旧ソ連核実験場の周辺住民、生殖細胞の突然変異一時2倍
旧ソ連の核実験場だったセミパラチンスク(現カザフスタン共和国内)の周辺では、
一時、住民の生殖細胞の突然変異発生率が最大で通常の約2倍に上っていた、とカザフ
スタン、フィンランド、英国の共同研究チームが8日発行の米科学誌サイエンスで報告
した。ただ、調査対象は遺伝子を含まない領域のDNAなので、変異が遺伝性の障害に
直結していたわけではない。
同チームは、旧実験場周辺に住む40家族の親・子・孫の3世代から血液を採取。遺
伝する突然変異がどのくらいの頻度で起きているかを、親・子の2世代について、他地
域の28家族と比べた。
核実験初期の49〜56年には地上で4回の爆発実験が行われ、このすべてを体験し
た「親」世代の突然変異率は、他地域の1.8倍に上っていた。
「子」世代は、体験した地上実験の回数がさまざまで、突然変異率は全体では通常の
1.5倍だった。
同実験場では、49〜63年に大気圏での実験も行われ、それ以降は89年まで地下
実験が続けられた。実験は計470回。
また研究チームは、死の灰に含まれる放射性物質の半減期が短いため、突然変異誘発
効果は長続きせず、地上・大気圏の核実験の禁止は有効な施策だった、としている。
この研究について、長崎大・原爆後障害医療研究施設の新川詔夫教授は、「今回の突
然変異そのものが人体に大きな問題を起こすわけではないが、核実験による変異が子孫
に遺伝することを示した点は注目される。ただ、サンプル数が少なく、全面的に信頼す
るわけにはいかない」と指摘している。(07:12)
http://www.asahi.com/international/update/0208/002.html