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回答先: ダボス会議とは?(読売オンライン・ミニ辞典より) 投稿者 F.P.宣伝省@親衛隊国家保安本部 日時 2000 年 1 月 20 日 22:20:53:
(1)進化する小さな政府〜企業が国民監視
◎「このチップにはビッグブラザーが入っている」――。
米インテルの最新マイクロプロセッサー(MPU、超小型演算処理装置)、「ペンティアム3」。ユーザー名やクレジットカード番号などの盗用を防ぐための識別番号があり、それが「世界の人々の総背番号制につながる」とプライバシー保護団体などから、かみつかれている。
作家ジョージ・オーウェルが小説「1984年」で描いたのは、絶えず国民を監視する「ビッグブラザー」。それは強大な国家権力の明日の姿だった。今、ネットをすみかとする地球市民はビッグブラザーの亡霊を政府でなく、企業にみる。
インテルは識別番号の機能を停止できるようにしたが、潜在的には、世界中の市民の「住民台帳」づくりが可能なのだ。
企業と政府の地位が逆転したかのような現象は、情報化やグローバル化の結果だ。国の信用度も、市場化によって一格付け会社の判断で測られる。政府を頂点とする20世紀型秩序が揺らぎ、新秩序をどう築くのか。
◎官民で首脳会議
胎動は政府と民間が融合する場で始まっている。3月21日、米アリゾナ州のリゾート地に、米の各界のリーダーが集結する。財務副長官のローレンス・サマーズ、ワシントン・ポスト紙会長のキャサリン・グラハム。ヤフー共同創業者のジェリー・ヤン……。
年1回の会合の名称は「PCフォーラム」。一般には無名だが、インターネット上のアドレス付与、プライバシー保護、電子商取引の課税など、来世紀の情報社会のインフラ(基盤)となるルールのほとんどが、この場で合意形成されている。
情報分野だけではない。通貨マフィアの会合が儀式化するなか、1月末にスイスのダボスで開かれた民間主体の「世界経済フォーラム」【注・タボス会議のこと】が、日本の金融政策に大きな影響を与えたのだ。
日本から出席した自民党前幹事長の加藤紘一に「金融の量的緩和」を迫ったのは、個別に会談した米財務長官のルービンやサマーズだけではなかった。
夕食会で同じことを問いただしたのは、欧州自動車メーカーのトップ。グローバル企業にとって日本経済の行方は重大な戦略的意味を持つ。世界から集った賢人会議の「日本の金融緩和はほぼ常識という空気」(加藤)が日本に運ばれ、半月後の金融緩和につながった。
80年代の英米の「小さな政府」の流れは、財政破たんなどの「政府の失敗」の表面化がきっかけだった。処方せんは民営化や規制緩和など「ぜい肉のそぎ落とし」にあった。
◎変革の「第2波」
今や、技術革新や市場化の進展で「『小さな政府』の第2波が押し寄せている」(PCフォーラム主催者のエスター・ダイソン)。高度な知識が必要な政策課題が猛烈な速度で次々と生まれ、一政府の力や政府間協議では解決しなくなっている。
企業家の知恵を借り、できること、やるべきことを絞り込み、それ以外は経済的な介入をできるだけ避ける――。
変身への萌芽(ほうが)は、日本にもある。1月27日夕、首相官邸執務室。小渕恵三と通産相の与謝野馨、経団連会長の今井敬がひざ詰めで話し合っていた。
今井「供給サイドの改革が経済再生に避けて通れません」、与謝野「産業競争力の戦略はどの国もトップリーダーが自ら乗り出しています」。3月下旬に発足する「産業競争力会議」は、この瞬間に小渕自身が議長に就くことが決まった。
日本の政策決定を特徴付けてきた「官民一体」。しかし官僚が設計して、民間が実行する従来の枠組みのままでは、資本主義の変化に対応できない。市場を担う民間が主体的な役割を果たす、それによって軽やかで強い「小さな政府」に進化しないと、明日を切り開く政策も出てこない。=敬称略
(「21世紀勝者の条件」取材班)