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回答先: レトロウィルスの権威【フランソワーズ・バレシヌシ】 投稿者 陰謀王子☆彡 日時 2000 年 5 月 19 日 06:25:05:
パネルディスカッション
司会/小出 五郎(NHK解説委員)
パネリスト/加藤 四郎
(大阪大学名誉教授)
蟻田 功
(国際保健医療交流センター理事長)
フランソワーズ・バレシヌシ
(パスツール研究所教授、フランス)
花房 秀三郎
(ロックフェラー大学教授、アメリカ)
吉倉 廣
(東京大学教授)
鈴木 康夫
(静岡県立大学教授)
・小出 県民講演会でご講演いただきました加藤四郎氏、蟻田功氏、フランソワーズ・バレシヌシ氏、花房秀三郎氏、それから新たに鈴木康夫氏と吉倉廣氏に加わっていただいてパネルディスカッション「ウイルスとの戦い」を始めたいと思います。講演でお話いただいた内容を軸にいたしまして、会場の皆さまからたくさんの質問票を寄せていただきましたので、これらを整理しながら、先生方のお話、ご意見をお聞きしていきたいと思います。
始めに、新たに加わっていただいた鈴木先生と吉倉先生に、自己紹介も兼ねて、ご専門の分野などうかがいたいと思います。
・鈴木 静岡県立大学薬学部生化学教室の鈴木です。もともとは細胞の表面にあるいろいろな蛋白、あるいは糖の鎖、そういったものの機能、とくに微生物と細胞とのかかわりについてやってきました。ここ数年は、インフルエンザウイルスなどを中心とした受容体の研究に取組んでおります。
・吉倉 東京大学医学部の吉倉です。レトロウイルス、C型肝炎ウイルスの研究、大学での細菌とウイルスの講義や実習を受け持っております。また、国立ウイルス研究所におりますので、ワクチンのレギュレーション、その関係で、蟻田先生とポリオの根絶計画、エイズ・プロジェクトなども手がけております。
・小出 では、最初の質問にはいってまいります。ジェンナーが天然痘のワクチンを発明したときから、狂犬病ワクチンができるまでには、100年近くの年月が経過しています。第2のワクチンの開発まで、何故そんなに時間がかかったのでしょうか。
・加藤 それだけ時間がかかったのは、ジェンナーの先見性が優れていたということかもしれません。しかしジェンナーの時代には、まだ細菌、ウイルスはもとより、微生物という概念もありませんでした。パスツールの時代に至って初めて細菌という概念が確立してくるわけで、そういう実態が明らかにされた時点から、いろんなワクチンの開発が急速に進んだといえるのではないかと思います。
・小出 つぎはインフルエンザ・ワクチンについてなのですが、毎年冬になりますと多くの人がインフルエンザにかかります。過去にはインフルエンザ大流行で、何千万人もが死んだこともあります。ところで、インフルエンザのワクチンは効かないという意見もあります。また、効果は少ないかもしれないけれど、重症化は防いでいるという人もいます。どのように評価したらよいでしょうか。
・鈴木 インフルエンザウイルスというのは、非常に変わりやすいという特性を持っています。人間のDNAに比べますと、数百万倍も変わりやすいので、ウイルスが来年どういうふうに変わるかということを予測することがなかなか難しいのです。厚生省とか国立予防衛生研究所のグループが予測をし、また、WHOのリコメンデーションもあって、うまくマッチするようなワクチンをつくるわけですが、それがうまくマッチすれば良いのですが、うまくいかない事もあるようです。
ただ、私は、全く効かないかというと、そういうわけでもないと考えています。日本では、昔は集団接種といって、厚生省が学童にワクチンの接種を強制的にやっておりましたが、最近は自由になりました。ただし、欧米では、とくにお年寄りとか、呼吸器系に感染症のある人たちには、ワクチン接種を積極的に薦めており、しかも保険がきくということもあって、接種をうける人が増えているようです。日本でもインフルエンザウイルス感染により重症化しやすいお年寄りや呼吸器疾患の方々にはワクチン接種を薦める方が良いと思われます。
・小出 ワクチンについてもう1つ。ときどき大きなニュースとしてもとりあげられるものに3種混合ワクチン、MMRワクチンがあります。これが髄膜炎を起こす率が高いというので、日本では中止されたわけですが、アメリカでは今でも使用されているということです。それは、診断基準が日本と違うからなのでしょうか、他の理由があるからなのでしょうか。また、おたふくかぜのワクチンは、髄膜炎を起こす率が少ないのでしょうか。
