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東京株式市場の平均株価が下げ止まらない。19日には1万7000円を割り込み、年初来安値を更新した。2万円台の年初来高値にあった株価が下げ始めたのは、森喜朗首相の就任直後。6月25日の総選挙が確実な情勢となっているが、森首相の相次ぐスキャンダル・失言で、自民党の苦戦は必至。総選挙後に政局が流動化すれば、株価への影響は避けられない。市場では「森疫病神説」が噴出しているのだ。
4月1日深夜に小渕恵三前首相が緊急入院し、5日には森新政権が発足した。当時、平均株価は2万円台を確保し、12日には年初来高値となる2万0833円21銭を付けた。
もっとも、市場は「政策皆無の経済音痴なうえ、女房役の官房長官まで小渕内閣から居抜きで引き継いだ傀儡(かいらい)政権。余計なことはせずに、小渕前首相の経済再生路線を踏襲してくれればいい」(大手証券幹部)と、新政権など相手にしていなかったのが実情だった。
だが、14日の米株式市場でダウ平均、ナスダック(店頭市場)総合指数が史上最大の大暴落を演じ、これを受けた週明け17日の東京市場も平均株価が1426円の史上5番目の下げを記録した。
これで、新政権が描いていた「小渕前首相への同情と株価2万円で、総選挙は楽勝」との構想がにわかに怪しくなってくる。あわてた自民党の亀井静香政調会長が1兆円の公的資金による株価維持策(PKO)をぶち上げたが、かえって市場の信用を失い、株価はズルズルと下げ続ける。
大型連休前の28日に1万8000円を割り込んでしまい、5月11日には今年2番目の下げ幅となる819円安となり、昨年9月以来の1万7000円割れ。さらに、16日には米国で0.5%の利上げが実施され、17日から3日続落し、19日に1万6858円17銭まで下げ、年初来安値を更新した。
準大手証券のアナリストが語る。
「株価低迷の最大の原因は、利上げ観測に伴う米国株の先行き不安。4月24日に日本経済新聞が平均株価の構成銘柄を一度に30も入れ替えたことも尾を引いた。新規採用された銘柄は情報通信関連の株価の高い値ガサ株が中心。ただでさえ値動きが激しいのに、ネットバブルの崩壊で株価が急落し、これまで以上に平均株価を押し下げる結果になった」
この間、新政権は株価どころではなかった。青木幹雄官房長官の首相臨時代理への就任をめぐる疑惑が次々に噴出。さらに、月刊誌で報じられた森首相の買春疑惑などスキャンダルも露見。極め付けが、15日のパーティーでの森首相の「神の国」失言。
内閣支持率は株価と足並みをそろえるかのように下降の一途。発足当初は40%近くあったが、わずか1カ月で軒並み30%台前半に暴落した。
「当初の楽勝ムードのままなら、解散・総選挙は株価を動かす材料にはならなかった。しかし、自民党惨敗、政局流動化の可能性が出てきた現状では投資家はさらに慎重にならざるを得ず、下げ足を速めることになりかねない」(アナリスト)
実際、前兆はすでに現れている。外国人投資家が東京市場から避難し始めているのだ。
5月第2週の投資家別売買動向(東京、大阪、名古屋一部、二部合計)によると、外国人の売却額は今年2番目の約2兆円に上り、売りと買いを差し引いた金額は約5000億円の売り越しとなり、ほぼ10年ぶりの高水準を記録した。
東証関係者は「米国株の急落で損を出した外国人投資家が、日本株の現金化を迫られたことが主因。しかし、外国人は政局不安に極めて敏感で、総選挙後をにらみ、日本株売りを急いでいるとの側面もある」と明かす。
「森政権には何も期待しないから、せめて足を引っ張らないでくれ」というのが、市場関係者の切実な願いだろう。