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東京スポーツ2000年1月7日16面〈NEWS衝撃の核心〉
京都の小2児童殺人事件
「子供の犯行を偽装か」
当局は新たに数人の若い男を絞り込み
新たな謎が浮上してきた。
京都市伏見区の市立日野小学校校庭で、小2男児・中村俊希ちゃん(7)が殺害
された事件で、京都府警山科署捜査本部は5日までに、「小学校高学年から中学
生」としてきたこれまでの捜査対象を、「20歳前後の者」にまで広げ、犯人の
割り出しを急ぐことになった。
これは、逃走に使った自転車を昨年12月4日に大阪府枚方市の量販店で買った
男と、遺留品と同じナイフなどを事件2日前の12月19日に京都府宇治市の
ホームセンターで買った男とが酷似しているうえ、目撃証言や映っていたビデオ
分析から「20歳前後」と判別されたため。「子供の犯行」ではなく、「子供を
装った犯行」の可能性が一挙に高まった。
「子供犯行」説が薄らいたことには、もう一つこんなことがあった。
ある捜査関係者によると、捜査本部ではこれまで、事件の目撃児童らが「犯人は
お兄ちゃんだった」と証言していることや、現場に残した「てるくはのる」名の
犯行声明文の筆跡がいかにも小学校高学年から中学生の書いたものに見えること
などから、現場周辺での不審少年の洗い出しを進めてきた。
その結果、事件のあった12月21日(火)に、日野小と周辺の小・中学校で、
いち早く学校を休むなどした中学生らおよそ10人をピックアップ。事件発生時
のアリバイなどを調べてきたのだが、いずれも事件との結びつきは出てこなかっ
たのだそうだ。
また、問題の犯行声明文については、平仮名のほうはわざと左手で書いたとみら
れるのだが、「理由」「後」「識別」「記号」などの漢字部分は右手で書いたも
の。犯人が「子供の犯行」であるかのように装うため細工したのではないかとの
見方が有力になってきたという。
それだけではない。捜査本部では司法解剖や現場検証により、犯行状況の細かな
再現に努めてきたのだが、致命傷となったのは、左下あごから首にかけて、動
脈、静脈をいずれも切断する長さ20センチ深さ10センチの大傷。そのため体
内の血はほとんど残っていなかった。鑑定した医師らによると、凶器の文化包丁
が新しいものだったとはいえ、かなり大きなカが加わらなければ、こんな殺し方
はできないという。この点からも、子供犯行説は大きく後退したのだそうだ。
さらに注目すべきことがある。捜査本部には事件発生以来すでに数百件の不審者
についての情報が寄せられているのだが、前出の捜査関係者によると、本部では
正月返上でこれらの情報の選別を進めた結果、現場からそれほど離れていない所
に住んでいる数人の「若い男」をキャッチ。いずれも背が低く、やせていて「自
転車を買った男」や「ホームセンターのビデオに映っていた男」によく似ている
ものの、中には高校生や未成年、ちょっと体が不自由な者なども合まれているた
め、慎重にそれこそ極秘に調べを進めているのだという。
犯人割り出しは大きなヤマ場にさしかかってきたようだ。
〈山元泰生&本紙取材班〉