・加藤 ワクチンの副作用の問題となりますと、歴史的には天然痘に対するジェンナーの牛痘種痘法というのが最も副作用の激しいワクチンでした。100万人に数十名の脳炎が起こって、その半数が死んだというすさまじいワクチンだったのです。結局天然痘の脅威とワクチンの副作用のバランスということで広く接種が行われて、そして根絶にまで至ったということです。他のワクチンについても、このバランスを考えて接種することが望まれます。種痘に比べると現在用いられているワクチンの副作用は、著しく低いといえます。MMRワクチン(麻疹、おたふくかぜ、風疹、それぞれに対する弱毒生ワクチンの混合ワクチン)の接種による副作用として髄膜炎がありますが、これは主としておたふくかぜワクチンによるものです。現在おたふくかぜワクチンとして用いられている株はいくつかありますが、髄膜炎の発生率は0.1%〜0.01%です。自然におたふくかぜに罹患した場合には、高熱を伴う耳下腺炎になります。そして髄膜炎の発生率は約2%と高く、成人の場合には睾丸炎や卵巣炎を起こすこともあります。このバランスを考えるとワクチン接種が望まれます。とはいえ、健康な人がワクチンを受けたことにより、髄膜炎などに苦しむことは、確率は低いとはいえ、当人や家族にとっては大変なことです。副作用の原因は、ワクチン側にも、これを受ける固体側にもありますが、その原因の究明と排除に関する研究は、緊要な課題と思います。
・小出 最近、質問者は新聞で読んだということですが、20代の父親が、子供のポリオの予防接種について行った、数日後に父親が、ポリオに感染したということがありました。父親もポリオの予防接種はしてあったということです。こうしたことが、起こりうるのでしょうか。
・蟻田 ポリオ・ワクチンの副作用について、世界的、国際的には、100万人から300万人の子供に初めて生ワクチンを飲ませると、ワクチンによる麻痺をおこす人がでる、これが医学界の常識になっています。日本で、この3、4年で、ポリオのワクチンで、はっきり起こった麻痺例は、私の知っている限りでは、この1例です。それによって、ポリオのワクチンは非常に副作用が心配だから、これを辞めようというのは、非常に危ない考え方だと思います。
いま、日本でこの10年ばかりポリオの野性株の 流行がないのは、子供たちに生ワクチンを飲ませて、防御しているからなのです。例えば、恐らく東南アジア、いろんな国から来る人たちの糞便を調べれば、恐らくポリオの野性株を持っている人たちがいても不思議じゃないわけです。流行のもとは、いつも日本に起こってきているのに、流行がないというのは、やはりワクチンの結果だと考えられます。子供のワクチンが父親にうつったというのは、非常に不幸な例ですけれども、余り心配して過剰な反応をするのはよくないと思います。
・小出 つまり、例外的なことをもって全体の大きなところを見失っては、もっと困るということですね。
・蟻田 ワクチンというのは、やはり健康な人に異物を入れるわけですから、100%安全ということはあり得ないんです。ところが、これをどの程度容認するかということが、国民性とか、その国の文化とか、それからその疾病の重症度などで決まってくるわけです。日本は、非常にワクチンの安全性に気を向けて、ワクチンの本当の効果ということに、あんまり注意を払わないような傾向もあるようです。それで、どういうことが起こるかといいますと、日本でいいワクチンを開発しても、このワクチンがはっきり安全になるまではなかなか使わない状況が出てきます。例えば大阪大学でつくった水痘のワクチン、これができて、もう20年たちますがなかなか使われていないのです。副作用的なものをあんまり考えると、うまくいかないという例です。
・小出 疾病の根絶、これは長い間の人類の夢ですが、ウイルスの根絶はよいことだろうかという質問が来ています。これは、ウイルスでも1種が絶滅すれば、また1つの別な種が出てくるに違いないのではないかということです。根絶というのは人間中心に考え過ぎているのではないか。共生というような考え方は無理なことなのでしょうか。
・蟻田 今のお話は、大会議を開いて一日中議論しても結論を出すのはなかなか難しい問題だと思います。根絶というのは、世界中、地球上から、ともかくその疾病を人間の間からなくすということですから。
