●インドネシア石油危機〜平和憲法の終焉の始まり

 
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投稿者 ひま 日時 1999 年 9 月 04 日 22:26:26:

●インドネシア石油危機〜平和憲法の終焉の始まり

これは筆者の造語
である。1997年5月から本誌で使ってきた言葉である。その意味する
ところは、

「1998年3月に大統領選挙の時機(または1997年9月の日米中の外交駆
け引きが活発化する時機)をきっかけにインドネシアで大混乱が起
き、それが原因となってスハルト大統領の体制が崩壊し、さらに進ん
でインドネシアが内戦かそれに近い混乱に陥り、中東から日本への石
油輸入のルートであるマラッカ海峡等の航行の安全が、暴徒の機雷封
鎖などで危機に瀕し、日本が海上自衛隊をインドネシアに派遣せざる
をえなくなること」

である。筆者は97年以前から、インドネシア経済が絶好調でスハルト
体制が磐石であった時代から、このように予測していた。そして、そ
れは98年5月に一部的中した。

1995年、米保守本流のシンクタンク、マサチューセッツ工科大学政治
学部は、世界中の政治学者集めて、インドネシアでイスラム革命が起
き、中東から日本への石油輸入が危機に瀕する中、日本がどのように
その危機に対処するかを見るシミュレーションを行った。そして、こ
れは同年秋に、テレビ朝日の『朝まで生テレビ・番外編〜危機発生、
その時日本は?』で紹介された。

筆者はこれをシミュレーションではなく、「警告」と理解した。つま
り、これは、陰謀、スパイ工作の類によるものであり、その陰謀遂行
の主体は米保守本流であり、目的は日米の防衛体制の再構築、とくに
日本による東南アジア海域の防衛体制の確立であろう、と見た。理由
は、冷戦後の国防予算と国防体制の再構築が進む中で、アメリカがよ
り効果的に覇権を維持するには、日本にとって利害関係の大きい東南
アジアなどではアメリカの関与を減らし、日本の関与を増やさなけれ
ば、アメリカの納税者が納得しないだろうと思われるからである。軍
拡を続ける中国への備えなどは、アメリカが覇権を維持するうえで
は、当然必要なことである。が、米軍がアメリカの納税者の税金を使
って、米国より日本にとって利益の大きいアジアでの防衛活動を、日
本を差し置いて行い続けるのは不自然であり、議会も世論も納得しそ
うにないことだからである。

つまり、日本は平和憲法を改正してでも東南アジアのシーレーンなど
は自力で防衛すべきであると米保守本流が思っており、そのきっかけ
にインドネシア危機が使われるであろうと筆者は推定したのである。

何を不謹慎なことを言うのか、という怒りの声が、インドネシアの民
主化の努力を信じている方々から聞こえてきそうである。「インドネ
シア国民はスハルトを倒して民主化を求めているのに、水をかけるよ
うなことを言うな」と言われるかもしれない。

しかし、筆者は確率100%のこととして、断言できる。インドネシアは
民主化しても、というより民主化することによって必ず崩壊する。

日本や欧米先進国の民主化と、インドネシアなどの旧植民地諸国の民
主化とは「まったく意味が違うのだ。

欧米と、それ以外では唯一例外的に、日本の国境線には権威がある。
日本やドイツやノルウェーの国境線の内側は非常に、国民の言語、宗
教、人種、文化の面での同質性が高く、まとまりがよく、1 つの国家
を構成していることに必然性がある。だから、日本で「さきがけ」や
自由党、ドイツで、緑の党のような政党が誕生すれば、それは必ず、
たとえ当初は党員数がどんなに小さな政党であろうと、全国政党をめ
ざす。ところが、インドネシアや中国や旧ソ連のような言語や宗教や
人種が多様な国で、独裁をやめて民主化を行い複数政党制や結社の自
由を認めれば、「○○地域独立党」とか「××民族独立党」のような
ローカル政党、つまりまったく全国政党になることをめざさない政党
が出現し、国家が分裂してしまうのだ。現にソ連はペレストロイカを
経て民主化したら、崩壊してしまったではないか。

