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千の太陽の光が
この瞬間の空に輝くならば
全能なる神が
壮麗をきわめて現れるだろう
わたしは死だ
すべての時の終わりだ、と(『バガバッドギーター』)
以下『人類は核戦争で一度滅んだ』より抜粋。
インドには数多くの神話伝説があり、その最古のものは紀元前3000年の事跡を伝えているとされている。
その1つが『マハーバーラタ』という大叙事詩である。これは「バラタ族の戦争を物語る大史詩」という程
の意味で、20万行もある世界屈指の大長編だ。勿論、他の神話と同様、遠い古代から口伝で伝承されたもの
で、その原型が纏まったのが紀元前数世紀だとされている。(中略)
「その時、英雄アスワタマンは自らのヴィマナに断固止まり、水面に降り立って、神々すら抵抗し難いアグ
ネアの武器を発射した。神殿修道騎士団長の息子は、全ての敵に狙いをつけ、煙を伴わぬ火を放つ、きらき
ら輝く光の武器を四方に浴びせかけた。(中略)
矢の雨が空に放たれた。その矢の束は、輝く流れ星のように落下し、光となって敵を包んだ。突然、濃い
闇がバンダヴァの軍勢を覆った。その為、敵は方向感覚さえ失ってしまった。
恐ろしい風が吹き始めた。戦獣(戦闘用の象)は恐れ戦き、鳥達が騒ぐ。空に雲が唸り、血となって降り
注ぐ。自然の秩序そのものがかき乱されたようだ。
太陽がゆれ動く。宇宙は焼け焦げ、異常な熱を発している。象達はあの武器のエネルギーに焼かれ、炎か
ら逃れ出るべく、恐怖に喘ぎながら駆け回った。水は蒸発し、その中に住む生き物も焼けてしまった。
あらゆる角度から燃える矢の雨が、激しい風と共に降り注ぐ。雷よりも激烈に爆発したこの武器に、敵の
戦士達は猛火に焼かれた木々のように倒れた。この武器に焼かれた巨大な象達は、辺り一面に倒れ、物凄い
叫びを上げた。火傷をした他の象達は、恐怖に狂ったように水を求めて辺りを駆け回った」(p32-34)
また、引用部分以外の個所で「閃光が煌めく時、空は雲1つないのに雷鳴が轟き渡るのだ」と、この武器
について説明している。(p40)
『マハーバーラタ』は何回もの戦争について記述しているのだが、その2回目の戦争は次のように描写さ
れている。
「あらゆる武器を用いても、これら3つの都市には効果がなかった。そこで高速の強力なヴィマナで飛んで
いた、雷電を操る者クルスは3つの都市に向けて神々すら恐れを抱き大きな痛みを感じる武器を投下した。
太陽が1万個集まった程の明るい、煙と火が絡み合った光り輝く柱がそそり立った。それは未知の武器、
鉄の石矢、死を告げる巨大な使者だった。
3つの都市の住民は、1人残らず灰と化すまで焼き尽くされた。死骸は、誰のものとも見分けがつかなかっ
た。髪の毛や爪は抜け落ちていた。鳥達は白くなり、全ての食物は毒された。この武器は、それ自体細かな
粉となり、崩れた。
クルの軍勢は恐怖にかられ、自らの命を救おうと戦場から逃げ出した。ある者は自分の息子や父親、友や
兄弟を戦車に乗せ、またある者は鎧を脱ぎ捨てて流れに飛び込み、体や装備を洗った」(p49-50)
古代の英雄ラーマ王の一生をうたう『ラーマーヤナ』は7巻に分かれているが、その中核をなすのが第6巻
『ユッダ・カーンダ』(戦争の巻)だ。ここにはアスラ(魔神)の王ラーヴァナに妃シーターを誘拐された
ラーマが彼女を奪い返さんと大軍を率いて、ラーヴァナ軍相手に繰り広げる凄絶な戦闘が物語られている。
この戦闘もまた核戦争を思わせるのだが、それとともに紀元前数千年のものとしては驚異的な武器の数々
が登場するのである。例えば、ラーマ王が決戦で使用する武器はこう描写される。