・小出 天然痘根絶ということで、研究用保存サンプルの行方はどうなっているのかという質問も来ています。また天然痘のDNAのウイルスそのものは地球上のどこかに保存されているのでしょうか。
・蟻田 天然痘のウイルスは、動物にはなく、人間だけです。ですから、人間をしっかり予防しますと、ウイルスは人間以外に生存できないわけですから、自然消滅することになります。実際、最後の患者は、ロンドンで1978年に実験室内で感染したものです。それ以後、もう18年間、天然痘が発生しなかったことになります。恐らくこのウイルスは、人間の体からはもうなくなったと、伝播はないと考えてよいのではないかと思います。
ところで、天然痘の根絶をやっても、研究所でそのウイルスを持ってるんじゃないかということが問題になりました。これを細菌戦争とか、いろんなテロリズムに使われたら大変だと、そんな話がありました。1970年代、大体70ぐらいの研究所で研究が行われていましたので、その研究所を対象に、WHOが訪問、手紙、それからミーティング、そういうのをやりまして、2つだけ残して、あと全部彼らが滅菌消毒しました。それで残ってるのが、ロシアのノボシビルスクにある研究所、それからアメリカのアトランタの疾病研究所、この2つです。ここは天然痘根絶のときのWHOの協力機関として非常に大きな仕事をしたので、そこに残してあるということです。しかしこれも、1999年、20世紀の最後の年に、滅菌消毒してなくすということがWHOの総会で決められています。
・蟻田 ポリオの根絶を終わったら、ポリオのウイルスを研究所から全部なくしてしまうのか。麻疹がなくなった場合に、麻疹のウイルスをなくしてしまうのか。これはもうちょっといろいろ研究して、考える必要があると思います。というのは、麻疹のウイルスでもポリオのウイルスにしても、人間とのかかわり合いが天然痘ウイルスほどはっきりわかっておりませんので、これはやっぱり研究の材料だと思います。
・小出 アメリカでコーネル大学の研究者たちが中心になって、バナナ・ワクチンに代表される、食べるワクチンの開発研究が進んでおり、WHOも、その食べる、エディブル・ワクチンのプロジェクトを支援していると聞いています。将来のワクチンとして、食べるワクチンについてどうお考えでしょうか。
・蟻田 それは私は、知りませんでした。私がWHOに聞いてご返事するようにいたしますので、後日、お答えいたします。
・小出 国際交流が進むにつれて、輸入動植物とともに侵入する病原体の増大の危険性があります。特にミドリザル、カニクイザルなどの野性動物輸入は野放しの現状にあります。家畜伝染病予防法とか狂犬病予防法とか、そういったものの網の目をくぐってしまうものが多いわけなんですが、そういった新感染症、いわゆるエマージング・ウイルスの侵入の防疫体制について、それぞれの国がどういう方針で対応していったらいいとお考えでしょうか。
・蟻田 今から2年ぐらい前に、ロックフェラー財団の保健部が、世界の専門家を集めまして、新しく、または再び起こってくる非常に重篤な疾病の地球規模の検索方法、サーベイランスという言葉を使っておりますが、それからモニタリングをどうやるかという話合いをやりました。それ以後WHO、それから世界銀行でも問題になりまして、今の問題の一環として、各国の防疫体制、サーベイランス体制の強化という方向で、いろんな仕事が行われています。日本では母親とか家庭の方の関心が非常に高いので、そういう方々が、そのような疾病に対していつも注意をしておいて、そしてそれを医師に報告するということをやっていただくことが一番大切だと思います。
それから医療機関が、いろんな決められている疾病について、また何か怪しい疾病については報告するというサーベイランス体制を、今後しっかり強化していくということだと思います。これは医師会とか厚生省とか、いろんな民間団体が一緒になって大きな運動にしていくべきだと思います。
・吉倉 猿の輸入に関しては、野生猿は基本的には輸入できないということになっていると思います。
・小出 猿がエイズを発症しないのはどうしてかという質問です。猿がSID感染したとき、エイズのような症状を引き起こさないのは、抗レセプターに関係があるということでしたけれども、どうして最終的なエイズにまでなかなか行きにくいんだろうか、ということです。それからもう1つ、抗レセプターを発現させた動物モデルをつくることができれば、1つの病体モデルをつくるということができるとお考えでしょうか。
