Tweet |
誰がキム氏を殺したか?
下記の記事のように、「軍属と従軍慰安婦を研究テーマにしている在日朝鮮人問題の研究家」である金英達氏が変死した。
この死に方からして、他殺の可能性が高い。
この事件は、40年前の浅沼稲二郎社会党委員長刺殺事件や、「風流夢譚」事件を連想させる。
(「風流夢譚」事件とは、中央公論社から出ていた雑誌『思想の科学』に、「革命が起きて天皇が斬首される夢をみた」という記述をふくむ小説「風流夢譚」が掲載されたのがきっかけで、右翼少年が同社重役宅を襲撃し、居合わせた女中さんを刺殺した事件である。)
浅沼刺殺事件も、「風流夢譚」事件も、戦後史に残る重大な右翼テロ事件だったが、いずれも十代の右翼かぶれの馬鹿少年が、逸る心でやらかした殺傷沙汰であった。
(現代なら、小林よしのりの漫画に感化されて防衛医大ジャックをした厨房ってとこか。)
今回の変死事件が他殺だったとすれば、身内の犯罪・物取り犯罪・色恋沙汰の果ての殺人などのありふれた原因も考えられるだろうが、キム氏の活動を考えると、右翼勢力のテロの標的になった可能性も高い。
北朝鮮救援活動をしていた以上は、何らかの国際的政治勢力――たとえば韓国・北朝鮮・米国・ロシアなどの政治工作員――による政治的暗殺という可能性も考えられるが、キム氏を殺害したところで政治的な利益は考えにくい情勢になっているので、こうしたスパイ小説もどきのシナリオも荒唐無稽といえるだろう。
もっとも蓋然性が高いのは日本国内の、北朝鮮に反感をもつ右翼勢力ないし、その周辺の人間によるテロリズムである。
犯罪に熟達したプロの右翼テロリストまたは、それにつながるヤクザの可能性もあるが、下手人は、そうした“大人”にたぶらかされた馬鹿少年の可能性をまず疑うのが、浅沼刺殺事件や「風流夢譚」事件の教訓であろう。
石原都知事の「三国人」発言事件以来、右翼勢力の排外主義的傾向がいっきに高まり、少なくともインターネット上では、暴力を扇動する言動も多く現われるようになった。
ここで提案であるが、キム氏殺害につながるかも知れない、排外主義的テロリズムを扇動・示唆するHPや掲示板を“状況証拠”として見つけだし、机上の探偵活動ができるのではないか。
2ちゃんねるでは、バスジャック犯人「ネオむぎ茶」説をめぐって、こうしたデスクトップ・ディテクティヴが懸命の(笑)捜査活動を続けている。
電脳を駆使した探偵活動は、インターネット時代の新たな知的情報活動になりうるのではないか。この潜在力を、我々なりに育てていく必要があるのではないか。久米宏らに命名していただいた「卑怯な蛆虫」としての特権を利用して、痴呆キャスター畜死哲也に命名していただいた「便所のらくがき」の威力を発揮して、クソたれマスコミとは違う“捜査”ができるのではないか。
-----------------------------------------------------------
●読売新聞記事
http://www.yomiuri.co.jp/04/20000508ic29.htm
「救え北朝鮮ネット」代表の関西大講師が変死
八日午後六時四十分ごろ、兵庫県尼崎市塚口町四の、関西大学非常勤講師金英達さん(51)方マンションの和室六畳間で、男性が布団の上で仰向けになり、死んでいるのを、マンションの所有者が発見、一一〇番した。
同県警尼崎北署の調べでは、死後約二週間。胸には刺し傷があり、まくら元に刺し身包丁があった。金さんとみられ、同署で身元の確認を急いでいる。
玄関にはかぎがかかっており、争ったあとはないという。遺書などがないことから、同署は他殺の可能性もあるとみて、九日に司法解剖して死因を調べる。
金さんは在日朝鮮人問題の研究家で、軍属と従軍慰安婦を研究テーマにしている。在日朝鮮人二世として生まれ、一九七〇年に帰化。九三年から「救え!北朝鮮の民衆、緊急行動ネットワーク」の代表を務めていた。
(5月9日01:34)