「その武器の両翼には、風が坐し、その刃には太陽と火が燃え盛る。その体は青白く輝き、その重さは2つ
の山からなるもののようであった。
これは天地のあらゆる元素より成るものであった。自ら炎のような光を発して進み、轟々と鳴り響き、金
鉄よりも堅く、この世界のあらゆるものを忽ち破壊する力を秘めていた」
この武器は「天空の住民」から与えられたものだが、彼らさえ、これが使われる戦闘を「想い起こすのも
厭わしい」という程の威力を発揮する。実際「その恐ろしい光り輝く巨大な槍が放たれた時、30万もの軍勢
が一瞬の内に滅び去った」のである。(p55-56)
ホスエ所長は、書棚の沢山の本の中から1冊を抜き出した。それは1923年に刊行された英語版の『ヒンズ
ー教の聖典』という著作の第13巻だった。そこでは軍事上の学問が扱われており、色々な武器についての解
説もあった。(中略)
「アストラは投げうたれ、魔術的な方法でヴィマナ等を射落とす。アストラには2種類あり、魔術のような
物と、円筒状の物がある。軍事上の道具に精通している者は、型やサイズの違う色々な種類のアストラにつ
いての知識がある」(中略)
この内「円筒状」型をした物は「ナリカ・アストラ」と呼ばれ、小型と大型とがある。
「短い、もしくは小さいナリカ・アストラは歩兵隊や騎兵隊用の武器である。大きな水平の裂け目があり、
底部に垂直な裂け目がある。開口部と底部に突出した物があり、目標に照準を合わせる為に使われた。内部
には発砲用の火薬がつめられており、火は1つの仕掛けによって起こされた。(中略)
大きなナリカ・アストラは木組みの中に納められており、移動には大型の二輪馬車が使われる。その底部
には楔形の支えがついていて、それを動かす事によって目標物の方に向きが変えられる。よく利用すれば、
勝利は間違いない」
もう、おわかりだろう。ナリカ・アストラは火薬を使った兵器で、小型の物は小銃等の小火器、大型は野
戦砲のような重火器だったのだ。
この解釈を決定づけるのは、次の記述だ。
「スバラチ4塩(硝酸カリウムを主成分とする塩。硝石と殆ど同じ成分)を5パーラ、硫黄を1パーラ、木を
煙が逃げないような方法で焼いたものからとれる木炭を1パーラ。これらのものを浄化し、粉末にし、全部
混ぜ合わせ、次にスヌーヒ・アルカ(植物の名)から抽出した液体に溶かしてから、中火で乾燥させ、粉末
状にする。これが発砲の為の火薬である」(中略)
また、ナリカ・アストラに使用される砲弾についての記述もある。
「砲弾は鉄で造られ、内部に他の物質がつめられる事も、つめられない事もある。もっと小型のナリカの為
の砲弾は、鉛もしくはその他の金属で造られる」
これらの記述を素直に受けとめた時、私達は、古代インドに歴史の常識を超越した高度のテクノロジーが
存在した事を認めざるを得ないだろう。が『ヒンズー教の聖典』の翻訳者(イギリス人だ!)は、そ
れを認
める事ができなかった。だから、訳注にこう書いている。「鉄砲や大砲の記述をみると、現代(1920年代)
のものに酷似している事がわかる。明らかに後世の書き込みである」
だとすると、もう1つのアストラ、「魔術のようなもの」型の「ナラ・アストラ」についての次のような
訳述はどうなるだろう。
「鉄もしくは別の金属で造られ、毎日手入れする必要があり、武装した人達に監視されなければならない。
それが発射された時、炎を放つ矢のように空中を飛び、魔術的な方法で天空をかけるヴィマナを射落とす」
(中略)これについては訳注はない。
この翻訳が行われた当時、飛行機は1914年からの第1次大戦で既に兵器として使われてはいたが、それを
撃ち落とすミサイルはまだ存在していなかった。だから、訳者もこれについては「明らかに後世の書き込み
である」とする事はできなかったのだ。(p64-67)