投稿者 ソウルの「PC-VAN」を見て驚愕した 日時 2001 年 5 月 15 日 03:02:47:
i-NSIDER No.0014 / 2001-05-01 / FROM THE EDITOR
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●ソウルの「PC-VAN」を見て驚愕した
(2001/04/28ソウル発)
5年ぶりの韓国取材で連休をソウルで過ごしています。韓国の金融・財閥改
革、それと裏腹のIT革命が日本のそれとどう違うかがテーマで、その一環とし
て昨日は、ソウル市内だけで3万軒を超えてなお増え続けているパソコン喫茶
「PC-VAN」の1つを覗きに行きました。薄暗い照明の下にPentiumIIクラスの
パソコンが6列65台がびっしりと並び、土曜日の午後ということもあり中学生
から20歳代のサラリーマン風まで若い人たちで満席。1時間200円程度(ここ
は盛り場の真ん中にあってちょっと高級でコーヒー飲み放題でこの値段です
が、普通は1時間100円)で、超高速のADSL回線を使って思い思いにオンライ
ン・ゲームやビデオ・チャットなどを楽しんでいます。
今一番人気のオンライン・ゲームは米製の「スタークラフト」というバトル
系。たくさんあるサーバの1つを選んで入ると、「現在このサーバには6万38
61人がアクセスし、1987組のゲームが行われています」と表示があります(も
ちろん刻々と変化する)。すでに行われているゲームに「私も混ぜて」と入っ
てもいいし、自分で新しいゲーム空間を設定して相手を募集してもいい。新し
く立ち上げると、数秒を経ずして応募者が現れて、「こんにちは」「何がこん
にちは、だ。俺は389勝137敗のツワ者だ。お前なんか叩きつぶしてやる」「い
やいや、お手柔らかに」と早くも火花が散ります。30秒ほどで4人が揃ったと
ころで(2人から6人までやれる)ゲーム開始。右手でマウス、左手でキー
ボードを目にも止まらぬ早業で操作して、それぞれに器材を選択して陣地を構
築し、そこに燃料を掘って補給体制を整え、やがて頃合いを見て相手に攻撃を
仕掛けるのですが、その間も素早く自分の陣地に戻って構築を進め、また別の
相手からの不意打ちに対処しなければなりません。何も知らない我々には、何
が何だか分からないスピードですが、案内役のホアンさんは「2週間くらい毎
日数時間やれば基本を覚えて、オンラインで参加できるようになりますよ」と
事もなげに言います。
スタークラフトは、全世界で450万枚売れたうち韓国で300万枚売れたという
ことで、最近は米ゲーム会社も英語版のゲーム新発売と同時に韓国語版も出し
て、日本語版は後回しなのだそうですが、それもそのはずで、このようなゲー
ムをオンラインで楽しむには、2〜8メガの容量を持つADSLがくまなく普及し
ていなければ話にならない。しかも、対戦相手を決めるまでの対話はリアルタ
イムの韓国語のチャットだし、ゲーム途中で例えば自分の同盟者に「10秒後に
総攻撃を仕掛けるぞ」「了解」といった瞬時の会話を交わすのは英語ですか
ら、キーボードを10本指のブラインドタッチで完全に使いこなせなければとう
てい参加の資格はない。日本では、ほどんどがせいぜいISDNの64キロ回線、よ
うやくサービスが始まったADSLの加入者は数万人で、キーボードも両手の人差
し指だけでポツポツと打っている人が多いという有様です。このPC-VANでゲー
ムを体験して、それで飽き足らない人が自宅にもADSLを導入することで(2〜
8メガで月3〜4000円で使い放題)、韓国はアッという間に超高速回線の普及
度世界第2位にのし上がった訳ですが、日本の場合は同じ世代の若者たちはス
タンドアローンのゲーム専用機に夢中になっていて、最近のゲーム機にはイン
ターネット接続機能が付いていても肝心の回線が低速ではゲームは出来ませ
ん。これでは、10年経っても日本が韓国に追いつくことはないでしょう。
今日は、ロッテワールドで開かれるオンライン・ゲームのチャンピオン大会
を観戦する予定です。こういう大会はしょっちゅう開かれていて、テレビの中
継もあります。一定の成績を収めると賞金が貰え、さらに実績を重ねると「プ
ロ」の資格認定があるということで、最年少は5歳の子供。小学生でも年に数
百万円の賞金を稼ぐ子がたくさんいるそうで、日本なら大問題ですが、ゲーム
をやっているとパソコンやキーボードの操作はもちろん、英語や日本語も覚え
てしまうし、大学によってはゲームの達人の優先入学制度を設けているので、
親にしてみれば、子供が金は稼ぐし技術を身につけて大学に入れるならこんな
にいいことはないと、暖かく?見守っているのだと言います。
韓国最大の企業「サムスン電子」は、半導体、携帯電話、オーディオ・ビデ
オ、家電で日本の大手電機メーカーと世界市場を競っていますが、サムスン電
子1社の純利益60億ドルはすでに日本の日立、東芝、松下、NEC、三菱電機、
富士通、ソニーの大手7社の純利益合計を上回っているという驚くべき事実
に、多くの日本人はまだ気付いていません。しかも、そのような韓国電子産業
を担う次世代の人材がこのように超高速オンライン・ゲームを通じて膨大に育
成されていることを思うと、日本の「ITブーム」などまるで児戯に等しいこと
が分かります。「日本のモノづくりパワーは21世紀に大いに花開くだろう」と
いう私の年来の主張も大きく揺らいでしまった今回の韓国取材でした。