・バレシヌシ 抗レセプターの発現、まだこの質問にお答えするのは早過ぎると思います。人間での抗レセプターといいますのは、数カ月前に発見されたばかりで、現在まだ猿での実験段階です。そして、抗レセプターを人間と猿との間で比
較しているんですけれども、まだデータは入手できません。
それからもう1つ、動物モデルをつくるということも今やっている最中です。現在マウスで実験を行なっております。トランスジェニック・マウスをつくろうということでありまして、これがCD4の分子と、それからCCF5の抗レセプターの両方発現するものを考えております。このようなマウスがHIV−1に感受性が高いものと考えられるんですが、ただ個人的には、このようなモデルは、余りうまくいかないと思っております。なぜかといいますと、ほかの制約が細胞内に存在するであろうと。そしてそのマウスの中で、ウイルスの複製を防ぐものがあるであろうと考えているからです。ただ、それがまだ確信として得られているわけではありません。
・小出 protease inhibitorがHIVに対して有効であるということを聞いたことがありますが、どの程度発病を遅らせることができるのでしょうか。
・バレシヌシ この治療についても新しい展開が見られております。この1年にもいくつかの新しい薬が開発されてきました。そしてそれらは、replication cycleに関連したprotease inhibitorのようなものを考えております。これによって、ウイルスによる負荷をHIVに感染した人で避けることができると言われております。ということで、その恩恵があるであろうというふうに考えられます。ただ実際には、いろいろな治療方法がありまして、このantiproteaseと組み合わせる。そして、アンティ・レトロウイルス薬剤と、それからantiprotease、それからプラス1と2を加えるといったものもあります。現在、大体18カ月間のフォローアップを行っております。現在までのところ、データは非常に良好です。ということは、ウイルスによる負荷が下がってくるということで、ウイルスが全くいないわけではないですけれども、detectできないレベルまでに下げることができてきました。血液中ではなかなか判定できないレベルになってきました。
ただ、この利点につきましては、まだまだ待たなければならないと思います。どの程度この治療が効果を持つのか。これが長期間にわたって有効であるのか、1年以上、2年以上有効であるのか。副作用はないのか、長期投与することによって副作用はないのかどうか。あるいはそれによってウイルスの耐性が出てくる可能性はないのかどうか。長期治療した場合に効かなくなる可能性はないのかということで、3年ぐらい経たないと、まだ十分な結果は出てこないだろうと考えております。ただ、今までのところでは最良の結果が出ているということが言えると思います。
・小出 エイズの場合、アポトーシス(apoptosis)でリンパ球が死ぬわけですけれども、アポトーシスを防げばエイズの進行を防ぐことができるのでしょうか。アポトーシスを遅らせる研究というのは現在行われているのでしょうか。
・バレシヌシ 治療でアポトーシスを減らそうという努力は行われております。このアポトーシスといいますのは生理的な現象でありますので、HIVの感染がなくても正常な人でも起こるわけであります。ただHIVが感染すると、成熟なT細胞がアポトーシスを起こしてしまう。これは異常なことです。ですから、私達が今まで使ってきた治療方法、例えばルタチオンというのがありますけれども、これはこの酸素の活性化した形態に対して影響を持つ。そして活性化酸素というのは、アポトーシスを引き起こすということが知られております。この薬剤はin vitroでは効果があるということはわかりますけれども、in vivoでは、まだ効果が見られておりません。アポトーシスというのは、そのウイルスの負荷の結果としてでてくるのではないかと考えております。ということは、アポトーシスを止めるということを考えた場合には、ウイルスに作用する薬剤を使う方がいいのではないか。ということは、ウイルスの量を減らすことができればアポトーシスの量を減らすことができるのではないかということで、抗ウイルス剤と併用することが望ましいと考えられます。ということで、アポトーシスそのものに対する特異的な治療方法はない、また、アポトーシスに対する単純な処理だけでは、in vivoでは効果がないということが考えられます。
