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論壇(平成11年10月1日)
いまから数十年前に東大実験施設で働いていた私の従兄弟は
突然死亡したのだが、表向きの死因はともかく当時の東大
同級生のうわさでは被爆死ということであった。
子供ながらにもやもやしたものが残って未だにあの業界には
不信感がある。
***以下引用***
日本の臨界事故に関する情報開示はチェルノブイリ以下か
事故発生後直ちに作成し発信した臨界事故に関する 「論談」 のコメントは、その予想通り政府、行政無謬主義を押し通す、これまで同様のやり方で終息されている。
しかもコスト高のため行程を省略して裏マニアルに準拠して、あろうことかバケツまで使った作業が行われたのが、原因だ、とされ、そういう報道がマスコミメディアにより大々的且つ計画的に流され続けるため、あたかも、それが事故発生の真因のように、国民に受取られていることは否定できない。
こうしたやり方や経過は、ソ連時代のチェルノブイリの悲劇そのままだ、との指摘をしたが、いま、あらためて、明らかとされた、前記のチェルノブイリの悲劇の正体、真相を、勇気と良心をもって内部告発したケースについて、若干ふれてみた。
告発者はワレーリー・A・レガソフ (科学アカデミー最高幹部会員) 当時51才 (1986年夏、ウイーンで開催された国際原子力機関のIAEAの専門家国際会議のソ連政府代表でもあった)
彼は、このチェルノブイリ事故発生 (昭和61年4月26日、午前1時23分) 直後から災害防止の活動ぶりや住民避難を自らの手記 「それについて語るのはわたくしの義務である」 に総て生々しく記述しているが、特に後半が重要で、いたる処で、ソ連の最高機密、チェルノブイリの真相のポイントが抉られている。
たとえば、・チェルノブイリ型原子炉 (RBMK) は欠陥炉だ、という指摘。
装置の概念は欧米と基本的には殆んど差異はないが、装置の劣る点は制御システムや診断システムが貧弱。
設備に多量の黒鉛、ジリコニウム、水が入っていること。
緊急時に作用すべき防護システムの作り方が異様であること。
感知器の一つからの指示で自動的に入るにせよ、手動でするにしても、とも角、緊急防護の制御棒を扱うことができるのはオペレーターだけ。防護システムはオペレーターとは関係なく、装置の状況によってのみ作動しなければならないのに、そのように作動するシステムはなかった。
たとえば、主要配管の継ぎ目を溶接するに当って、正規の溶接法ではなく、溶接工が溶接棒をちょっとのせて上から軽く溶接しただけ─要するに手抜きしてパイプ溶接したというズサンなやり方にも拘わらず、溶接工はキチンと溶接した、接続部分を検査したガンマ探傷検査員も正確にこれを確認した、ものとして、サインがなされていた。
事実は、嘘であるにも拘わらず、である。 更には一つの具体的事例も指摘されている。
それはオペレーターのミスがそれであるが、事故発生前日のオペレーターの会話記録がそれであって、それによれば手引書つまりマニアルのことで、オペレーター同志が話し合っているのだが、「マニアルには、やることが色々と書いてあるのに、それらの多くが消されているが、どうしたらいいのか」 という問いかけに対し、相手のオペレーターの返事では 「消された通りやればいい。」 というものなのである。
かかる重要文書が、勝手に抹消されたばかりか、削られた方の形でやれ、というほどの認識と怖ろしさは、まさに、日本の JCO そのものと、どこが違うのか、と思わすほど類似の関係にあることを思い知らされるのである。
更に、このレガソフ告発文は続いているのだが、このソ連を代表する科学者でもあったレガソフは、科学アカデミー総裁でソ連原爆、原子力の父とよばれるアレクサンドロフやそれに連なる代表的原子力学者の絶対安全主張を強く批判している。
レガソフは、この告発文をソ連共産党機関紙 「プラウダ」 の幹部に極秘に手渡したその翌日に、自殺している。昭和63年4月27日のことである。
ソ連当局にとっては、まさに衝撃的な耳の痛い重大重要事態だったが、日本の政府や行政のやり方とは、まさに対象的に、彼の自殺後の一ヵ月後の5月20日、プラウダの3頁全面と8頁の半分に亘って発表された。
まさにゴルバチョフ政権であればこその雄断といってよいであろう。 ペレストロイカ、グラスノスチそのものにほかならない 。自らの命をかけての告発はとも角、かくて世界に、真のチェルノブイリ事故原因の真相の一部を訴えてみせたのである。
そして、この中にも強く指摘されるように、効率とコストの追求こそが、安全性とその保障を排除した最大原因だった、事実が明記されていた、ことに、今更のように気付く、日本の関係者もいるに違いあるまい。
JCO のやらされていたことこそ、Sグループが、この効率化、コスト削減を狙って、作成した裏マニアルそのものと同類だとみられるからにほかならないからである。
しかも責任を持っている日本の政府・政府機関・行政はこれまで、現場や現場作業に全く、直接に監察、監視体制すら課していなかったし、自ら、これを実施するなど、全く行っていなかったという事実が、証明されている有様なのである。
更に驚くような事例の多くが指摘されているが、原発も作業に直接監督権限を有するとされた国家機関の三機関の許可が実は、チェルノブイリ発電所のブリユハーノフ所長やフォーミン技師長の違法な計画書に承認を支える形となっていたうえ、ゴスアトムエネルゴナドゾール (国家原子力監視委員会) 等、の三機関は全く沈黙し何の注意も与えていなかったという事実も指摘されているのである。
日本の政府関係が、現実に国民やマスコミ・メディアへの広報で示している態度、つまり、政府機関には知る立場になかった、という云い訳けや弁明という逃げ口上と、どこが違っているのか?
上記の、自らの命を犠牲としたレガソフ告発のような政府機関高官レベルと同様のレベルから、今日に至るまで日本では、何ら真相が開示されていない。マスコミ・メディアは JCO やその作業員に総ての原因あり、という方向で、この重大事件を収めようと、懸命のようである。
なお、ソ連では、権威ある政治理論誌とされている 「コムニスト」 の 「科学と教育」 欄において13頁にも亘るチェルノブイリ技師長代理だった G・メドベージェフの記録も開示されている。
肩書だけで上位にいた政府関係者の無能ぶりを含め、レガソフが何故、告発しなければならなかったのか、等について、モスクワやキエフの関係者の諸、証言までも引用して裏付けしているこの第二の告発文ともいえるメドベージェフ論文の存在までを考察すれば日本政府の公言、広言している 「安全保障」 の掛け声の、空しさ、が一層ひしひしと身に迫る想いを高めるようであり、日本の政府高官の中に、唯一人のレガソフや、せめてメドベージェフはいないものか、と痛恨の 思いを持つ国民は決して少くないものと思料される。