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内外タイムス2000年5月9日
紙上再現緊急リレートーク 「私はなぜ石原発言に怒るのか」
石原慎太郎東京都知事の「三国人」「治安出勤」発言をこのままあいまいに終わらせ
てはいけないと、去る4月30日、都内で「緊急リレートーク『万国人』が大騒ぎ〜
私はなぜ石原発言に怒るのか〜」が開かれ、内外の文化人・知識人19人が思いの丈
を語った。その中からジャーナリストの本多勝一氏と、ルポライターの鎌田慧(さと
し)氏の2人の発言(抜粋)を再現する。
ジャーナリスト本多勝一氏
石原慎太郎という人物が、どういう基本的性格を持った男かということを知っていれ
ば、今回のこと(「三国人」発言)はまったく当たり前だと思うだろう。
彼の基本的性格を一言で言うと、「卑劣さ」。それから「小心」。「うそつき」。こ
の3つをこねて団子にしたようなものだ。
直接私が関係した具体例を挙げると、例えばアメリカの雑誌の「プレイボーイ」とい
う月刊誌で、彼は「南京大虐殺はなかった」と全否定して相当問題になった。そこで
彼はその後、かねてから石原氏を応援している「文藝春秋」という雑誌でも同じこと
を書いたのだが、これを全否定じゃなくて、部分否定に黙ってすり替えてしまった。
全否定はまずいと。分かって黙ってすり替えた、その卑劣さ。
もうひとつ例を挙げると、ベトナム戦争。そのころ彼は、最前線に行けばまだしも、
米軍の陣地へ行って、大砲を撃とうとした。解放軍のいる所へ向かって。そこへたま
たま写真家の石川文洋さんがいて、それをしかった。「それをやったらあなたは、
どっちの側の人間になるのか」と言ってね。
なぜ、こういう基本的性格の男がでかい顔して都知事になれたのか。この下手な小説
家の唯一の才能が「機を見るに敏」なことだからだ。
彼もまだ初期のころは進歩的若手文学者だった。それが文学ではダメだと分かって自
民党政治家に転身した。そして世の中がだんだん右傾化してくると、それを先取りし
て、青嵐会という右翼グループをつくる。さらに〃機を見て〃25年前の都知事選に
出た。
もっとも最近の「機を見るに敏の才能」は、去年の都知事選で発揮された。彼がやっ
たことは「漁夫の利作戦」。つまり、大勢出ているのを見て、締め切りぎりぎりで立
候補した。いま出れば漁夫の利を得れるぞ、と。それでわずか有権者の17%の支持
で当選したわけだ。私は彼を「矮小ヒトラー」と言っているが、その彼が一部に人気
があるのはどういうわけかと言うと、今の社会情勢に非常に問題がある。
ヒトラーが出てきた当時のドイツは、借金経済、インフレの下で、無能な内閣で、右
翼と左翼に分かれていく。今の状況と似てるところがある。日本はひどい法律が次々
と去年、国会で通ってしまった。それに対しマスコミが全然、暴走の歯止め役を果た
さない。そういう中で、今度の「三国人発言」というのは出てきた。
初期のヒトラーとよく似ている。初期のヒトラーは大資本批判をやり、ユダヤ人攻撃
をやった。石原氏もまた大銀行に対する不満が多いのを利用して銀行批判をやる。石
原氏自身は矮小な人間だけれども、社会状況としては警戒が必要だ。けっして油断は
できない。