・鈴木 ただいまのアポトーシスですね。そのCD4を発現した細胞にHIVが感染するわけですね。アポトーシスというのは、そのウイルスに感染した細胞が自分でプログラムされて死んでいくという、そういう現象なんですけれども、それをできるだけ長くストップさせて、長生きさせてやれば、そういう免疫不全というものが起こらなくすることができるんではないかという期待があるわけです。実際日本でもそういうプロジェクトといいますか、厚生省でも、抗HIVの薬の開発ということで、そういう研究をやっております。私たちもウイルス感染した細胞のアポトーシスを抑えるという、そういう薬を見つけようという試みはしておりますけれども、体で実際に効くかどうかということに関しては、まだ難しい状況ですね。
・小出 静岡県立大学でもそのような研究が行われているのですね。
・鈴木 県立大学でも、そういうような研究は、やっております。
・バレシヌシ アポトーシスを起こすのは、必ずしも感染を受けたものだけではありません。その環境にある細胞、その感染を受けた環境にある細胞です。必ずしも感染を受けた細胞ではないということです。
・小出 CTL細胞のケモカイン産生のシグナルは何なのでしょうか。
・バレシヌシ ケモカインの問題ですけれども、CTがケモカインを産生しているのではありません。ベータ・ケモカインを産生しているものではという意味です。CD8細胞のサブポピュレーション、あるいはCD4細胞というのが、ケモカインを産生している可能性があります。ベータ・ケモカインの機序というのは、細胞のレプリケーションを抑制する可能性があります。それもケモカインとウイルスで抗レセプターを競合するという状態にあります。ということは、HIVのための第二番目のレセプターは、ケモカインのレセプターであるということなのです。ですから、現在までの研究では、薬剤を使うことによって、ベータ・ケモカインの部分に対応することができるということです。それによって、in vitroでは少なくともその感染を抑制することが、可能であるということがわかっております。ですから将来は、HIV感染をベータ・ケモカイン誘導体によってブロックできる可能性がある、というように考えております。ただ、現在のところでは、このような薬は開発されていません。といいますのも、ベータ・ケモカインがないような人でも問題のない人がいます。そういった人たちも感染から防御されていることもありますので、まだ十分にそのメカニズムは解決されていないと考えられます。
・小出 HIVがTセルを破壊するわけですけれども、そ
れを上回るスピードでTセルを増やしたらどうなのでしょうか。壊されるよりもたくさん増やしてやることによって、エイズの発症を抑えることはできないのでしょうか。
・バレシヌシ それが一番始めの治療のやり方でした。HIVが発見される前に、T細胞を増殖するようにしました。しかし、これも非常に危険です。というのは、T細胞が増大すると、ウイルスも増大するのです。抗ウイルス治療との併用治療ということも考えられます。昨年、抗ウイルス剤とサイトカインの併用治療を行いました。これは、抗ウイルス剤によってウイルスの増殖をストップし、そしてまたT細胞を増殖するというやり方です。いくつかの勇気づけられるような結果も出ており、また治験も見られます。
ただ、サイトカインを治療に使うということは、ちょっと難しいと思います。サイトカインの最適な投与量が難しいのです。サイトカインが多いと副作用が出てしまいますし、十分でなければ、余り効果が出ません。
さらに、エイズ患者で覚えておいていただかなければいけないのは、その後期に、恐らく、T細胞の異常が見られるということです。これは、骨髄や胸線に見られます。骨髄移植を考えなくてはいけなくなるのです。それだけでなく、骨髄移植プラス抗ウイルス剤投与の併用ということも考えていかなければなりません。治験をやっておりますが、まだ成功しておりません。
・小出 とても大胆な質問なのですが、HIVで人間が死ななくなるのは、何年ぐらい先になるでしょうか。
