個人情報保護法案廃案を求め首相に私信を出した作家、城山三郎氏

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投稿者 2chBBSより転載 日時 2001 年 5 月 31 日 22:51:52:

回答先: 個人情報保護法案反対アピール その1 投稿者 1984 日時 2001 年 5 月 31 日 18:55:57:

―法案に対しては、日本新聞協会が一昨年から表現・報道の自由を守る立場で批判的な見解を発表し、最近は出版社、作家らからも批判が上がり始めました。
 この法律によって、作家が制約を受ける可能性は非常に大きいと思う。社会性が強いものは書きづらくなるだろうし、私小説だって自分のことばかり書くわけではない。日本の小説などはほとんどなくなってしまいかねない。残るのは時代小説や性風俗小説くらいだ。
 そもそもこの法律は(デジタル情報化社会を迎え)個人情報を悪用から防ぐことを目的としていたはずだ。ところが、途中から臭いもの(政府に苦言を呈するメディア)にはフタをしろ、という政府や与党の本性が現れ始めた。(個人情報を大量に扱う民間の事業者に課せられる)義務規定の除外対象に出版社を明記しなかったのは、新聞社や放送局と分断しようという作戦だ。しかも、(適用除外は)報道目的だけに限定するなど言論・表現の自由への理解が全くない。
 この法律を「個人情報の保護」という建前だけを見ていると表現・言論の自由にとって脅威となる法律ではないように映るが、中身は一種の検閲制度だ。(民間分野全体を規制するのではなく)必要な分野で個別に法律を作ればいいのではないか。

―小泉首相に廃案にするよう私信を送ったそうですね。
 一昨年の大晦日に小泉さんに初めて会った。小泉さんの祖父又二郎氏は、民主的な内閣だった浜口雄幸内閣(1929〜31年)で逓信相を務めた。首相の信頼が非常に熱い人だった。私の作品「男子の本懐」の中で、又二郎氏を描いた縁がある。小泉さんは、年始は選挙区に帰らずに海外で過ごし、見聞を広めるのだと話していた。次の選挙と利権のことばかり考えている「政治屋」ばかりの中で、小泉さんは次世代のことを考える「政治家」だと思った。
 手紙には、個人情報保護法案はいずれ言論を弾圧する道具になる危険性があるので、こうした悪法は次の世代に残さないで欲しい、ということを書いた。数日後に本人から直接自宅に電話があって「一度会って話がしたい」と言っていた。(つづく)

―政府は表現の自由について「配慮」すると言っていますが。
 そもそも報道や言論に当たるのかどうかを政府が自分達で判断しようというのがおかしい。官僚は、自分達を神様だとでも思っているのだろうか。そういう発想は、旧軍部の中にいた一番たちの悪い連中と共通するものがある。言論弾圧に猛威をふるった治安維持法も「治安を維持する」という正面からは反対しづらい理由だった。この法律も改正を重ね、言論弾圧法になることは間違いない。官僚は歴史をまじめに勉強したことがあるのだろうか。

―政府や与党は、個人情報保護法案だけでなく、人権擁護や青少年の健全育成を名目にしながら結局はメディアの手足を縛ることになる法律案を次々に準備しています。
 45年に戦争が終わり、せっかく自由でみんなが平等な社会になった。民主主義社会は言論・表現の自由があってこそ成り立つ。ところが、一握りの政治屋や官僚が醜いことを隠すために、まずこの個人情報保護法案を通そうとしている。この法律によって、官報と建前情報ばかりがあふれる暗い時代が幕を開けようとしている。言論・表現の自由というのは「生きる」ということと同じくらい大切だということをみんなが理解すべきだ。
 小泉内閣が森喜朗前内閣から受け継いだ「お荷物」(同法案)に、どう対応するのか。首相の決断は非常に重要だ。小泉さんが本当の政治家であるのかが問われるだろう。本当に小泉さんに会う必要があるかもしれない。(毎日新聞5月29日)



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