インドネシアは、多様な民族の住む地域を現地の住民の意向と無関係
に欧州諸国が植民地として勝手に切り分けてできた、ただそれだけの
国であり、1つにまとまっている必然性など、まったく存在しない。
現在、東チモール、イリアンジャヤ、アチェの3つの特別州で独立運
動が盛んである。このうち、スマトラ島北西端のアチェ州は、反政府
感情が強いことと、マラッカ海峡に面していることの2つで重要であ
る。反政府勢力が一時的にせよ独立国になる可能性はあり、その場合
はインドネシアの中央政府を恫喝する手段として、マラッカ海峡に機
雷封鎖を行う可能性が高い。これは日本行きの石油タンカーだけでな
く、インド洋と太平洋を行き来する米海軍にとっても脅威となる。

アメリカの立場でスマトラ島を見ると、マラッカ海峡がいつ封鎖され
るか封鎖されるか、とビクビク怯えているぐらいだったら、いっそス
パイ工作員を送り込んで反体制勢力に軍資金や武器を与えて「やらせ
てしまう」という手がある。いわゆるガス抜きである。マラッカ海峡
に機雷が撒かれる可能性を予測するのにエネルギーを使うぐらいな
ら、機雷を撒かせればいいのである(筆者が「ユタ州・国防省人脈」
のところで名前をあげたアップル社主任研究員のアラン・ケイは「未
来を予測するのにいちばんいい方法は、未来を自分で作ってしまうこ
とだ」と述べている)。もちろん十分にガス抜きをするには、反米・
反日運動までやらせる必要があるが、それもやらせればいい。資金源
をコントロールしているのが米軍である場合は、反米運動をいくらや
られても、こわくはない。

マラッカ海峡が機雷で封鎖された場合、これを除去する能力を持つ軍
隊は、世界中に海上自衛隊以外にはない。かつて、日米合同で、機雷
掃海訓練を行ったとき、日本のレベルがあまりに高すぎて、米軍側は
ついてこられなかった、ということがあった。

つまり、自衛隊を出さなければ、中東産油国も日本も、日本と同様に
この海峡と中東原油に依存している韓国も中国もみんな困るが、自衛
隊を出せば簡単に解決する、というシチュエーションを作ることはき
わめて容易で、しかもアメリカにとって、日本の防衛体制の改編とい
う、利益があるのである。それなら、スパイ工作等を仕掛けない手は
あるまい。

1999年1月に開幕した日本の通常国会においては、日米防衛協力の指
針(ガイドライン)関連法案の審議と、その中で規定される「日本周
辺有事」とか「周辺事態」とかの定義が問題になった。野党は「周
辺」の地理的範囲を問い糾したが、政府 はあいまいな答弁に終始す
る。ほとんどのマスコミは、「周辺」には台湾が含まれ、台湾は中国
の領土と主張する中国政府を刺激しないために、日本政府は「周辺」
の地理的範囲をはっきりさせたくないのだろう、と書いている。しか
し、筆者の考えでは、政府がごまかしたがっているのは、台湾ではな
く、インドネシアではないか、と思われる。日米の政府がともに「周
辺」が地理的概念でない、と言い続ける背景にはインドネシアへの自
衛隊派遣があるに違いない。

その証拠に、2月にはいって、野党からしつこく「周辺」の範囲を問
い続けられた小淵恵三首相は、国会答弁で思わず「(『周辺』には)
インドネシアは含まれない」と述べ、そのあとあわてて「インドネシ
アはインド洋の間違いです」と答弁を訂正し、インドネシアに重大な
関心を持っていることを、はからずも露呈したではないか。

自衛隊を出しさえすれば、日米中韓および中東産油国がすべて丸く納
まり、出さなければみんな困る(とくに石油がなければ日本が困る)
という状況では、いわゆる左翼・平和主義勢力その他の平和憲法擁護
派も、反対はできないであろう(逆に言うと、このような状況を作ら
ないと、左翼を含む大多数の日本国民は、ずっと日米の協力関係や平
和憲法を変えようとしないであろう)。

おそらく、このシチュエーションを作るために、米保守本流は、サウ
ジなど産油国の石油設備の2000年問題が、絶望的なほど長期に渡らな
いように、いまからひそかに準備をしていることであろう。したがっ
て、足立や草野が恐れる、長期間にわたる大幅な石油不足という状況
は、日本国民が自衛隊の海外派兵を恐れず実行しさえすれば、たぶん
到来しないであろう。

それぐらいの、つまり、サウジの設備をほどほどに守れることぐらい
の工作能力は、陰謀の主体は当然持っているであろうから。




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