・バレシヌシ とても難しい質問だと思います。治療の今までの発展、進展を考えてみて、先進国の場合、数年後には患者がいなくなることも考えられると思います。ただ、発展途上国の場合には、HIVの感染速度は90%です。治療方法を考える場合、経済的な面も考慮しなければなりません。治療費がすごくかかります。今日、エイズを解決できるかということは言えないと思います。途上国の患者をどうやって治療したらいいのかという最高のアプローチがないからです。エイズの治療には、ワクチンが必要だと思います。
今までのところ、ワクチンの開発はうまくいっていません。エイズに対するワクチンが可能かどうかという答えも出ていません。まだ、全ての可能性をトライしていないと思います。新しいワクチン工法で、幾つかの進展が見られますが、答えがでるまでには、まだ数年かかると思います。バンクーバーの会議で、おおくの国々が、エイズはもう問題はないと言っていますが、途上国にエイズがあるならば、先進国においてもエイズは撲滅されないと思います。
・小出 途上国でのエイズの問題、HIVの感染、これは大問題になっています。WHOが中心になって、いろいろ予防対策を構じてますが、現在、途上国で具体的にはどんなことが進められているのでしょう。またどういう方針が必要だとお考えでしょうか。
・蟻田 WHOでエイズの特別国家対策というプログラムがあります。この特別国家対策というのの基本的な問題は、エイズは日本でいう性病であるということです。かつて梅毒とかいろんな性病がありました。それを防ぐことと同様なことで、やはり人の行動様式を性病にかからないようにしていくということ、これが基本的な態度です。そして、実際それをやりますと、統計によれば、やはり罹患率が下がってきます。ですから、これが第一の問題です。
それから第二の問題は、私はエイズはやはり研究の問題だと思います。研究投資をしっかりやるということが一番大切なことじゃないかと思います。例えばポリオでも、1950年代にワクチンができるまではいろんな対策をやったわけですが、うまくいかなかった。ワクチンができて、ポリオは根絶までいきつつあるわけです。エイズについても、やはり開発研究、対策のための開発研究、これが一番大切なことじゃないかと思います。
・吉倉 今までいろんな伝染病がはやって、例えば梅毒とか、それから非常に死亡率が高いような病気がはやってたわけです。赤痢とか腸チフスもそうですが、時間が経つにしたがって、だんだん人間と共存するようになってきて、死亡率がだんだん減ってくる。そういうような、エイズウイルスと人間の共存関係が、ある意味では、そういう死亡率が低い段階でのエイズウイルスと人間との共存関係ができるのではないかというような考え方もできると思いますが、バレシヌシ先生、どうお考えですか。
・バレシヌシ それには多分、もっと時間がかかると思います。例えばHIV2の場合を考えてみてください。これは、その弱毒性HIV1というふうに考えられます。例えばセネガルとかまたアフリカの場合を考えてみてください。進行性はHIV1よりも遅いわけですが、HIV2は、弱毒性型のHIV1というふうに言えます。ただ、例えば猿でのことを待ってみる。弱毒性のウイルス、つまり宿主とウイルスとの平衡を保って生活したいわけですが、アフリカで棲息している猿、そしてまた、ウイルスの系統を見ていきますと、アフリカ猿の場合には、それは1万年前から、もう存在したということです。弱毒性のHIV1を達成するためには、もしかすると、1万年以上待たなければいけないわけです。弱毒性のウイルスをつくり、それをワクチンとして使うということも考えていかなければならないと思いますが、猿のモデルでもうまくいっておりません。さらに弱毒性のレトロウイルスを使う場合、接種したとき、その組み替え型のものが、出てくるのではないかという疑問があるわけです。ですから、これはとても難しい分野だと思います。
陰謀王子☆彡コメ
こういう事を何も知らないで、これからの時代を生きていくのは危険すぎる。
出来る範囲でいいから、勉強してみて下さい。
ここを読んでいるあなたには、少なくとも可能性があります。
《この人たち》の言っていることの中から、
“嘘”が見えてくるようになったら、
少しは“不自由”から、解放されるかもしれない……。
なんて、ちょっとカタリはいってる陰謀王子☆彡でした(^^;)
偉そうに聞こえたら、ゴメンね m(_ _)m
続きは、こちらで↓
http://www.pref.shizuoka.jp/kikaku/ki-03/health/1st/panel_d_j.html