投稿者 付箋 日時 2001 年 5 月 26 日 11:29:46:
回答先: アメリカはいざとなったら日本を本当に守ってくれるのか? 投稿者 DC 日時 2001 年 5 月 26 日 02:02:38:
アメリカ新政権と日本の外交・安保上の課題・浅井基文
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【中略】
(ハ)アメリカから見た日本の信頼性の欠如
「放蕩息子」でしかも以上の「持ち込み」のケースに見られるように二枚舌の日本政府に対して、すでに二度引用した沖縄タイムスの記事は、アメリカ側が根本的に信頼感を持っていないことを雄弁に物語っている。もちろんアメリカは、核兵器を搭載した艦船・戦闘機の日本への寄港・立ち寄りを実際には行ってきた。しかしアメリカにとってより本質的な問題は、このような身勝手な政策を行いつつ、しかもいざというときにはアメリカの核兵器で日本の安全を守ってもらう(アメリカの核抑止力に依存する)と公言してはばからない日本政府が、本当の意味で同盟国として信頼するに足る存在といいうるかということだ。
アメリカからすれば、日本政府のやってきたことは、「自分の手はきれいなままでいたい。しかし、自分の身に危険が迫ってきたときは、汚い仕事はアメリカにやってもらう」というに等しい。このような日本に対してアメリカが信頼感を持ち得ないとしても当然だろう。
【中略】
日本はどうか。アメリカの打診に最初に積極的に応じたのは日本だった(したがって上記コーエン発言がNMDおよびTMDの研究開発を進める上で同盟諸国の理解と協力が不可欠、と述べた際には、アメリカのいうがままに動いてきた日本は眼中にもなかったことが明らかだ)。NMDはアメリカ自身が行うプロジェクトだが、日本政府はTMDの研究開発に早々とコミットし、すでに両国共同の研究開発計画は起動している。ここにはロシアそして中国の反対に対して考慮する気持ちはひとかけらも見られない。
(ロ)欧州の対ロ政策と日本の対アジア政策
欧州諸国は、ロシアを再び敵に回すことを避けるためにはアメリカと真っ向から論戦することをいとわない。その不退転の決意の根底にあるのは、欧州の平和と安定をアメリカの都合と一存に委ねるわけにはいかない、欧州の平和と安定を守るのは自分たち自身だ、という至極当然な安全保障上の判断がある。
再び日本はどうか。もし日本が本当に日本を含むアジアの平和と安定を心底願っているのであれば、中国(およびロシア)の不安・懸念に対して、欧州諸国がロシアに対して示しているのと同様の考慮を払うことは当然だろう。しかし近年の日本に顕著に見られるのは、「北朝鮮脅威」論であり、南北首脳会談が行われて「北朝鮮脅威」の主張が虚構にすぎないことを多くの国民が実感してからは、「中国脅威」論が急速に勢いを得ている状況がある。
日本はかってアジア大陸を軍事力で席巻しようとし、敗北した。そのあまりにも高価な代償を真摯に受け止めるのであれば、北朝鮮脅威論や中国脅威論が勢いを得ることなどおよそ考えられないはずだ。しかし現実がまったく逆な方向に向かっているという事実は、TMDにおける日本の積極姿勢とともに、日本の保守勢力が過去の歴史からなんらの教訓もくみ取っていないことを示しているし、アジアの平和と安定というもっとも大切な課題を考える意志すら持ち合わせていないという深刻な状況を示している。
【中略】
このように、二つの報告から理解できることは、@日米関係のあり方に関してアメリカが確信を持ち得ないでいること(そのことが「漂流」という言葉に集約的に表されている)、Aアメリカとしては日本が今後もアメリカのいうがままに振る舞う存在であり続けてほしいという強い希望を持っていること、しかしB物事がアメリカの思いどおりに進む保証はないという懸念も強くもっていること、などの諸点である。そしてこれらの懸念は、「トレンド」、コーエンおよびラムズフェルド両発言さらには「一・一〇報告」になると、将来の「非対称的脅威」の候補として中国、ロシアと並んで、日本をも名指しするまでになるのである(いずれの国についても「非対称的脅威」そのものと特定されているわけではない。しかし文脈的にははっきりとそのように読みとることができる)。
ロシアおよび中国の場合には、アメリカは公式な軍事同盟を結んでいるわけではないから、当否は別として、まだそれなりに理解することができる。しかし日米関係は公式な軍事同盟関係にあり、しかも互いに友好関係にある国家関係と公言してきているのである。その日本をロシアおよび中国と同じレベルで扱うアメリカの神経も神経だが、そのように扱われてしまう日本の方にも実に深刻な問題があることを感じるのは私だけだろうか。この問いかけをもって結びとする。
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