・検察権力によ
る作り話であることが明らかにされたのであった。そこで、朝日新聞社は、単行
本の当の写真を、文庫版の発刊にあたってこっそりと「ショックハンマー」を削
除したものにとり替えたわけなのだ。
「クリ小刀」 が縮んだ?
第二は、A少年が「普段持ち歩いていたものと同種のクリ小刀」として掲載さ
れていた写真が文庫版では別のものに換えられている。(写真A)しかも「クリ
小刀」の長さが二五センチから二〇センチのものへとすり替えられているという
ことである。
そもそもA少年の逮捕直後から警察権力は、あたかもA少年が女児を刃物で殺
害したりする凶暴性をもっているかのようにキャンペーンするためにA少年は
「二五センチ」の「クリ小刀」を普段持ち歩いていた、などとマスコミに流して
いたのであった。このような警察権力のデマ情報をなんの検証もなく鵜呑みに
し、いやそもそも警察権力の意を受けて、A少年を神戸事件の犯人として印象づ
けるために、悪意に満ち満ちた報道をしてきたのが「朝日新聞」であった。
けれども、二五センチもの長さのクリ小刀をA少年がいつもジーンズのポケッ
トに入れていたなどということ自体がまったく不自然な作り話であることを「神
戸事件の真相を究明する会」発行のパンフによって暴きだされたがゆえに、警察
権力自身が後に「二〇センチ」へと修正しつじつま合わせをしたのであった。そ
して、「朝日」もこれに追随し、そのまま「クリ小刀の長さは二〇センチ」と報
じたのである。こうして単行本『暗い森』の本文ではクリ小刀の長さは二〇セン
チと記述された。ところが、同書の写真説明では、当初の警察発表どおりの二五
センチととなっており、同じ本の中でまったく矛盾した記述になってしまってい
たのだ。
矛盾だらけの警察発表になんの疑問もなく依拠し追随し、そして意図的にこれ
をタレ流してきたことについてのなんらの反省もなく、わが「朝日」の編集部は
新たな文庫版においては、結果的なつじつまを合わせるためにのみその「クリ小
刀」の写真を、長さ二〇センチの別のものにさし替えたというわけなのだ。
見通しの良いアンテナ基地が「暗い森」の中に
さらに第三には、「アンテナ基地」の写真も別のものにとり替えられている。
(写真B)
この「アンテナ基地」においてA少年は「児童を殺害」し「首を切断した」、
とされたのであった。だが、一体この場所のどこで、どのように、何を使って
「殺害」し、そしてどのようにアンテナ基地内に入り、どのようにして首を切断
したのか。A少年の「供述」としてつくりあげられた警察・検察のストーリー
が、「殺害現場」とされた「アンテナ基地」の状況とことごとく矛盾することが
暴きだされたのであった〔本紙第一五〇八号、九八年三月二日付〕。
一見して明らかなように、単行本の写真は、「A少年が児童を殺害し死体を隠
した」とされる局舎やその床下が周囲からまる見えであったということをしめし
ているものであった。このゆえに、A少年が「隠した遺体」が児童を捜していた
警察や住民にまるまる三日間も見つかることなく一連の犯行がおこなわれた、な
どということ自体がまったくの作り話であるということを、それはしめしてい
た。
さすがに「朝日」はこのことに危機感をもったにちがいない。この写真を、文
庫版においては、アンテナ基地が薄暗く鬱蒼(うっそう)とした森に包まれたと
ころであるかのような遠景の写真にさし替え、しかも?捜査?する警察官が写って
いる写真へとすり替えているのである。
わが闘いに追いつめられた「日本のVOA」
このような掲載した写真のさし替えは、もちろん、ジャーナリストとしての良
心のひとかけらでもありさえするならば決してなしえないものである。警察権力
の発表やリーク情報をただただオウム返しにするだけでなく、警察が発表したス
トーリーが、わが同盟の闘いや、それに触発された人士の奮闘によってそのデタ
ラメさを暴きだされるや、露わにされた矛盾点を逆にとり繕い、あくまでも「A
少年=犯人」説を流布してきた「朝日新聞」。まさに「日本のVOA」
と呼ばれ
るその腐敗と悪質さが、写真のさし替えというかたちで改めて露わになったので
ある。
わが同盟がすでに明らかにしてきたように〔本紙第一五一四号〕、そもそも単
行本『暗い森』――もともと「朝日新聞」に連載されたシリーズを本にしたも
の――は、警察からA君の諸々の調書をひそかにもらいうけた朝日新聞社が、そ
れをもとにして作りあげたものだったのだ。だからこそ、警察がA君逮捕前後に
ねつ造し、逮捕直後から発表していた「A少年犯行」ストーリーにもとづく記述
や写真が、そこには載せられていたのだった。だが、わが同盟の闘いや、それに
触発された良心的人士の奮闘によって、警察が発表した「A君=犯人」ストー
リーのデタラメさが次々と暴きだされ、警察権力は、当初発表した「A君=犯
人」ストーリーの破綻のぼろかくしに大童になってきたのである。まさしくこの
ことこそが、『暗い森』の文庫版発刊にさいして朝日新聞社がコッソリと写真を
さし替えなければならなかった理由にほかならない。
こんにちブルジョア・マスコミは、「警察の不祥事」を大々的に報じている。
だが、九七年の神戸事件において、ブルジョア・マスコミ、とりわけ「朝日」
は、警察権力の組織的犯罪行為を先頭になって隠蔽しこれを補完していく役割を
演じてきたのではなかったか。このようなマスコミの警察権力への屈従・ゆ着こ
そが、警察の腐敗・犯罪を助長させてきたのではないのか。神戸事件に端的にし
めされたように、現在のマスコミは、政界、財界、官界、労働界、学界ととも
に、ネオ・ファシズム支配体制を支える「鉄の六角錐」の一角にガッチリとくみ
こまれているのではないのか。警察の犯罪に手を貸してきたことへの一片の反省
もなく、イケシャアシャアと「警察の不祥事」なるものを大々的に報道している
ことほど、ハレンチなことはないではないか。
『暗い森』文庫版の発刊こそ、権力とゆ着する「朝日新聞」の腐敗と犯罪性を
あらためて労働者・人民のまえにさらすものにほかならないのである。