-----------------------------------------------------------
● 朝日新聞
http://www.asahi.com/0508/news/national08043.html
朝鮮現代史研究者が変死、胸に刺し傷 兵庫・尼崎
8日午後6時40分ごろ、兵庫県尼崎市塚口町4丁目のマンション「市隆(いちりゅう)ハイツ塚口」の2階の一室で男性が死んでいるのを、この部屋に住む男性の姉から連絡を受けたマンション所有者が発見し、110番通報した。胸に刺し傷があることなどから、県警捜査一課と尼崎北署は殺人事件の可能性もあるとみて捜査を始めた。
調べによると、亡くなっていたのはこの部屋を借りている朝鮮現代史研究者で関西大学講師の金英達(キム・ヨンダル)さん(51)とみられる。ズボンとワイシャツ姿で、奥の6畳和室に敷かれたふとんに仰向けで倒れていた。血が付いた刺し身包丁がまくら元付近に残されていた。胸あたりまでふとんをかけ、死後2週間程度という。
広島県に住む姉からこの日午後6時ごろ、「最近、音信不通で心配だ」と連絡を受けたマンション所有者が合いかぎで室内に入り、見つけた。玄関は施錠されていたが、チェーンはかかっていなかった。室内に荒らされた形跡はなかったという。
金さんは1999年2月に同マンションに入居した。妻子は海外で暮らしているらしい。
現場は阪急塚口駅の北西約800メートルの閑静な住宅地。マンションは5階建てで、1階にスナックが2軒あるほかはすべて住宅。
マンションの住民の話では、1人暮らしの人が多く、隣近所の付き合いはほとんどなかったという。
金さんは日本の植民地支配下における「創氏改名」や、在日朝鮮人問題に関する研究で知られた。関西大や大阪市立大、奈良産業大などの講師(人権論)、大阪市に事務局を置く市民団体「救え! 北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク(RENK)」の代表などを歴任した。著書に「在日朝鮮人の帰化」「日本の指紋制度」「創氏改名の研究」などがある。(01:49)
-----------------------------------------------------------
●毎日新聞
http://www.mainichi.co.jp/news/selection/news04.html
2000年5月9日
変死:
北朝鮮民主化団体代表宅で男性 殺人の可能性 兵庫
8日午後6時40分ごろ、兵庫県尼崎市塚口町4、マンション「市隆ハイツ塚口」2階の関西大講師、金英達さん(51)方で、男性が死んでいるのをマンションオーナーが発見、110番通報した。県警捜査1課と尼崎北署の
調べで、男性の胸部に刃物の刺し傷があり、まくら元に血の付いた刺し身包丁が放置されていた。県警は殺人の可能性が強いとして捜査、男性は金さんであるとみて確認を急いでいる。
調べでは、男性は50〜60歳くらい。カッターシャツとズボン姿で、布団の上で倒れていた。死後約2週間とみられる。発見当時、部屋の玄関や窓にはかぎが掛かっていたという。
8日夕、広島県に住む金さんの姉からマンションオーナーに「弟が最近、音信不通で心配だ」と電話があり、オーナーが部屋を訪ねた。
金さんは在日2世として生まれ、1970年に日本国籍を取得した。日本統治下の朝鮮人や在日の問題について研究。特に帰化問題や指紋押なつ制度の先駆的な研究で知られ、「在日朝鮮人の帰化」「日本の指紋制度」などの著書がある。
また、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の民主化を支援する「救え!北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク」(RENK)の代表も務めていた。
現場は阪急塚口駅の北西約800メートルの住宅街。
関係者によると、金さんは最近まで同室で女性と暮らしていたという。